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「いらっしゃいませ〜。4名様でよろしいでしょうか〜?」
「はい。禁煙席あります?」
「当店は全席完全禁煙となっておりま〜す」
「おぉ、最高ですね」
「ありがとうございま〜す。では、お席へご案内しま〜す」
俺達は今、チェーン展開されているファミレスへと来ている。
俺にとって、前世まで含めてもあんまり利用したことがないタイプの飲食店だ。
前世では家族でそこまで外食に頻繁に行っていたわけでもないし、1人で利用する度胸はなかった。
今世ではそもそも飲食店がある地域に住んでいた期間が1年とちょっとくらいしかないので……。
一緒に来ているのは、聖羅と金持姉妹。
いやぁ、美少女3人とこんなところに来れるなんて、リア充だなぁ!
ただ……どう離せば良いんだろう?
うーん……。
「まさか、大試さんが妹の引率をしていたとは思いませんでしたわ……」
「俺も、薫子ちゃんが金持さんの……絢萌さんの妹だとは思わなかった」
「フフフ、全く気が付かれないから、面白くなってしまったわ」
はぁ……とため息を付いている絢萌さんと、ドヤ顔をしている薫子ちゃん。
言われてみれば、確かに似ている2人の女の子。
つっても!俺の中の基準だと、この世界美少女だらけだから、そのあたりあんまりわっかんねぇんだよなぁ!
因みに、聖羅はもうメニューを熟読し始めている。
「私は、ドリンクバーかしら」
「だめだよ薫子。大試は、女の子に奢ると嬉しくなる生き物だから、できるだけ高いものを注文しないと」
「あら……ではこのデラックスイチゴチョコパフェにするわね」
「いいチョイスよ。私は、このチキンカツスパにするわ」
「おやつの時間にそんな重そうなものを……さすが聖女と呼ばれる女性……!」
何故か知らないけど、聖羅と薫子ちゃんが急速に仲良くなっていってる。
しかし、たしかに俺は女の子に奢ると何故か嬉しくなるので、流石だな。
「……それで、あの……私の家が使用人も雇えない経済状況なことは、できれば秘密にしていただけると……」
「別に言いふらすつもりもないし、それに関しては別に。ぶっちゃけ、うちで働いている使用人も、普通の基準で言えば、使用人なのかもよくわからんし……。なんなら、この前まで森の中で蛮族生活だったし」
「そうなんですの?メイドの方が沢山いると聞いていますが……」
「実は、その中に普通の人間は全然いない」
「それは冗談か何かですの?」
本当なんだなぁこれが!
「そんなこともあり、私はいい職場を探さねばならないのですわ。学園を卒業したら、経済的に支援できればと考えておりますの」
「へぇ。じゃあ、将来はうちくる?」
「……それは、以前の婚約のお話の続きでしょうか……?やはりそういう事はもっとしっかりお付き合いしてからにすべきかと……」
顔を真赤にして俯きながらいう絢萌さん。
正直可愛い。
「いや、仕事の話。今、あの地域を開拓するために人を集めてるところでさ、絢萌さんは実力もあるし、あの辺りでも活躍できると思うんだ。給料もいっぱいだすぞ。未開の土地だからなぁ」
魔法学園にいるだけでも有能なのに、近接戦闘も熟せるんだから、非常に有用な人材といえるだろう。
他に行かれる前に、リクルートしておかなければ!
「ええと……。私には妹もいますし、あまり離れた土地に行くのはちょっと……」
「あらお姉様、私、森の中に引っ越しても構わなくてよ?」
いつの間にかドリンクバーからジュースを持ってきて飲んでいた薫子ちゃんが助け舟を出してくれた。
味方にすると心強い!
「気軽に言うんじゃありませんわ!貴方はまだ子供なんですのよ!」
「子供だからこそ、年上の男性に頼るものよ。それに、お姉様は別に私のために何かを諦める必要はないと思うわ」
「そうは行きませんわ!私は、貴方のお姉ちゃんなんです!」
「姉であると同時に、お姉様は女の子なの。興味のある殿方と仲良くしたところで、何も問題はありませんわ」
あれ?
なんかもう少し軽い話をすると思ってきたけれど、案外ガチの話し合いになってる?
「絢萌さん、別にあっちにずっと缶詰ってわけでもないよ。必要なら、飛行機で王都まででもすぐに戻ってこれるし」
「飛行機……?そんなものまで持っているんですの?」
「俺が、じゃないけども。うちのメイドが」
「メイドってすごいんですのね……」
普通のメイドは、持ってないとは思うけどな。
「すぐに決めなくてもいいさ。もし少しでも興味があるなら、現地を見に行ってみる?」
「それって……飛行機でいくんですのよね……?安全なんですの……?」
「安全だよ」
まあ、テレポートゲートでもいいんだけど、それよりは受け入れやすい気がするし。
テレポートに関しては、もう少し仲良くなってから使用権限をあげよう。
「話は終わった?じゃあ、絢萌ちゃんも注文決めて」
「え……えぇと……こういう場所には不慣れで……何を頼んだものか……」
「では、私と同じパフェにしましょう」
「それ、ものすごく大きいものではないんですの?」
「もちろん巨大です。ですが、美しいお姉様なら平気よ」
「意味がわかりませんわ……」
頑張って食い切ってくれ。
「……あの、大試さん」
パフェに困惑しつつも、絢萌さんがこちらを向く。
「将来の話はわかりました。その答えは後日とさせていただくとして……。あの、飛行機を使える貴方にお願いがあるのですが……」
そして、手をぐっと握って……。
「我が家の管理地と、王都との間での行き来が簡単にできる方法を考えていただきたいんですわ!」
と頼んできた。
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