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「うぅ……頭が重い……!これが、ちきゅーのじゅーりょく……!」
「いえ、まだ体が幼すぎて、頭の占める割合が大きいだけですよ」
「でも……!登場してそうそう、犀果様にセクシーアタックをきめました!」
「ますたぁ、慈しむようにTシャツ脱いで着せてたけど……」
「それに、見てくらさいこの美しい体!リリアのデータをもとに、バインバインきゅっぼーんになるようにそうさしてあるんれす!」
「だから、そうなるまでカプセルの中で育ってから出てくるべきだったのです……」
「くっ……何より、舌が上手く動かなくて、たまにうまく発音れきません……!これが……舌たらず……!?」
「「「だから……」」」
とうとう四つん這い……というか、ハイハイ状態になってしまったアルテミス。
その小さな姿を3人のメイドが囲んでいる。
3人ともが、完全なる呆れ顔だ。
「まぁまぁ、アルテミスちゃんはまだ小さいんだから、そう厳しく言わなくても良いだろ?」
そんな姿を見てしまうと、ついつい庇い建てしたくなってしまう。
「ますたぁ……」
「犀果様、その娘、外見上は3~4歳ですが、中身はアルテミスですよ?」
「仮想空間では、ボインボインにしながら納豆食べてたAIなのです」
当然ながら、3人は、俺がアルテミス側に立ったことに不満なようだ。
でもさぁ……幼女は、護るもんだろ?
男児?
んなもん谷底に落として這い上がって来た奴だけを育てりゃいいんだろ?
俺知ってるよ。
あれ?
奴隷から自力で食料を奪わせて、ハングリー精神と戦闘力を鍛えるんだったか?
スパルタのオッサンたちがそう言ってたような……?
「ふ……ふふ!やはり犀果さんは、私の魅力にメロメロのようれすね!」
蹲っていたアルテミスを抱き上げると、彼女は「むふーっ」と調子がよくなる。
服装は、未だに俺が直前まで着ていた『愛LOVE夏Tシャツ(800円の50%OFF)』1枚だというのに、堂々とした表情になった。
「アルテミス、気が付いていますか?」
「何にですか?」
「犀果様の視線にです」
「視線?」
突然アイがそんな事をアルテミスに言う。
アルテミスも俺も、何の話かまったくわからんが。
「視線がどうかしましたか?」
「犀果様が貴方に向ける視線。それは、性的に魅力を感じている相手に向ける物ではなく、妹君に向ける物と同種の、慈愛100%の視線ですよ」
「な!?」
「今の貴方は、犀果様から異性と見做されておりません。精々が、姪か、近所に住んでいて度々世話を任される小さな女の子、くらいの認識でしょう」
「ば……ばかな……私は、ボインボインで、美しいハズで……」
「ボインボインな部分など皆無ではないですか。全身プニプニですが」
「そんな……う……うぅ……」
「わあああああああああああん!!!」
「あー!ほらほら泣くなアルテミスちゃん!ほーれほーれ揺れてるぞー!?こらアイ!小さい子をいじめるなよ!」
「ですから、その見た目でも中身はアルテミスです」
「まあそうなんだけども……」
「……では、よく考えてください」
「なんだ?」
「そのアルテミスをどうしても守護ってあげたくなる犀果様の暖かい気持ちはわかりました。ですが、本当にそれでいいのでしょうか?」
「ん……?」
「大切だからこそ、もう少し厳しくしてあげる必要もあるのでは?」
「た!確かに!?」
目から鱗の発想だ!
俺なんて、何とか笑わせるために、無限にお小遣い上げそうになってたのに!
「よし……アルテミス、泣いてばかりじゃダメだぞ」
「ぐす……ですが……自分でもあまりに情けなく……何故もう少し我慢れきなかったのか……」
「それだけこの世界を楽しみにしててくれたって事なんだろ?俺は嬉しいぞ。でも、だからこそ、泣いてばかりいちゃダメだ。人生は、楽しんだ者勝ちだ。だったら、笑わないと。お前は、これからどんどん大きくなっていくんだ。いつも嬉しい事ばかりじゃないだろう。きっと、嫌な事も多いはずだ。それでも笑え。笑う門には福来るなんて言葉もあるけど、実際に笑うと脳内ホルモンとかの影響で幸せになれるって話だし。何より、お父さんもお母さんも、きっとアルテミスちゃんの笑ってる顔のほうが好きだと思うぞ?」
「お父さん……お母さん……」
そうだ、泣き止むんだ少女よ。
君は、この世界をもっと楽しめ。
今楽しめていないというなら、楽しめるようになるまで俺が護ってやるさ。
「犀果様、いませんよそのAIに両親なんて。強いて言うならストロベリーです」
「いちごに振られても……産んだ覚えないし……」
「体が幼いせいか、精神も引っ張られて子供みたいな思考になっているようなのです。元々精神的に成熟するほどのコミュニケーションを取ってこなかったからか、未熟な状態だった可能性もあるのですが」
お姉ちゃん3人は、まだ素直にこの子を受け入れられないようだ。
はぁ……仕方ない。
こうなったら、ちゃんと家族仲を深めさせてあげないとな。
折角新しくお前たちの妹が来てくれたんだからさ。
というわけで、作戦を立てました。
「注目!」
「何ですか?」
「ますたぁがまた変な事しようとしてる」
「今度は何なのです?」
「え?またって……このテンションがこの人の普通なんれすか?」
「これより!『ドキ!AIだらけの大サマーフェスティバル!(ポロリもあるかもよ)』を始動します!」
「「「水着の準備は万全です」」」
「えっ?えっ?」
夏を堪能しつつ仲良くなろうぜ!
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