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それから毎日のように夜遅く……というより夜中までかけて、俺は、アイと2人で街づくりを楽しんだ。
そう!楽しんだ!
いやぁ……リアル都市造りシミュができるなんて思わなかったなぁ……。
しかも、リアルであるにもかかわらず、一晩経てば大抵の建物は出来上がっているんだ。
もうね……やりまくるよね……!
「よし!ここに温泉旅館を建てよう!あっちにはホテルな!」
「かしこまりました」
「ここは、周囲を山に囲まれてるんだな……。折角だしイベント会場……いや、ドームにするか!振動や音があまり他に響かないようにできそうだ!」
「かしこまりました」
「牧場を作ろう。乳製品や肉を作って、白川郷ブランドで売り出すんだ!」
「かしこまりました」
「病院はマストだよな。聖羅が常駐できるわけじゃ無いんだし、医者と回復魔法な得意な人間が詰めておける場所がないと危なすぎる。どうせなら、周辺地域からも駆け込めるくらいデカいのがいい」
「かしこまりました」
「ショッピングモールを作ろう!といっても、白川郷らしいかというとそんなことは無いから、山で隠すように!」
「かしこまりました」
「そういや、リンゼが釣り堀が欲しいって言ってたよな?どうせなら、ダム湖全体を釣り場にしちゃうか?そのために今から養殖場を作っとこうか。そこで増やした魚を放流していこう。種類は何が良いかなぁ……」
「遺伝子操作で、私が作る餌を与えなければ1週間で死ぬ巨大ニジマスなど如何でしょう?」
「それさぁ、パニックホラーとかの導入部にありそうな設定じゃない?」
「ご心配なく。私が作られた時代には、割とメジャーな品種でしたので。技術的に既に完成しています」
「太古の人類も釣りを楽しんでたのか……」
「娯楽なんて、どんな時代でも似たようなものですよ」
「お土産屋は、お土産屋っぽさが重要だと思うんだ」
「言葉の意味的には、何を言っているのかさっぱりわからないはずですが、何となくわかりますね」
「だろ?」
「端っ子に置いておく木刀には、何と刻みますか?」
「当然、白川郷!」
「かしこまりました」
そうして、白川郷観光地化計画をスタートしてから1カ月があっという間に過ぎた。
「できました」
「できたなぁ……」
「新幹線さえ走らせることができれば、数日以内に営業を開始できます」
「よくやったなぁ……。アイって本当にすごいな」
「いえ、それほどでもありますが」
とりあえずアイが頭を差し出してきたので撫でておく。
手の位置をずらすと、頭が追尾するように動くのが楽しい。
後ろにズラッと並んだ量産型アイたちも思考は共有されている為か、とても嬉しそうだ。
無表情だけど。
「ダムも稼働できるのか?」
「はい。現状、水位は20%しかありませんので、このまま雨が降らない場合大変な事になりますが」
「ダメじゃん!?」
「ですので、犀果様にお願いがございます」
そう言ってアイが俺にジョウロみたいなものを渡してきた。
何これ?
「魔力を下さい」
「なぜこれを渡してきた?」
「このジョウロからは、魔力が続く限り水が出てくるので」
「俺はマーライオンか何かか?」
「マーライオンというものが何かはわかりませんが、犀果水でダムをいっぱいにしましょう」
仕方ない……。
やってやろうでは無いか!
ダムから水が噴き出す所見たいしな!
あ、ダメか。
吹き出すのは緊急時か事前に警告してからにするべきだろうし……。
いやまてよ!?
そういやこの世界のここの川の下流って、人間は1人たりとも住んでねぇわ!
そもそも普通の人間が到達できるような場所ですらない!
ならできる!できるぞ!
「見てろアイ!マータイシの雄姿を!小便大試でもいいぞ!」
「本当に宜しいのですか?」
「やっぱだめだ。ただの大試で」
「かしこまりました」
そこから数日、毎日小さめの湖くらいの水を出した俺。
あれ?
このダムどうなってんの?
山間部に海でも作ったの?
「アイ……いつになったら満水になるんだ?」
「空間拡張を行っておりますので、予備でもう少し欲しいですね」
「まて、もしかして既に満水超えてたのか?」
「はい。拡張分も含めれば、琵琶湖の水量を越えております」
「サラッというなぁ……」
まあ、確かに予備は必要かもしれんが、必要になった時に俺がここに来て水出せばいいんじゃないのか?
そう思った俺は、アイに提案する。
「予備分は、また今度で良いんじゃないか……?」
俺なりに冷静に判断したつもりだ。
だけど、冷静な判断なんて言う物は、感情次第で脆く崩れ去るんだ。
「……それではダメなんです」
「どうしてだ?」
「……私が、犀果様を独り占めできるのが今だけだからです……」
「……」
結局、そこから更に一週間水を出してた。
ダムの初放水を堪能できました。
ダムカードも作ろうかな?
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