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 8月といえば、この世界、というか王立魔法学園は、夏休み期間になる。

 去年も色々頑張ったけれど、今年も色々忙しかった。

 単位のために子供たちを連れて昆虫採集&キャンプをしたり、新幹線やリゾート地を作ったり……。

 こまごまとした所だと、生徒会の……というより会長からのいつも通りのお手伝いのお願いとか、王様からの依頼もあった。

 いやぁ……毎日が充実してたぜぇ……。

 

 あれ?冷静に考えると、まったく遊んでないな?

 遊んでいた気がしてたし、何だかんだで楽しんではいたけれど、基本誰かのための仕事とかだしな……。

 新幹線を女の子に貢いだのは、遊びに入るだろうか……?

 入らんな。

 遊びどころか本気だもん。

 本気で作ったもん。

 

 夏休みぞ?

 もっとエンジョイしてもいいんじゃないだろうか?


 俺の中の少年心が囁く。

「お前の夏は、まだ始まっていないぞ」

 と。

 まあ、あいつはいつもそんなこと言っているし、多分冬休み中にも似たようなこと言ってるが。


「というわけで、何か良い案無いですかね?一発で夏を取り戻せるようなサムシングが」

「……ここから外に出られねぇオレによくそんな事聞いてくるよな?」

「だって、相手は超有能で奇麗で頼りになる女神様ですよ?そりゃ普通は聞いてもしょうがない事でも、答えてくれそうだなって思って聞きたくなりますよ」

「そ……そうか?まあ、オレはお前の一番の味方だからな!」

「でしょう?」


 ちょっろ。

 忙しくてここにくる頻度が下がっていたせいで、ぷんすこ怒っていたリスティ様。

 そこで白川郷リゾートで作られたお土産用の煎餅と温泉饅頭と温泉卵、そして仕込んでからまだ時間が経っていないとはいえ、初の白川郷産の酒類(ビールと日本酒と焼酎)も特別に渡したら、ニッコニコになってくれたんだ。

 ちょろすぎて護ってあげたくなる……。


「っつってもなぁ……。オレは、基本的に酒飲むのと剣打ってるのが一番おもしれぇからなぁ……」


 頭の中で、アドバイスが無いかと考え始めたらしいリスティ様。

 しかし、その顔がいきなり「はっ」っとしたものになったと思ったら、こっちを睨みつけてきた。


「そういやお前!最近全然新しい剣だしてねぇじゃねぇか!」

「いや……十分でしょ戦力的には……」

「お前が前から希望してた特殊能力ある剣だって作りまくってやったんだぞ!?」

「そう言われても……。何が出るのかわからない神剣ガチャに挑むより、破壊することが不可能で、場合によっては魔力タンクにもなる世界樹製木刀を補給した方が何かと便利だなぁと……」

「……ふひっ……にへへ……そりゃ、あの木刀は自信作だけどよ……」


 自分の作った木刀を褒められて、ニヘラってるリスティ様。

 ちょっろ。


「って誤魔化されるとこだった!おい!いいから、1本くらい剣出しとけって!悪い事いわねぇから!」

「えー……?とか言ってまたブッパ系なんでしょう……?」

「あーわかったよ!じゃあ次は、ちょっとサービスしてお前のお望みの剣出してやるからリクエストしてみろよ!聞いてやるから!」


 なんか、すごい事言ってきたなこの女神。

 俺のリクエスト通りの神剣をくれるだと……?

 それは……すごい事だとは思うけれど……。

 いきなり言われて即答えられる程俺の厨二力は高くないぞ……?


「うーん……」

「ほら!言ってみろって!」

「うーん……うーん……」

「何かあるだろ!?こうしてほしいってのがよ!そのままズバリ実現できなくても、それっぽい物ならつくれるかもしれねぇから言ってみろって!」


 そう言われてもなぁ……。

 さっきも言ったけど、俺は今の剣の手持ちでも、割と満足しているんだよなぁ……。

 今、戦力としてじゃなく、特殊な能力を有した剣を出してもらうとしたら、何が良いか……か……。


 今俺が何に困っているかとか、何がしたいかって事から考えてみるか?

 そうだなぁ……。

 夏休みを堪能したいってことが1番目にくるかなぁ……?

 他の事に関しては、割と俺自身の力でできる気がするけれど、流石に夏を楽しむってなると、俺の貧困な発想ではちょっとなぁ……。

 聖羅に言えば、一緒にテレビ見ながらゴロゴロしてほしいって言いそうだし、有栖に言えば筋トレとかショッピングだろうし、リンゼに言えば釣りだろうし、理衣に言えば「……えへへ」ってなんとなくあざとい事言ってくれるんだろうし、会長に言えば何かしらのデート要求か生徒会の手伝いだろうし……。

 絢萌だったら何言うかな?

 意外と図書館に行きたいとか言ってきそう。

 薫子ちゃんが「お姉様とは図書館に良く行くわ。お金かからないから」って言っててちょっと涙出そうになった覚え。


 その時、俺に天啓が降りた。

 いや、神の世界で、神の前に座りながら降りてくるのが、天啓と呼べるのかは知らんが。


「リスティ様、一つ思いつきました」

「なんだなんだ!?言ってみろ!」


 ワクワクと先を促すリスティ様。


「俺は、夏を堪能したいです」

「おう」

「でも、自分だけ堪能しても、リスティ様がいじけてそうだなって思うと全力で楽しめない気がするんですよ」

「まあ……そりゃオレだって遊びてぇしな……思い出話聞かされるだけじゃ悲しいからな……」


 寂しそうな表情になるリスティ様。


「そこでなんですけど、リスティ様を人間界に召喚する剣って作れませんか?」

「…………はぁ?」


 何言ってんだコイツって顔になるリスティ様。


「世界を運営してる神を召喚とか、無理に決まってんだろ!」

「そうなんですか?」

「人間界にオレ以外の神が顕現する時には、オートで色々制限がかかってっから、あの世界に神がいても崩壊してねぇんだよ!世界の仕組みでそうなってんだ!神の世界か、自分の世界だからこそ神ってのは全力を出せるんであって、他の世界に行ったらソコソコの神性しか発揮できねぇってな!でもオレが乗り込んでみろよ!世界を運営するオレは制限なしで顕現することになるから身じろぎしただけで次元が揺らぐくらいの衝撃が起きるんだぜ!?」

「へぇ……」


 それは迷惑すぎる。


「そうなんですね……。分霊みたいな感じで、リスティ様の力をかなり劣化させた分身みたいなのだったら行けるかなって思ったんですけど……」

「…………んんっ」


 あれ?いけるか?って顔になるリスティ様。


「ランダム性を付けたって事にして……神性をほぼ全て封印して……しかも人間の使い魔的な存在ってことにして……命令されたらエッチな事ですら逆らえないくらいの強力な使役にして……」


 どうしよう?

 軽い気持ちで言っただけだったんだけど、すごい真剣に考えてる……。


「…………おい、大試」

「何ですか?」

「オレ、暫くお前としかまともに会話してねぇんだ」

「でしょうね」

「だから、頼むぞ」

「はい?何をですか?」


 俺の質問への答えが出る前に、俺は神の世界から引き戻された。

 戻った際は、いつもの狸神社。

 だけど、こんなに無理やり神の世界から追い出されたのは初めてだなぁ……。

 何か気に障るような事しただろうか?


 俺が、ちょっと悲しくなりながら拝殿から出ようとすると、腰につけているツールホルダーの中から何かが落ちた。

 見ると、どうやらガチャチケのようだ。

 木刀補充用に何十枚もストックしている分。

 その内の1枚がひらっと落ちて、そして俺の靴の下に丁度入ってしまい……。


 ビリッ


 気が付いた時には、破れてしまっていた。


「あ、やば!」


 意図せずガチャチケを使用してしまった……。

 とは言え、俺がガチャをやった所で、木刀が新たに1本具現化できるようになるだけ。

 ストック増やしたと思えばまあいいか……。


 って思ったのに、ガチャが今まで見たことが無い程に極彩色で光り輝き始めた。

 カランと転がり出てくるガチャカプセル。

 既に出てきているというのに、カプセルの中は未だに光っている。

 え?

 何これ怖いんだけど……?


 まあ、作ったのはリスティ様だろうから、出したところで何か大変な事になるってことは無いんだろうけれど……。

 ならないよね?

 信じるよリスティ様……?


 そして、カプセルから出てきたその剣は、大変な事にならざるを得ない物だった。


 リスティと遊ぶ剣(UR):オレの分霊を人間界に召喚して一緒に遊ぶ権利が得られる剣!使用は1日に1時間の制限アリ!繰り返し使えるけどあんまり人のいる所で使うなよ!噂されたら恥ずかしいからな!装備時に身体能力を200%増加!但しオレの分霊の能力は普通の人間の女の子にまで劣化するから注意な!






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― 新着の感想 ―
リスティさん初心すぎん?抱っこして愛でまわしたいんだが?
あれ、また女の子口説いてる?
ついにリンゼがリスティ様に土下座回が始まるのかな?引き継ぎ無しで押し付けてしまったわけだし。
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