530:
身内だけとはいえ、全員に欲しい観光地ネタのアンケートをとった結果、関連するものを纏めて纏めて纏め抜いたにもかかわらず、最低でもそこそこ大きめの集落になる程の軒数を作ることになってしまった。
それら建設予定の施設をリストにして、ドドドドドとビームを撃ちながら掘削しているアイに提出した所、予想していなかった言葉が帰って来た。
「電力が足りません」
「忘れてた……」
俺としたことが!
都市作り系シミュでは、基本のきと言える部分じゃないか!
そして、原子力発電に手を出して、怪獣に破壊されるところまでセット。
「そもそも白川郷って電力あるのか?」
「データによると、小型で旧式の魔石炉によって小規模発電を行っているようです」
「小型で旧式かぁ……。どう考えても、観光地と新幹線の電力を賄えるとは思えんな」
「あくまで予測値ですが、現状の100倍は発電量が必要かと」
「原子力いくか……」
はい!核です!
「いえ、現在の発電量が少なすぎるだけですので、原子炉や核融合炉、縮退炉等の規模は必要無いかと。それに、他にも重要なインフラである水道が整備されておりませんので、そちらもまとめて解決してしまいましょう」
「まとめてって……そんな都合のいいもんがあるのか?」
「はい。水道と電力を同時に手に入れるとってもナイスな建造物があるじゃないですか?」
「……まさか……それって!」
俺は、ハッとした。
もしかして!もしかするのか!?
あのクソデカくてクソ金がかかってクソ手間がかかってクソカッコいいアレを作るのか!?
「ダムを作りましょう」
「っしゃああああ!」
ダム。
それは、とにかく巨大で、水を貯めておく部分まで含めると、人類が作る構造物としては最大級の物だ。
意外と知られていないけれど、水道水用の水を採るためダムであっても発電は行われている。
そのため、災害にめっぽう強い。
周辺地域が全て停電になっても、ダムの制御室はエアコンがガンガン入っているというのもよくある話。
似たようなところだと、ゴミ焼却施設なんかも発電を行っていて、やっぱり停電には強い。
規模にもよるけれど、ダムによる発電でもかなりの電力が賄えるので、どうやら今回、新幹線や観光地を新しく作ったとしても十分足りるそうだ。
とはいえ、ダムもメリットばかりではない。
作るためには、山や谷が存在する場所であり、尚且つ長期間水に沈んでいても周辺地域に問題が起きない辺鄙な所でなければならない。
この場所の選定をおざなりにすると、大雨が降る度にダムが決壊もしくは越水し、下流の地域が壊滅的な被害に会ったりする。
それに、そんな場所に巨大な構造物を建てようとなると、当然作業自体も大変になる。
黒部ダムが有名だけど、他のダムもまあ大体クソゲーと叫びたくなるような厄介な奴らだ。
作業現場まで到達できるようにトンネルを掘っていれば崩落し、それを何とかしたと思ったら地下水や有毒ガスが噴き出し、トンネルから出たら出たで土砂崩れも起きる。
クソゲー!
「でも、アイなら作れるんでしょう?」
「もちろんです。しかし、ダムを造るとなると、流石に報酬をもう少し頂かないと……」
「……どのくらいだ?」
「視察デートの時間を1日につき6時間に延長で如何でしょう?量産型の私も導入しますので、工期は遅らせません」
「……わかった。むしろやってる事の重大さで考えたら7時間でもいいくらいだ」
「では、7時間で!」
俺の1日、24時間の内、7時間がアイへと費やされるだけで新幹線とダムと観光地が完成するなら安い物だ。
掛け声にも熱が入るぜ!
「そういや、アイは何か欲しい施設あるか?他の皆にはもう聞いてたけど、アイはまだだった」
「そう……ですね……。では、何の変哲もない、小さな一軒家が欲しいです」
「一軒家?意外だな。もっと特殊な物を欲しがるかと思ってた」
「そうですね。私も、色々と作りたいものはございますが、作ろうと思えば自分で作れますので」
「そういやそうだな」
現代の技術を大幅に超えたテクノロジーで、あらゆるものがモリモリ出来上がっていくからな。
「ですから、重要なのは中身では無いのです」
「つまり?」
「その一軒家ですが、生体キーは2人しか登録できないようにします」
「んん?」
「私と犀果様しか入れない建物ということです」
「あぁ、秘密基地みたいな?」
「いえ、どちらかといえば愛の巣とでもいいましょうか……」
「秘密基地にしよう」
「……かしこまりました」
ちょっとだけ不満そうだけれど、2人しか入れない建物を愛の巣なんて定義されたら、何も起きない筈もなく……。
てかですね、美人に好意をストレートにぶつけられているのに我慢するのって大変なんですよ。
婚約者いる状態でその手の攻めは腹切りに繋がるので気を付けてくれよ!
ただ、秘密基地は秘密基地で楽しそうだろう?
「ハンモックとかつけようぜ!」
「では私は、地下室を作らせて頂きます」
「屋根裏部屋も必須だよな?」
「いいですね。あとは……ドリンクバーなど如何でしょう?犀果様がお酒を嗜まれるのでしたら、バーカウンターも良いかと思いますが」
「いいなーそれ!酒は飲まないけど、バーカウンター自体は雰囲気あっていいかもしれん」
「ついでに、各部屋にイマイチ使い辛い小型冷蔵庫も置きましょう。テレビと一体型のゲーム機等も必要ですか?」
「完璧じゃないか……!」
その後も2人きりで悪だくみをしていたら、いつの間にか夜中になっていた。
感想、評価よろしくお願いします。




