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「おはよう委員長!突然お願いしちゃってごめんな」
「いいよいいよ!犀果君と行くとまた何かすごい事起きそうで楽しみだし!」
早朝6時、俺たちが駅に着くと、既に佐原侯爵家の方々が待機していた。
相変わらず委員長は、俺のコミュ障を癒すくらいのコミュ強だなぁ……。
はぁ……。
ただ、委員長と仲良く喋れば喋るほど、残りの2人の気配が剣呑になるからここまでにしておこう。
「佐原侯爵と、お兄さんもお久しぶりです。今日は、よろしくお願いします」
「お義兄さん!?君に義兄と呼ばれる覚えは無いんだが!」
「ちょっとお兄ちゃん!犀果君に絡むのやめてよ!」
「京奈がいうならそうしようかな」
「そうだな……京奈が言うならしょうがない」
相変わらずの娘と妹大好き父兄だ。
その次に好きなのが酒とツマミで、共に目が逝く程の重さで好いてるんだよなぁ……。
気を付けよう。
目の前で委員長とにこやかに会話するだけで死亡フラグが立つし。
「じゃあ、こっちの紹介もしておきますね。リリアは、皆さんご存じですよね?」
「お久しぶりです!」
「やぁリリアさん、元気そうだね」
「去年京都から帰ってきたとき以来だよね?」
「そうですね。王都にはいましたが、いつも食べ歩きしていました!」
「「それで……」」
去年、京都自治区から王都へと引っ越してきたリリアさんは、食欲に任せて王都の美食を堪能し続けた結果、あの儚げな線の細い美少女っぽい見た目から一転、豊満で煽情的な肉体へと変貌していた。
それなのに太っているようにはならない辺り、流石はゲームの美少女キャラだけあるわ。
「そして、その妹に当たるリコと、アルテミスです」
「よろしく頼む」
「よろしくれす!」
次に紹介するのは、リリアのコピーであるリコと、リリアを元に自分好みの肉体を作ったポンコツ上級AIのアルテミスちゃんだ。
詳しい話は、面倒なので割愛。
妹で通す。
「妹……?」
「父さん、妹って……」
「妹……」
父兄が困惑している。
当然だろう。
ここは、彼女の出番だ。
「色々あって、妹さんが新しく見つかったんだって!」
委員長には、リコとリリアの事情を昨晩の内に包み隠さず話してある。
ただ、それをこの2人に話してすぐに理解してもらえるかわからないし、そもそも受け入れて貰えるともかぎらないから、敢えて伝えない。
でも、委員長にさえ話を通しておけばそれで十分なんだ。
だって……。
「京奈がそういうならそうなんだろうね」
「そうだね父さん」
というわけだ。
「それと、実はもう1人連れていきたい子がいて……」
そう言うと俺は、俺の後ろにくっついていた女の子を前に出す。
彼女は、人外とかがいっぱいいる中ならともかく、普通の人間ばかりの所で姿を見せて、更に大人の男と会話するとなるとちょっと怖いらしく、俺の陰に隠れっぱなしだったんだ。
前に出した今も、俺の服の裾を掴んでいる。
「し、白といいますです……。出身は京都で……。今回は、里帰りのためにご一緒させてほしいのです……」
キツネ耳ロリ巫女である狐狗狸 白ちゃん。
物凄い可愛いけれど、この見た目で1000歳オーバー。
仲良くなると、敬語が取れて妹感が増すぞ!
因みに、あの珍妙からくり安倍晴明ロボ……いや、当時は普通の人間だった安倍晴明と、玉藻さんとの間に産まれた娘さんらしい。
この前会った時、寂しそうにしていたので、もしかしたら京都に行くときに連れていって、晴明ロボと会わせたら喜ぶかもと思って呼んだんだ。
当初、「でも、神社の電話番のお仕事が……」と渋っていたけれど、「いや、現代には、留守番電話っていう機能があるから……」と教えてあげた事で連れ出せた。
しなやかなのにもふもふなキツネ耳に、長めのもふもふ尻尾。
白い髪の毛……。
うーん、可愛い。
お揚げさんたべる?
イナリ寿司にする?
「犀果君、彼女は……?」
「コスプレ……ではないんだよね……?」
「そうですね。半妖ってなるんでしょうか?俺の友人で、京都にいる知人の娘でもあります」
「「半妖……」」
「因みに、その知人というのが、京奈さんの陰陽術の師匠でもあります」
「「京奈の?ならいいか」」
話が早い。
「犀果君、私に搦めていえば何でも通ると思ってない?」
「通っちゃってるじゃん」
「そうなんだよねぇ……はぁ……」
委員長が、ヤレヤレって顔で自分の家族を見ている。
愛されてるな委員長!
「さて、では時間も無い事だし、早速出発しようか!京奈は、犀果君たちを連れて席まで行っていてくれ。私たちは、車掌に挨拶してこよう」
「わかった!」
そう言う侯爵たちと別れ、俺たちは列車へと乗り込む。
京都自治区の最寄り駅までは、これに乗っていくわけだけど、そこからまた歩きなんだよなぁ……。
俺は良いけど、うちのメンバーには、途中でバテそうなのが多い……。
「特にアルテミス、お前だ」
「何がれす?」
「駅から歩いて京都自治区まで行けるか?」
「無理れす」
「だよな?というわけで、駅からはお前は俺が抱っこしていく!」
「ここまでも抱っこされてきたので、たのみます!」
片手を上げて笑顔でそう言ってくる幼女。
うーん……守護しなければ……。
「犀果君って、妹さんにも甘いんだろうなぁ……」
「だだ甘じゃぞ。デロッデロじゃ」
「あ、ソフィアさん!お久しぶりです!」
「うむ!久しいの!おぬしの酒と菓子、毎度楽しみにしておるぞ!」
「それはそれは!」
周りが色々言っているけれど、俺は紳士なんだ。
そうして俺たちは、楽しい楽しい列車旅にでかけたんだ。
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