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510:

 バーベキューが終わった。


「あ、じゃあ私たちはあっちで飲んでますので、何かあったら言ってください」


 少なくとも、子供たちは。

 役割が終わった協力者の大人たちは、離れた所で飲み直すようだ。

 今回のこのイベントは、保養も兼ねているため、彼女たちもエンジョイしてくれているのは嬉しい。

 別に外出を制限している訳じゃないけれど、やっぱり色々あって森の中に保護されるような状態で暮らしているんだし、たまにはこうやって無理にでも気分転換に連れ出した方が良いだろう。

 少なくとも嫌な思いはしていないようだし、それだけでもやってよかったな。


 だが!

 まだこの夏の一大イベントは終わんねぇんだよ!

 これから、ライトトラップ見に行くし、その後にも予定が入っている!

 一応サプライズなんだけど、規模的に色々届け出が必要だったため、周辺地域の大人世代には知られている。

 だから、もしかしたら子供たちにも話が行っちゃっているかもしれないが……まあ、問題はない。

 ソラウが張り切って準備していたから、俺も正直期待している。


「全員!ライトは持ったな!?」

「「「「「はーい!」」」」」

「よし!ワシに続くんじゃ!」


 とにかく、まずは予定通りライトトラップでカブトムシやクワガタを捕ったり取らなかったりするのが先だ!


 森の中、といっても、そこそこ広めの踏み固められた道を歩く。

 ライトトラップに関しては、クラス全員で向かう事になった。

 30人の子供たちは、大量のクワガタやカブトムシが見れるのではないかという期待に胸を膨らます派閥もあれば、これからその大量の虫が飛び交う場所に行かなければいけないという絶望感に打ちひしがれている派閥もある。

 順平班のちょっと勝気な感じな女の子なんて、さっきから顔を青くしながら俺にくっついているし……。

 そしてそれを順平君ともう1人の男子に馬鹿にされ、今度は顔を赤くして反論している。

 うーん……可愛い女の子にチョッカイをかけたい男子と、そんな事はしったこっちゃない女子。

 青春だなぁ……。

 俺には無かったが。


「大試先生!今年は、マイマイガが大量発生しているらしいです!幼虫見つけたら下さい!」

「なんで?」

「毒があるんですよ!」

「……なんで?」

「なんで?毒がある事に対する疑問ですか?不思議ですよね!」


 ちげぇよ。

 なんでお前はそうなのかって疑問だよ。


 そうしてワイワイガヤガヤと辿り着いた先は、正に、カブトムシやクワガタが好きな人間にとって天国だった。


「「「「「おおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」


 と歓声を上げる男子たち。


「「「「「いやぁああああ……」」」」」


 と悲鳴を上げる一部女子たち。


「毒持ちが見当たらない!?」


 と叫ぶ若干名の男子。


「あら、中々奇麗ね。蛾ってカラフルよね……。でも、私は蝶になりたいのよ」


 キミは……まあいいか。

 楽しそうだし。


「全員聞くんじゃ!」


 そんな浮足立つちびっ子たちを締める声が響く。

 先頭のソフィアさんが振り返り、注意事項を伝え始めた。


「まず!今夜捕る昆虫は、その後逃がす事!」

「「「「「えええええ!?」」」」」

「さっきも逃がしたじゃろうが!諦めい!」


 多少のブーイングが飛ぶ。


「それと、ここで昆虫採集するのは30分だけじゃ!時間を有効に使うように!」

「「「「「もっといたい!!」」」」」

「ダメじゃ!そう言ってずるずるいたがるじゃろお主ら!」


 またまた多少のブーイングが飛ぶ。

 女の子たちは、逆に大半がホッとしているが。


「最後に!」


 ある意味これが一番重要。


「虫が苦手な者は、あの明かりの方に近づかんでも良し!大試の周りにでもおるが良いぞ!」

「「「「「はーい!」」」」」


 女子の大半と、男子の一部が笑顔になる。

 まあ……嫌なもんは嫌だよね……。


「では……行け!!」

「「「「「よっしゃああああ!」」」」」


 男子たちが、すごく馬鹿っぽい感じで走って行った。

 向かう先には、前世の俺だったら大興奮しただろう国産外国産入り乱れたカブクワ天国が!

 まあ、それ以外の蛾とかもいっぱいいるから、苦手な人は本当に苦手だろう空間になっているけれど。


「あの……大試先生……」

「どうした?」


 俺が狂喜乱舞する子供たちを見てうんうんと頷いていると、未だにくっついたままの勝気ちゃんがおずおずと声をかけてきた。


「まだ……こうしてていい?」

「ん?いいぞ?虫苦手なんだな?」

「ん……うん……」

「苦手な物は、苦手でいいさ。苦手な物が少ないほうが人生楽だけど、苦手な物があったらいけないって考える方が人生を損すると俺は思ってるし。今回のこの虫捕りだって、皆に色々経験させたかっただけで、絶対にこう言うことが好きになれって思ってる訳でも無いしな」

「そうなんだ……」

「まあ、俺の周りにいる限りは、虫が近寄ってきても守ってやるから安心しな」

「うん!」


 いやぁ……素直な子供ってのは可愛いなぁ!


「あ!アトラスだ!」

「お前アトラスとコーカサス見分けられるのかよ!?」

「え?わかんない!」

「なぁ……これ、チリクワガタじゃね?」

「ちょっとキモイな……」

「ゾウカブトだ!おっも!」

「見てください!このクワガタの顎は、人間の指を骨に食い込むくらいまで行けるらしいですよ!」

「なんでそんな事調べたんだよ……」


 ああやって馬鹿みたいに騒ぐ男子も嫌いではないけども。


「ふふふ……舞いなさい虫けらたち……そして私を輝かせるの……!」


 あの女の子に関しては、未だによくわからん。

 見てて面白いけど。


 そうして、あっというまに時間は過ぎて行った。






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― 新着の感想 ―
こんにちは。 リアルだと一番強いとされるクワガタですら、ピンチ力は鉛筆をへこます程度らしいのに…挟まれたら肉突き破って骨までいくレベルとか、この世界の一般昆虫も地味にヤバいですね(恐怖) ショッ○ー…
ちょっと男子ー 虫が怖い女の子にいいところ見せるチャンスなのに
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