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517:

「絢萌さんちの管理地……どこだっけ……?」

「まあ、王都の方はそうそう行くことはないでしょうから、ご存じありませんわよね……」

「いや、そもそも大抵の貴族の管理地を俺は知らない。もっというと、大抵の貴族の名前も知らない」

「大丈夫なんですのそれ?」


 さぁ……?

 今の所、婚約者たちの実家とか、委員長んちとか、そういうとこくらいしかわかんないんだよなぁ……。

 あ、でも実家の名前は知ってても、管理地がどこかとかは知らないわ。

 ははは、まったくわかんねぇ。

 笑う。


「いざとなったら、笑って誤魔化す」

「大丈夫では無いようですわね……」

「笑顔は重要だぞ?」

「笑顔だけで乗り切れる程世の中甘くないですわ……」


 まあ、俺の笑顔で乗り切れた場面なんて殆どないもんね。

 大抵は、パワーで解決している気がする。

 蛮族かな?


「それで、管理地はどこなんだ?」

「白川郷という場所なのですが……」

「あー!知ってる知ってる!富山とか岐阜とかの方で、合掌造りの建物あるとこ!」

「え……えぇ、よくご存じですわね?そんな古い建築様式……」

「有名じゃないのか?世界遺産になったりしてなかったっけ?」

「せかいいさん……とは何ですの?」

「……あ、この世界には無いのか……?」

「はい?」

「いや、こっちの話」


 世界共通で遺産を決めるような仕組みが無いんだろうなこの世界……。

 間に必ずと言っていい程魔物の領域があるから、国家間で人間の行き来が簡単にできる世の中じゃないし。

 そもそも魔物の被害多すぎて、遺産を残しておくことすら儘ならないかもしれないし……。

 大魔神てふ子ってどうなんだっけ?

 重要文化財?


「昔は、火薬や養蚕でそこそこ潤っていたそうなのですが、今はもう黒色火薬の時代でもありませんし、蜘蛛形の魔獣から採れるシルクの手法がある程度確立されてからは、絹糸の価値も……」

「へぇ……。あれ?じゃあ今って、どうやって生計立ててるんだ?あの辺りって山の中だし、すごく雪も降るから冬場は完全に孤立するんじゃなかったっけ?」

「そうなんですの……。それでも、私たち金持家が代々都との間を行き来する人々を護衛したり、自らが商人となって行商を行っていたのですが、主要産業が縮小してしまった今となっては、なかなかそれも難しく……。とはいえ最近は、いくつかの薬草や健康にいいとされる特殊な農作物の生産を行っていまして、それらを使った健康食品や薬を販売することで、一時期よりは改善してきたのですが、それでも……」

「なかなか大変なんだなぁ……」


 前世の知識だと、現代における白川郷の主な収入源といえば、観光だったはずだ。

 その観光っていうものが、この世界だと殆ど存在しないのは辛いな。

 白川郷じゃなくても、ギリシャなんかもこの世界にあったら大変な事になってそうだな。

 あるのかな?

 今度地図で調べてみるか……。


「ん?って事は、王都と白川郷の間は、完全に魔物の領域って事か?新幹線は通ってないの?」

「ございませんわ。そちらに線路を作った所で、大した儲けも出ないと考えられているのでしょうね……。ですから、中々満足のいくような交流、流通は行われておらず、何とかして活性化を図りたいんですわ!」

「そっかぁ……。あれ?金持さんたちは、どうやって王都に来たんだ?」

「妹を抱えて、私が走りましたわ」

「あの時のお姉様、とても凛々しくて素敵だったわ!魔物を拳で叩きのめしていくのだもの!」

「うぅ……妹の前でこの手の話は恥ずかしいですわ……」


 顔を赤くした絢萌さんが、やってきたクソデカパフェに細長ーいスプーンを突っ込んで食べ始めた。

 その横では、薫子ちゃんがニッコニコ顔でパフェをパクパクいっている。

 あの小さい体でよくあの量が食えるな……。


「やっぱりパフェは冷えてるほうが美味いのう!常温タイプは、ワシ的にナンセンスじゃ!」

「そうね!チョコもカリっとしているくらいの冷え冷えが最高に美しいわ!」


 いつの間にかソフィアさんまで席についていて、何時注文したのかもわからないけれどパフェ食ってるし……。


「白川郷と王都との間に道ってあるのか?」

「多少踏み固められた獣道よりはマシという程度の物であれば……。ですけれど、やはり戦える者がいなければ、安全に往復することは難しいですわね」

「となると……それこそ空を飛んでいくか、道を切り拓いて結界を張るなり、戦闘員に警備させないといけない訳か……」


 金がかかりそうだ。

 しかも、金を幾らかけた所で成功するとも限らないだろう。

 結構距離あるからなぁ東京から白川郷まで。

 だからこそ鉄道を引かれる事も無く、衰退しちゃったんだろうな。

 むしろ、あんな山の中にある地域が未だに滅んでない事の方がすごいかもしれん。

 獣道よりマシ程度ってことは、普通の道路は繋がってないんだろうし、自動車で到達することは不可能に近い。


 特産品を王都で売るには、誰かが徒歩で王都までやってくる必要がある。

 その大変な役目を魔力が多い貴族が引き受けていたと。


「でもなぁ、飛行機あるっちゃあるけど、それを使って白川郷と王都の間を行き来させるのは難しい。あれは、運用するのも作るのも、うちの部下が付きっきりにならないとダメな物だから……」

「そう……なのですわね……。いえ、私としても、ダメで元々で頼んでみたに過ぎませんので」


 イチゴエアは、イチゴにしか使えない。

 そう言う風にしておいた方が良いだろうさ。

 あんなもんが量産されて世界中を飛び回ってたら、大変な事になるし……。


「だから、普通に道路を繋げるのが良い気がする」

「できればそうしたい所ですけれど、そのような予算は……」

「そこで相談なんだけどさ」


 俺は、悪い顔を作る。

 極めて悪い顔だ。

 ぐへへへって擬音が聞こえてきそうなくらい悪い顔で、絢萌さんに提案した。


「道は俺が作るから、その費用は、絢萌さんが体で払うってのはどうだ?学園卒業後、開拓村で働いてさ。悪い話じゃないと思うんだけど……」


 俺からしても手間はかかるけど、それでもほしい人材だ!

 それに、アイたちに頼めば何とかしてくれそうだし!


「か……体で……?」


 俺の言葉を聞いて、絢萌さんは胸を両腕で隠すようにしながら身をよじる。

 これから代官に悪い事される女騎士みたいな雰囲気だ。


「お姉様、お受けするべきだと思うわ」


 その隣から響く、まさかのGOサイン。

 そちらを見ると、口の周りにクリームをつけている薫子ちゃんが。

 パフェが美味しかったらしく、ニッコニコのニッコニコだ。


「で……ですけれど……いえ、確かに、私の身一つで解決するのであれば、安い物ですわね……」

「もしお姉様がお嫌でしたら、私が行っても構わないわ。大試先生が相手であればむしろ喜んで……」

「子供がそう言うことを冗談でも言ってはいけませんわ!」

「でも、多分大試先生は、お姉様に酷い事をするつもりなんて全くないわよ?今もちょっとふざけているだけで、基本的にはお姉様のために頑張ろうとしてくれているだけのようですもの」

「えぇ……?で……ですけれど、支払いは体でって……」

「開拓村で働けということでしょう?肉体労働という意味でしょうね。お姉様が変な妄想で勝手に恥ずかしがるのを楽しんでいるだけよ」

「な!?」


 バッとこちらを見る絢萌さん。

 いや……そんな顔真っ赤にして睨まれても……。

 どんな事させられると思ったんですかねぇ……?


「不潔ですわ!」

「聖羅、俺、そんな不潔な事言ったか?」

「言ってない。だけど、表情が不潔だった」

「悪代官っぽい感じでてただろ?」

「出てた。帯を引っ張られそうだった。今夜浴衣を着るから、引っ張ってみる?」

「え……?いや、リアルでやるのはちょっと……」

「そう……」


 ちょっと残念そうな顔の幼馴染。

 嫌がるべきことだからなそれ?


「うぅ……!うぅぅ!」

「お姉様、エッチな妄想はほどほどにしておかなければ、大試先生の玩具にされるだけよ」

「そんな妄想していませんわ!」

「でも、こういう純な反応こそが、殿方に気に入られる物なのかもしれないわね……。美しさのために参考にしないと……」

「薫子……またそうやって悪い事を覚えて……」


 姉妹仲良さそうだなぁ……。


「それで結局どうするんじゃ?山と森を切り拓いて道を作るとなると大仕事じゃぞ?早めに取りかかった方が良いのではないかのう?」


 あのクソデカパフェを既に2杯食べて3杯目に取り掛かっているにも拘らず、話だけはしっかり聞いていたソフィアさんが問う。

 その食べっぷりに質問とは関係なく、薫子ちゃんから尊敬の視線を浴びているので、機嫌がいいのかドヤ顔だ。


「う……。わかりました!この金持絢萌!我が身可愛さにチャンスを潰すつもりはございません!我が故郷の民の為であれば例え火の中水の中!未開の土地での苦役を申し付けられても構いませんわ!」


 決意の表情で絢萌さんがそう宣言する。

 よっしゃ!これでいい人材ゲットだぜ!

 この世界の王都と白川郷の間がどんな魔境になっているのか知らないけれど、そこを100レベルにもなっていない状態で走り抜けたんだから、将来性はとてつもないだろう!

 うっははー!


「そうと決まれば大試先生、一つ重要な事を考えないといけないわね」

「ん?なんだ?」


 キリっと目線を鋭くした薫子ちゃんがそんな事を言う。

 まあ決めないといけない事は色々あるけれど、1つだけ……?

 何の事だろう?


「それはもちろん、お姉様が大試先生の元で働くことになった場合の服装よ!」

「何を言っているんですの!?」


 本当に何を言っているんだこの娘は?

 でも、絢萌さんの反応が面白いのでそのまま進もうと思う。


「そうだなぁ……やっぱり、金髪縦ロールなんだから、ドレスか鎧じゃないか?ファンタジーな女騎士っぽいやつ」

「女騎士って何ですの……?この金髪は地毛ですし、縦ロールは、せめて貴族らしくみられるようにと無理して毎朝セットしているだけですわ!」

「ビキニアーマーも良いと思うわ大試先生。お姉様は、露出を増やして恥ずかしがらせた方が美しいと思うの」

「だから何を言っているんですの薫子!?」

「ワシ的には、レンジャー衣装も良いと思うんじゃよな~。もちろん下半身はホットパンツじゃ」

「もちろんって!?」

「聖羅は、何か意見あるか?」

「女騎士にするなら、セットで有栖もいた方がそれらしく見えて良いと思う」

「でもそうなると、その地域がゴブリンとか他国の軍に蹂躙されそうじゃないか?」

「実際に誰かに攻め込まれるわけじゃ無いし、大試が妄想して喜ぶだけだから問題ない」

「それもそうか」

「ふざけているだけですわよね!?普通の服にしてくれるんですわよね!?」


 イヤなら、キツネ耳つけさせて競泳用水着着せて、その上から巫女服着せるが?





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― 新着の感想 ―
猫耳や犬耳もいいけど、やはりキツネ耳こそ大正義
>「ビキニアーマーも良いと思うわ大試先生。お姉様は、露出を増やして恥ずかしがらせた方が美しいと思うの」 「ワシ的には、レンジャー衣装も良いと思うんじゃよな~。もちろん下半身はホットパンツじゃ」 どっ…
性癖ブレないな! それなら姫騎士のドレスアーマーの方がいいだろう
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