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ソフィアさんを連れて服を買いに行くときに、毎回恒例でやってくる『ファッションセンターしめさば』。
今回俺たちは、そこでアルテミスの服を一式買おうと来た訳なんだけれど、どういうわけか、他のメンバーも買う気満々らしい。
このお店、俺個人としては好きなんだけど、俺たちが……というより、ソフィアさんが来ると大騒ぎになるんだよなぁ……。
毎回迷惑になっているんじゃないかとドキドキしながら利用してるのに、何故か店員さんたちが一番大喜びでなぁ……。
その内、この店員さんたちの上の役職の方々に話が伝わったら、出禁喰らったりしないだろうか?
その時はその時ではあるんだけど……。
ソフィアさんだけでも大騒ぎになるこのお店。
そこに、さらに追加で美少女が3人と、美幼女が1人やってきたらどうなるか?
大したことは無い。
ただ、ファッションショーが大々的な物になるだけだ。
「ソフィア様ー!この服をおおおおお!」
「うむ!よかろう!」
「あああああ!胸はぱっつんぱっつんなのにウエストはスッカスカあああああ!」
「アイちゃん!貴方には、この緑が似合いそう!」
「その発想はありませんでした。試してみましょう」
「いい!いいわ!信じられないほどいい!」
「イチゴちゃんはピンクがいい!?それとも大人っぽく黒!?」
「えー……?ますたぁ次第……かなぁ……?(チラッチラッ」
「まさか、これが恋する女の子のキュートさなの!?」
「ウソ!?これでも胸のサイズが足りないんですか!?では……そのうち私が買って、超巨大おっぱいを装備してからコスプレに使おうと思っていたこれなんてどうでしょう!?」
「ちょっと胸がキツイのです……」
「はうっ!?」
とまあ、前世のテレビで見た外国のお祭りみたいな騒ぎだ。
硬いトマトを投げ合ったり、闘牛に追いかけられたりするアレレベル。
その内、興奮しすぎて倒れる人が出るんじゃないか心配になる程。
ただ、今日に関しては、複数の美少女と美女がいるために、上手い事ターゲットが分散されたのか、ソフィアさんショックは穏やかに見える。
問題は……。
「アルテミスちゃん!この服なんてどう!?」
「うわぁ……フリフリれす!」
「そうよぉ!女の子を可愛く見せるためだけに存在するアイテムなの!」
「こっちもどう!?敢えてちょっと大人っぽくしてあって、小さい女の子たちの自立心を掻き立てるの!」
「カッコいいれすね~」
「ちょっと貴方たち!アルテミスちゃんにまず着せてあげるべきはこれでしょ!」
「「それは、くまさんパンツ!?」」
「クマがなんなんれす?」
「可愛いの!」
「可愛いなら嬉しいれす!」
「「「キャアアアアアアア!!!!」」」
と、小さい女の子に可愛い服を着せたい勢が、ロリテミスに集中している事だ。
これはもう……何かの宗教儀式クラスだ!
「大変な事になってるなぁ……」
「あのぉ……」
「え?あ、はい。何でしょう?」
「ええと……お客様、本日はいつもよりもお連れ様が多いようですが、一体どのようなご関係なのでしょうか……?ソフィア様からは、ご家族と窺っているのですが、流石にアルテミスさんは……その……」
「あぁ……全裸にTシャツだけでしたし、気になりますよね。誘拐してきたんじゃないかとか」
「いえ!?そこまででは無いのですが……」
「ええと……何と言ったものか……。ソフィアさんは別なんですけど、今日新しく連れてきた4人は、姉妹なんですよ。そして、一番下のアルテミスは、今まで離れて暮らしていたんですけれど、そこの環境があまりいいとは言えない状態だったらしくてですね……。それで、こっちに来た時に、碌に身に着けるものも持っていなかったので、服を一式買い揃えないとと思って来たんです」
まあ、嘘は言っていない。
アルテミスがずっと住んでいた月の施設は、アルテミスにとってもう碌なもんじゃなくなっていたみたいだし、こっちで体を作った時には、完全なる全裸だったわけで……。
断じて誘拐とかじゃないですよ?
俺悪くない。
善良な蛮族よ?
「…………そん……な………あんなかわいい子供に理不尽な思いをさせる人間がこの世界に!?」
あれ?
俺の罪が追及されるような事態にならないように考えた言い訳なんだけど、思ったより響いてる……?
なんだか、涙目だ……。
いや、その理不尽な思いさせた奴らは、アルテミスの心情的には人間カウントしたくないみたいだし、そもそもこの世界って言うか、仮想世界の住人だし……。
まあ、説明する訳にも行かないから、勝手に考えてもらうか!
なんて俺が気楽に考えていると、今俺が話していた店員さんが、他の店員を集めて何かを話し合い始めた。
数分後……。
「しめさばの絶対の心得!」
「「「「「全てはお客様の笑顔のために!」」」」」
「我々は!?」
「「「「「おしゃれと幸せを運ぶキューピット!」」」」」
「お客様は!?」
「「「「「我々に幸せを運んでくれるキューピット!」」」」」
「しめさばメンバー!ふぁいとおおおおおおおお!」
「「「「「おおおおおおおおお!!!!」」」」」
……なにあれ?
めっちゃやる気満々で掛け声出してるけど……。
あ、今自動ドアから入ろうとしたおっちゃんが、ビックリして帰って行った。
なんか、ごめんおっちゃん……。
「アルテミスちゃん!私たちが!貴方を!世界一可愛い女の子にしてあげます!」
「本当れすか!?おねがいしまう!あ、また舌がうまく……」
「くぅぅぅ…………!可愛いいいいいい!」
……まあいいか。
皆幸せそうだし。
おっちゃん以外。
ごめんおっちゃん……。
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