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505/605

505:

 トラップ設置を完了し、クラス全員がキャンプへと戻ってきて、皆カレーも完成させた。

 そして今、学校のキャンプイベントっぽい感じで、皆でワイワイとカレーを食べている訳だ。


「あーほら!口の周りについてるニャ!」

「わぷっ……あ……ありがと……」


 美人の猫耳お姉さんに顔を拭いてもらって、顔を赤くしている男の子。


「「おまじないは、萌え萌えキュンでよいですか?」」

「え!?えっと……お願いします!」

「「わかりました。では……萌え萌え……キュン!」」

「わ!わわわ!なんか光ってる!」


 好奇心で美人のお姉さんに萌え呪文を頼んだら、カレーに何かをエンチャントされて興奮している男の子。


「こらそこ!あんまり女の子のおっぱい見ちゃダメなのです!」

「み……みてねーよ!」


 無駄に……いや、まったく無駄ではないんだけれど……大きくした胸を見てしまっているのを指摘され死ぬほど照れている男の子。


「いやぁ……青春ですねぇ……」

「青春じゃなぁ。大試も小学生の頃はこんな感じじゃったんか?」

「……イベント中に会話をした覚えがない……」

「お……おう……そうか……」


 灰色の小学生時代を思い出して軽く鬱になる男の子。

 それどころか、今世に限って言うなら、小学生時代すら存在しない。

 人生いろいろだなぁ……。


 そんな甘酸っぱい時代を過ごす男子とは別に、女子は女子で盛り上がっている。


「はーい!イチゴ味のアイスクリームできたよ~♡」

「すごーい!クリームが一瞬でアイスになっちゃった!」

「形もカワイイ!」

「あ!中に入ってるイチゴがハートの形になってる!」

「この容器持って帰っていいですか!?」


 暑さ対策で用意したイチゴのアイスクリームコーナーは大盛況。

 女の子っぽさ強めの集団だな。


「おやおや、オオセイボウですねぇ。実物をみるのは初めてですが、こんな所にいましたか」

「お姉さんすごい!それ奇麗だけどハチさんでしょ!?刺されないの!?」

「ふむふむ……このハチは、毒針が無いので大丈夫ですよ。仮に針があった所で私の皮膚は貫けませんが」

「「「かっこいー!」」」


 身長も高く、自分たちの周りで守ってくれているイケメンなソラウに憧れの視線を送る女子たちもいる。

 尻尾が生えてたり、歯がギザギザなのも興味をそそられるようだ。


「さっき魚つかまえた!塩で焼いた!」

「捕まえたの!?どうやって!?」

「手!」

「手づかみ!?」

「すごい!」


 自分たちと比較的近い年齢層に見えるシオリと友達みたいになっている一団もある。

 見た目は妖精と呼べそうな程幻想的な美少女なのに、やっていることがワイルドで面白いらしい。



「どぼちてぇええええええええええ!?」

「うわなんだよ!?」


 そんな光景を見て、となりにいるアレクシアがきったねー顔で泣く。

 あまりに必死な泣き方なので、普通にビックリしてしまった。


「なんで皆さんあんなに女の子と仲良くしているのに私はダメなんですか!?」

「お前がロリコンでシスコンだからだよ……」

「あんまりですよぉおおおおお!」


 あんまりなのは、お前の趣味趣向だよ……。


「ほら、女の子たちが作ったカレーでも喰え」

「あむっ……」


 現在アレクシアは、縄で縛って俺の隣に座らせている。

 何度も逃げようとするから仕方なくだ。

 なので、食事まで俺が世話することに……。


「おいひぃれふ……」


 きったねー泣き顔から少しだけ笑顔になって来たけれど、やっぱりきたねぇ……。

 元がエルフだけに物凄い美人だから、その落差がすごい。

 小学生たちも、コイツについて詳しく知っている訳じゃないはずなのに、すごい残念な物を見る目で見ている。

 よろこべ、女の子にも注目されてるぞ?


「大試先生!」


 その時、後ろから声がかけられた。

 振り向くと、そこには順平君がいた。


「あれ?お父さんとカレー食べてたんじゃないのか?」

「パパが大試先生を呼んできてくれって言ってあっちのほうに行っちゃった!変な動物がいる気がするって!」

「動物……?わかった。順平は、皆の所に行っててくれ。変な動物については秘密にな。周りに護衛もいるから安全だし、パニックが起きても困る」

「わかった!」


 そう言って駆けていく順平君を見送った後、俺は担任が向かったと思われる方角へと走る。

 カレーを未だにパクついているソフィアさんと、メソメソし続けているアレクシアと共に。

 まあアレクシアに関しては、担いでの移動だけれど……。


 少し進んだ茂みの先に、担任は立っていた。

 その体には、やけに力が入っている。

 戦闘状態を思わせるような緊張感。

 いったい何が……?


「……来たか、犀果」

「どうしました?何かヤバイ魔獣でも出ました?」


 出ない筈ではあるけれど、何事も絶対はない。


「……魔獣では無いが、悪夢のような存在ではある」

「それは……?」


 やけにもったいぶる担任。

 緊急事態なのであれば、そんな言い方をしてないでさっさと言え。


 だけれど、実際には、ただの悲しいお知らせだった。


「ふっ……飯食うために地面に座ってたら、腰が逝った……」

「…………」

「何とかここまで移動して、息子に見られないようにしたが……もう動けねぇ……」

「…………あー…………はい。じゃあ、救護テントから聖羅呼んできますね」

「頼む……うぅ……情けねぇ!!!」


 オッサンが泣くなよ……。



 10分後、上善寺先生は、休養……じゃなかった。急用のため、離脱することとなる。

 子供たちには、極秘の任務と伝えておいた。

 極秘って言っておけば、子供は大抵の事を納得するんだ。


 今日の教訓。

 イベントがいくら楽しそうだからって、不調を隠して参加すると大変な事になるので、大人しく諦めましょう。





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>「さっき魚つかまえた!塩で焼いた!」 「静」の極地に至って制空圏を会得していたら楽に捕まえられるらしいよ
腰痛は、たしか悪魔の一撃だっけね 悪魔が居たといってもまあハズレではない
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