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パーリィピーポーっぽくナイトプールを楽しもうとした俺達。
これが、本当にナイトプールと呼ばれる行為なのかはイマイチ自信がなくなってきたけれど、とりあえず陽キャでリア充な雰囲気は出ているんじゃなかろうか?
水着の美女たちを侍らせて、夜のプールサイドでバーベキューだし……。
あれ?これ、ナイトプールよりバーベキューがメインになってね?
だって、俺たち、プールでやったことが、幼女になっちまったAIに泳ぎの練習させたことくらいだし……。
いやいやまてまて!
バーベキューはアウトドア!
アウトドアと言えば陽キャ!
つまり、俺が今やっていることはリア充イベント!
アイたちとアルテミスを仲良くさせるという本来の目的には合致しているはずだ!
そんな自己正当化を膝の上に座らせたアルテミス(ようじょのすがた)に、炙ったマシュマロを食べさせながら考える俺。
あれ?パーリィピーポーかこれ?やってること、親か何かじゃないか?
「あまくてふわふわれふ〜」
まあいいか。
かわいいし。
「そういえば、リリアはなんでここにいるんだ?白川郷リゾートにルージュたちと一緒に泊りがけで行ってくるって言ってなかったか?」
そういう話で、俺とAIメイドと、酔いどれソフィアさんはお留守番状態になっていたはずだ。
「その予定だったんですが、ルージュさんは、クレーンさんから連絡が来て、引っ越し先に良さそうな土地がまた見つかったらしく、飛んでいっちゃったんです。エリザさんは、あちらで働いている方々のお手伝いで忙しそうでしたし……。なので、寂しいので帰ってきました!」
そう言いながら、焼けた肉をタレに付けながら食べている彼女。
ご飯も欲しいと言い出したので、アイがおにぎりを手渡している。
「そっか。じゃあ、リリアもアルテミスと仲良くしてやってくれ。優秀なんだけど、人付き合いに関しては、割とポンコツだから、フォローしてあげて」
「またポンコツって言われました!その評価にこーぎします!」
俺の膝の上で、両手でなんとかおにぎり一個を持って食べている自分のキュートな姿を見てからそう言えよ。
バインバインキュッボーンになる予定だったのに、待ちきれなくてロリロリロリで出てきたAIよぉ!
とりあえず、口の周りにご飯粒つけたままなのを何とかするところから始めよっか?
俺が、アルテミスの口をウエットティッシュで拭いていると、リリアさんがニコニコしながら話しだした。
「私、イマイチまだ良くわかっていないんですけれど……。つまり、アルテミスちゃんは、私の妹みたいなものということなんでしょうか?」
「そうれす」
「やっぱり!私、妹が欲しかったんです!」
「可愛がってくれてもいいんれすよ?」
「うふふ!では、このお肉をあげましょう!私が丁寧に育てたマンガ肉です!」
「いえあの……大きすぎて食べにくいんれすけど……」
「え?そうですか?」
俺とAIメイドたちが、「お前、本当にそれで良いのか?」とアルテミスに言いたくなりつつも、リリアがそれでいいと思っているならいいか……と諦めていると、更に衝撃の言葉が続く。
「では、義父さんに挨拶に行きませんか?小さい頃から私を育ててくれた方で、きっとアルテミスちゃんにも良くしてくれると思うんです!」
「いいでしょう!私もリリアと同じ顔になったのですから、義父に挨拶するのはとーぜんれふ!」
「そうかなぁ……?天皇様、すごい困惑するんじゃ……?」
「大丈夫です!私がちゃんと新しく妹が来たって説明しますから!」
「それが困惑の元だと思うんだ」
それでも、もう既に里帰りすることがリリアの中で決定事項なようなので、それならそれでいいかと考えを改めた。
とはいえ、どう行ったら良いかなぁ……?
「アイ、テレポートゲート使っていきなり現れたら、流石にびっくりされるよな?」
「恐らくは。京都自治区の人々は、長らく隔離された状態で生活をしていますから、ただでも普段見慣れない犀果様が、佐原家の方々と来たわけでも無いのにやってきているのを見てしまえば、色々とまずい事態になるのではないでしょうか?」
「やっぱりかぁ……」
京都には、アイ曰くテレポートゲートが結構ある。
だから、行こうと思えば即行けるんだけども、あそこって普通は外から人が来ること無い場所だから目立つんだよなぁ……。
これが王都だったら、多少外部の人間が混ざっていたって、誰も気にしないんだろうけど……。
でも、流石に魔王が駅前でカレー作ってたら気がつけよ。
「あ、そっか。佐原家の人たちが、近々京都に行く予定あったら、そこに混ぜてもらえば良いのか」
「それならば、下手にあちらを刺激することもないのではないでしょうか?」
「私もそう思います!」
アイとリリアの了解も取れたので、早速スマホの連絡先から、家族以外で一番連絡を取っているであろう相手である委員長を選択し、電話をかける。
いやぁ……メッセとかメールと比べて、やっぱり電話は緊張するなぁ……。
数コールのあと、通話がつながった。
『犀果君?どうしたの?』
「あ、委員長、ごめんな夜なのに」
『ううん!丁度暇だし勉強してたところだから大丈夫だよ?』
「暇だと勉強するって発想が立派すぎる……」
『あはは、そんなことないよ』
よし!
女の子に電話するときの童貞コミュ障らしさを消せた気がするぞ!
よくやった俺!
「実はさ、アイの妹がさ、リリアの妹になってさ」
『ごめん、早速何言ってるのかわからないかな……』
「まあ、その辺りは気にしなくて良いんだ。重要なのは、近々佐原家で、京都自治区行く予定無いかなって確認したかったんだ。もしよければ、その時にリリアさんと妹のアルテミス連れて里帰りさせてやりたいんだよね」
『あー、里帰りね。それなら意味がわかったよ!妹さんの件はまったくわからないけど!』
だよね。
俺も自分で言ってて何いってんだって気になってくるもん。
『でも、すごいね犀果君!』
「何が?」
いきなり褒められてしまった。
照れる。
『タイミングがだよ!』
「タイミング?」
『うん!だって……』
『私達は明日、京都に向かって出発する予定だったんだもん!』
「委員長ってもしかして俺の運命の女神的な存在なのでは?」
『犀果君の日頃の行いがいいんじゃない?』
「俺の日頃の行いが……?」
そこまで良くないと思う。
プラス面とマイナス面が合わさってゼロくらいな気がする。
「じゃあ、いきなりで悪いけど、一緒に行かせてもらえるかな?ちゃんとリリアとアルテミスの面倒はこっちで見るから」
『いいよー。じゃあ明日、6時に駅に集合ね!』
「わかった」
そして通話を終える。
ふぅ……。
緊張したけど、目的は100%達成しただろう。
完璧だな……。
「というわけで、明日は朝4時に起きよう」
「4時!?私、最近朝9時に起きているんですけれど……」
「だめ、4時」
「ぱーりーぴーぽーは、もっと自堕落な生活をしているんじゃないんですか!?」
「だめ、4時」
「うぅ……わかりました……。ちゃんと4時に起きてご飯食べます……」
いや、出かける準備しろよ。
「犀果様、そうなると、もうこのナイトプールモドキはお開きでしょうか?」
「もどき……まあ、そうだな」
「では、皆でシャワーを浴びて、パーリィピーポーっぽく寝ましょうか」
「パーリィピーポーっぽく寝るってどうやるんだ?」
「それはもう、皆で全裸になってくんずほぐれつ……」
「ごめん、やっぱり俺にはパーリィピーポーは早かったみたいだ。普通に寝よう。アルテミスの部屋は……」
「アルテミスちゃんは、私といっしょに寝ましょう!」
「私もリリアお姉ちゃんと一緒に寝たいれす!」
……なぁ、本当にお前はそれでいいのか?
月の上級AIさんよぉ。
感想、評価よろしくお願いします。




