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553:

「放しちゃダメれすよ!?」

「わかってる」

「絶対れすよ!?」

「絶対だ」


 日が沈み、薄暗くなった我が家の敷地内。

 ここには、いつの間にかできていて、尚且つ俺があまり利用する事も無かったプールが存在している。

 まあ、忙しかったからね……。


 そこで、水着に着替えた俺たちは、思い思いにゲーミングナイトプールを楽しんでいる訳だ。


 ウソです。

 ゲーミングがあまりに目に悪そうだったので、普通のライトにしました。

 虫が集る集る。

 果たしてこれは、俺が求めたナイトプールなんだろうか?

 多分違う。


「んー!」

「アルテミス、息継ぎをしなさい。死にますよ?新しいボディなんて用意していないのでしょう?」

「わぷっ!?息継ぎ……難しいれす……。水の中って、こんな感じなんですね……」

「なんだか無重力みたいだよね~。胸が浮かぶし~」

「ピリカは、多分一生溺れることが無いのです」

「くぅ……!やはり、もっと成長してから出てくるべきでしたか!」


 多分、傍から見たら、末の妹の泳ぐ練習に付き合う家族か何かに見える事だろう。

 あまりにハートフルすぎる。

 今のこの場で、ナイトプールっぽい要素は、セクシーなビキニを着てビーチチェアでワインをガバガバ飲んでいるソフィアさんくらいじゃなかろうか?

 いや、アレはアレでちょっと違う気もするけれど……。


「犀果さんっ!犀果さんっ!ちょっと休憩します!」

「わかった」


 まあいいか!

 とりあえず、アルテミスがアイたちと仲良くなれさえすれば、俺の目的は達成できたことになるし!

 アイもイチゴもピリカも、何だかんだでアルテミスの面倒を見ている辺り、本当にほほえましい。

 そして、ちっちゃい体で俺に必死にしがみついているアルテミスもほほえましい。

 守護らねば……。


 一旦皆でプールから上がり、バーベキューコンロを囲むように座る。

 折角肉体を得たんだから、美味しい物を食べないとな!

 そして、俺が夏をエンジョイするのに付き合ってもらうぞ!


「さぁアルテミス、何から食べたい!?肉か!?魚か!?野菜か!?輪切りにしたパイナップルもあるぞ!」


 とはいえ、本人が食べたくない物を食べさせるのもどうかと思うので、選んでもらうことにしよう。


「では、納豆がいいのれす!」

「なんで……?」

「気に入ったのれす!」

「そう……」


 夏……。


「そういえばますたぁ、イチゴの事は、リリアにはなんて説明するの?また同じ顔の女の子が増えたんだし、ビックリするんじゃない?」


 俺が、ここからどう夏に繋げようか考えていると、不意にイチゴがそんな事を聞いてきた。

 でも、どうって……なぁ……。


「月のAIが、アルテミスの姿をモデルにして肉体を作ったって正直に言ったらダメか?」

「多分、不気味に思うんじゃないかな~……」


 かもしれん。

 かといって、他にどういえば……。


「もういっそのこと、妹って事にしたらどうじゃ?リコのな」


 俺が頭を抱えそうになっていると、へべれけ一歩手前で、色気がすごいことになっているソフィアさんが、珍しくまじめな顔でそんな事を提案してきた。

 あれは……あと少しで寝る表情だ……。


「あぁ……それはいいかもな。月の仮想空間内で生まれた、現実には本来存在しない妹って事にしちゃえばいいか。妹には、人間は自動的に甘くなるしな」

「犀果様、必ずしもそうとは限りません、姉妹間でどろどろのバトルをする人間もいます」

「馬鹿な……!?妹とは、無限に甘やかしていい存在のはずだろ!?」

「それは、犀果様がシスコンだからです」

「俺の周りの人たち、結構妹にダダ甘なんだけど!」

「それは、犀果様の周りがシスコンだらけだからです」

「それは否定できんが」


 おかしいなぁ……。


「納豆ハンバーグおいしいれす!!」


 俺の膝の上で、俺が咄嗟に納豆をバーベキューに転用する苦肉の策として考えた納豆ハンバーグを小さなフォークで刺して頬張っているアルテミス。

 この姿を見て、誰が悪い考えを持てるというんだ?


「ほら、見て見ろよアイ。可愛くて無限にお小遣いあげたくなるだろ?」

「いえ、なりませんね」

「なら、イチゴは?長女なんだし、末の妹は可愛くて仕方がないハズでは?」

「いちご……別に長女でもなんでもないし……」

「じゃあピリカ!」

「特に感想は無いのです。強いて言うのであれば、アルテミスと場所を交代したいのです」

「「確かに」」


 息ぴったりだ。

 やっぱりお前ら、実は仲いいだろ?


「とりあえず、アルテミスの事は、リコの妹で、リコを追いかけて来ちゃったって説明するか。リコと口裏合わせておく必要があるけど」

「何をですか?」

「いや、だから、アルテミスをリリアにどう説明するかって話で、リコと……」

「アルテミス?……あ、また私と同じ顔の女の子が増えてます……」


 皆の視線が、1人の女の子に集まる。

 いつの間にか肉を食べに来ていた女の子!

 その名は!


「リリア!!!!!!!!」


 途端にテンションが爆上がりするアルテミス。

 そういやこいつ、激しめのリリアオタクだった……。


「会いたかったれす!」

「え!?え!?」


 感動の再会。

 リリア本人は、困惑の極み。


「えーと……とりあえず、お肉食べていいでしょうか?そろそろ取らないと焦げますし」

「いいぞ。なんかもう色々聞かれちゃったから正直に話すけど、リコがいた月の施設を管理しているアルテミスってAIが、自分が管理していた人間たちの最後の生き残りであるリリアの重めのファンで、こっちに肉体作る時に、見た目をほぼリリアと同じにしたって話なんだ」

「そうなんですかぁ……。あ、こっちのお魚も取っていいですか?」

「いいぞ。沢山くえ」

「美味しいです!」

「おいひいれふ!」

「アルテミス、飲み込んでから喋りなさい」


 そしてみんなでナイトプールを楽しみましたとさ。


 ……え?まじでそんな軽く流して良い内容だったの?

 なぁリリア……?






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