表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
561/606

561:

「じゃあまたね!待っているよ!」

「は……ハイです……」

「明日来てくれてもいいよ!」

「いえ……明日はちょっと……」


 親子の感動的でハートフルな再会。

 しかし、時間というのは有限だ。

 すっかり暗くなった現実世界へと戻ってきた俺たちは、後ろ髪を引かれる思いで別れを惜しむ。


 ※いくつか誇張されている部分があります。


「大試君も、娘を連れてきてくれてありがとうね」

「くん!?あ、いえ……はい……」

「京奈ちゃんは、ちゃんと陰陽術の鍛錬を行っているようだね。雰囲気からもわかるよ。これからもその調子で頑張ってね」

「は……はい……ありがとうございます……」

「アルテミスちゃんとリコちゃん、私の作ってくれた料理をあんなに美味しそうに食べてくれてありがとう。気が向いたら、また来てくれると嬉しいな」

「あい!おなかがすいたらくるれす!」

「ごちそうさまでした。エビグラタンが一番美味しかったです」


 それぞれの別れを終え、晴明神社を後にする俺達。

 人の姿で現実世界に現れてまで、俺達が見えなくなるまで手を振っている晴明さん。

 本当に、貴重な体験だったなぁ……。


 あの急造の人間体でこっちの世界にくると、一緒に壊れた晴明マリオネットも来るんだな……。

 反応しないようにするので精いっぱいだったわ……。

 人口生命体2人は、全く気にも留めていなかったけれど、俺と委員長、そして白は、嫌な汗がダラダラ止まらなかったぜ……。


 帰り道、俺が抱き上げているアルテミスが、美味しかったものを思い出しながら話し続けている。

 それに対してリコも、これが美味しかったとか、アレは野菜が甘くて好きだったとか、ニッコニコで話している。

 お前、最初来た時そんなキャラだったっけ?

 終末を告げるモノ的な感じで来たのに、今はご飯食べてご満悦のただの美少女になってんじゃん……。


 まあ、それはそれとして、ほかの3人は、返事をする余裕も無い程精神がげっそりしちゃっているんだけれど……。


 気が付いた時には、天皇様の家の敷地まで帰って来ていた。

 ……ここまでくれば、多分晴明さんにも俺たちの会話は聞かれないだろう。


「こっわかったあああああ!」

「あ!犀果君もやっぱり怖いよね!?私だけじゃ無かったんだよね!?」

「後ろに落ちてた人形も怖かったのです!不気味だったのです!」


 軽く涙目になりながら、今まで言えなかった感情を伝え合う俺達。

 だって、胸の中にしまっておくには、余りに衝撃が強すぎたんだよ!

 でっかい穴掘って、中に王様のロバの耳について叫んだ奴の気持ちが今ならわかる!


「犀果さんは、何をこわがっているんれす?」

「現実の人間とは、よくわからないものですね」


 アルテミスもリコも、俺達のこの衝動が理解できないらしい。

 だろうね!


「あら?皆さんお帰りなさいませ!晴明神社はどうでした?」

「リリア……」


 俺達が帰って来た事に気が付いて、たまたま近くの蔵にいたらしいリリアが顔を出した。

 はぁ……美人で普通の感性もってそうな人を見ると、心が落ち着くなぁ……。


「ちょっとね……ホラーでな……」

「ほらぁ?」

「夜に見たら、1人でお風呂入るのも怖くなりそうな類の相手だったよね……」

「まぁ!神社でそんな物を見たんですか!?」

「物……まあ、物だったのです……」

「それはそれは……。ええと、もう皆さんお風呂に入って、今日の所はさっさと寝た方が良いのでは?お疲れのようですし……。一応広間の方で、義父や侯爵様たちは宴会中ですが……」

「えんかい!?美味しい物もあるんれすか!?」

「色々食べ物もありますが、アルテミスちゃんはまだ小さいんですからお酒は飲んじゃダメですよ?」

「では、腹ごなしに食べますか」

「腹ごなし……?リコ、お腹ポンポンになっていますよ……?」


 正直、俺としてもさっさと寝てしまいたかったけれど、折角家族と再会できたリリアさんに仕事をさせ続けておくのも気が引けるので、お手伝いをすることにした。

 できるだけ、彼女には天皇様と一緒に居させてやろう。


 あと、1人でいるの怖いし……。


 そんな事を考えながら台所で食器を洗っていると、おずおずと委員長がやって来た。


「さ……犀果君……お願いがあるんだけど……」

「お願い?なんだ?」

「あのさ……なんだか怖いからさ……一緒にいてもいい?」

「……まあ、いいぞ。やっぱり怖さって、共有できる相手がいた方が和らぐよな……。理解してない奴といても、何故か解決しないって言うか……」

「うん……。あっちの宴会のとこに居ても、自分だけ浮いてる気がして……」

「まあな……」


 恐怖に支配されてるんだ俺たちは。


「でしたら、私も一緒に居たいのです……」


 後ろから白もきた。

 わかってる。

 皆まで言うな。


「収納カバンにジュース持ってきたから、飲むか」

「うん……」

「はいです……」


 そうして、京都の夜は更けていった。


 追伸、その日の悪夢の中で、壊れたマリオネットがNTRされたことにキレてスプラッタな事件起こしてました。






感想、評価よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「こっわかったあああああ!」 「あ!犀果君もやっぱり怖いよね!?私だけじゃ無かったんだよね!?」 「後ろに落ちてた人形も怖かったのです!不気味だったのです!」 この会話も聞こえてそうよね そして体育…
×HEARTFUL ◯HURTFUL な事件だったね……
……嫌な事件だったね。 新しいトラウマを刻んだだけだった。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ