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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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562:

「裏庭の小屋に簡易的なテレポートゲート設置したんで、通院する時はそれ使ってください。小屋の扉は、天皇様の生体データでしか開かないし、他の人がいても開きませんのでご注意を。ちゃんと、定期的に医者に診てもらわないと、また激痛で動けなくなりますよ?」

「あぁ、肝に銘じるよ……。昨日、散々リリアにも叱られたからね……」


 オッサンたちは宴会。

 俺達ビビり組は、無言でジュースを酌み交わした一夜が明けて、今日はさっさと帰ることになった。

 前回来た時は、色々と用事があって滞在したけれど、普段委員長たち侯爵家の方々がここに来るのは、酒の配達の為なんだ。

 途中からの移動方法が徒歩な為、日帰りというわけには行かないので宿泊はするけれど、長々と居続けるわけには行かない。

 だって、親戚の田舎に住むおっちゃんみたいな雰囲気出しているけれど、相手は天皇様だ。

 世が世なら、一国の長なおっちゃんなんだ。

 色々あって、この世界だと田舎の村長みたいな役割になってるけれども、それでも失礼があったらとんでもないことになりかねない相手。

 気軽に「しばらく泊めて♡」なんて言って良い相手ではない。

 本人は、言われたいみたいだけど、言って良い相手ではない。

 だから、帰ろう!

 俺達追加メンバーは、リリアさんの妹たち……って扱いの人口生命体たちを紹介できたから、目的は達成しているしさ!

 白も晴明さんと挨拶できたしさ!


「次は、プリン体が入っていないビールっぽい発泡酒なんかも頼むよ……」

「お酒止めないんですね」

「止めないねぇ……」


 うん、やっぱりこの天皇様、お酒に関してはダメだ。




 帰りは、特にトラブルも起きなかった。

 最初からリリアを背負い、アルテミスを抱き上げての移動だったから、とてもスムーズに駅まで着けた。

 列車に乗ってからも、天皇様の家でリリアが作ってくれたお弁当を食べながら、和気藹々と揺られる。

 あー……これだよこれ!これこそ列車旅!

 そして、そのまま何事も無く駅へと辿り着く。

 カレーの香りが漂うのが、この世界の駅っぽくて雰囲気出てるぜ……。


「帰って来たなぁ、王都……」

「そうだね……」

「京都自治区って、来る度に悪夢のレパートリー増えるんだよな……」

「そうだね……」

「良い所なんだけどな……幻想的って言うか、奇麗って言うか……」

「そうだね……でもね、犀果君。私、誤解の無いように言っておきたいんだけどね?」

「うん、何?」


「犀果君と行った時じゃないと、私はここまでハチャメチャな目に合うこと無かったんだけど?」

「そんな事俺に言われても……」


 知らない。

 晴明がやった。

 済んだこと。

 マジで。


「……ふふ、冗談だよ!犀果君と一緒にいると、本当に色々あるけれど、何だかんだで後から振り返ると面白いから」

「そう言って頂けるとありがたいけれども……」

「私が小さい時から、うちっていつもお酒の事ばっかりだったからさ、こうやって学校行事以外で普通に友達とどこかに出かけるのって、犀果君としか経験無いんだよね。だから、また何かあったら、気軽に誘ってね?待ってるから!」

「友達……俺が……?俺に友達……?」

「え!?なんでいきなり挙動不審になったの!?」


 だって、この前世からずっと教室でボッチだった俺に、面と向かって友達と言ってくる人間がいるなんて……ちょっと……信じられないって言うか……。

 婚約者ならいっぱいいるし、仲間とか家族って呼べる存在も増えたけれど、友達……友達かぁ……。


「委員長!親友よ!これからも末永く仲良くしていってくれ!」

「え!?う、うん……!親友!?親友なんだ私たち……はい!喜んで!」


 やはり委員長は、陽キャの女神だったらしい。

 薄々わかってた。


 しかし、そんな喜びもつかの間、俺は頭を鷲掴みされた。


「犀果君、また娘にチョッカイをかけているのかい?」

「侯爵様、アイアンクローは貴族としてどうなんですか?」

「貴族は、アイアンクローが出来てナンボだよ」

「聞いたことありませんよそんな評価基準」

「それで?やっぱり京奈まで手籠めにするつもりかい?」

「ちょっとお父さん!?」

「いえ、ですから、彼女とは友達……親友で……」

「うちの娘に何か不満でもあるのか!」

「無いですって」

「やっぱり狙ってるんじゃないか!これはもうヤるしかなギャ!?」


 突然、頭の拘束が外された。

 後ろを見ると、侯爵が倒れていた。

 恐らく、委員長が侯爵の頭を殴ったか何かで、侯爵が気絶したんだろう。

 この世界では、頭とか首の後ろに衝撃があると、人間は気絶するんだ。

 前世だと、死ぬほど痛いか、死ぬかって事が多かったけれども。


「ごめんね犀果君、うちの父が……」

「いや、それだけ大事にされてるって事でしょ。俺は気にしてないよ。むしろ、若い男が自分の娘と話してたら、何かそういうモーションかけてるのかって心配するのなんて、娘を持つ男親として当然なんじゃない?」

「そうなのかなぁ……?他の男の人たち相手だと、ここまで過剰反応しないんだけど……」


 ハァっとため息を吐きながら、自分の父親の足を掴んで引っ張り始める委員長。

 そのまま引き摺って帰る気らしい。

 侯爵、削れそう……。


「じゃあね犀果君!」

「またなー」


 陽キャの女神が、父親を引き摺って帰っていくのを見送る。

 その後ろを「妹がイキイキしてる……推せる……」とお兄さんがついていくのはスルーした。


 そして、残った皆の方が向き直る。


「さて、じゃあ家帰ろうか」


 そう提案すれば、何故か拒否された。


「いえ!折角駅まで来たのですし、また魔王様のカレーが食べたいです!あの日、京都からこちらへ来た時に食べたせいで、京都から王都に来たら食べないといけない気がするんです!」

「なら私も食べたいれす!」

「もしや、それが1年でおっぱいを大きくできた秘訣なのでは?試してみましょう」


 リリアシリーズさぁ……。

 列車の中でも弁当食ってたじゃん……。


「白はどうする?すぐそこのカレー屋だけど、一緒に行く?」

「はいです!なんだかおいしそうな香りがするのです!」

「白の喫茶店の方は、寄らなくて大丈夫?」

「あっちは、どうせ皆さん来てもお金払ってくれないので、閉めててもあんまり問題ないのです!」

「そっか……」


 経営的に問題しかないだろそれ。



 そしてやってきた『王風カレーのサタン』。

 扉を開けると、もう既に見慣れた筋骨隆々のおっさんの姿が目に入った。


 何故か、店の隅で体育座りしている。


「……何してんですか魔王様」

「……大試か」


 死ぬ直前みたいな声なんだけど……。


「……実はな……エリザと喧嘩してな……」

「はぁ……」

「『パパ嫌い!』って言われてな……」

「はぁ……」

「…………」

「え?それだけですか?」

「それだけだが……?」


 店内を、重い沈黙が支配する。


「じゃあ、私は王特製エビカレーの甘口れす!」

「カレー王エビドリアを」

「私は、王特製シーフードカレー王盛りです!」

「王盛りってなんれす?」

「超大盛で、ごはんだけで2kgくらいあって……」

「「なんと!?」」


 一部の人間が沈黙していたのは、メニューを見ていたかららしい。


「じゃあワシは、このデザートメニューこっからここまで全部じゃ!」

「ソフィアさん、時計から出てきてもこのオッサン慰めるの手伝ってくれないんすね」

「親子喧嘩なんぞ犬も食わんわ!」

「そっすね」


 じゃあ俺は、王風ビーフカレーで。






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