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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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504:

「全員、バナナは持ったな!?」

「「「「「はーい!」」」」」

「では……袋にいれろ!」

「「「「「はーい!」」」」」

「次に砂糖とドライイーストもだ!」

「「「「「はーい!」」」」」

「そして……揉め!」

「「「「「はーい!」」」」」


 俺の言葉に素直に従う子供たち。

 その真剣な顔は、自分の手で何かを作る興奮と、そして段々と完成に近づいていく達成感により自信にあふれていく!

 やってることは、袋にバナナ入れて揉んでいるだけだけども!


「よし、十分揉み込めたようだな?なら……最後の仕上げだ」


 俺は、子供たちの前に瓶を置く。

 子供視点だと、すごく大人のアイテムに見えるソレ。

 まあ、俺もまともに飲んだことがあるわけじゃないけれど、子供の内から飲むのはお勧めされない飲料。


「酒だ」

「「「「「!!!!」」」」」


 大人であれば、『え?だから何?』ってなるであろうこのやり取り。

 だけど、子供たちにとってこれは驚異のアイテム。

 それを今まさに目の前でそれぞれにコップ1杯ずつ配っていく。

 くくく……なんだかとっても悪いことしている気分になってくるだろう!?

 でも絶対に飲むなよ?

 美味しくないし。

 多分ワインよりブドウジュースの方が美味しいし、ビールよりコーラの方が美味しいからさ。


「この酒を……袋に……ぶちこんで揉め!」

「「「「「はい!!!」」」」」


 やってやった!やってやったぞ!

 そんな心の声が聞こえてきそうな子供たちの姿に、思わず拍手を送りたくなった。

 だけど、今の俺は鬼の監督者。

 甘い顔は出来ない。

 だから、その役目は彼女に任せよう。


「よくやったのう!優秀な子供達じゃ!」

「ソフィアさんに褒められた!」

「酒を使っちゃうなんて……俺達大人だよな!?」

「で……でも……本当はいけない事よね……?」

「そんなこと無いよ!お酒を料理に使う事だってあるし!ミュージシャンなら誰だって肝臓壊すくらい飲んでるもん!」

「私だって……いつかはワインが似合うレディになって見せるもん……」


 子供たちそれぞれがそれぞれの気持ちを口に出す。

 こうしてみると、それぞれの個性が出ていて面白いな。

 コミュ障の俺が教師になっても碌な事にならないだろうけれど、学校の先生っていうのはこういうのを見て嬉しく思える人がなるんだろうな……。


「息子が……あんなに嬉しそうに……!」


 ちょっと離れた所で腕を組んで仁王立ちしているオッサンみたいに……。


 今気が付いたけど、あのポーズは格好つけているだけじゃなくて、背中に背負ってるバカでかい剣の重さで腰を壊さないようにしているんだろう。

 だって、歩いている時も腕組んで体に力入れ続けてたし……。

 そこまでしてあの大剣を背負ってていたいかね……?


「よし、じゃあ皆袋にペンで名前を書いたら、そこの日向に置いておこう。袋が膨らんでくるまでの間に、昼食を作るぞ!」

「ごはん!」

「何食べるんだ!?肉か!?」

「まさか……魔獣を狩るの!?」

「こんな所に魔獣なんて居ないよ!僕、毒蛇の魔獣が食べたくて調べたもん!」

「どうしてバナナを持ってるだけであんなにセクシーに見えるの……?おかしい……おかしいわ……!」


 ワクワクウキウキちょっとビクビクしている子供たちを連れて、食材下ごしらえ部隊の所までやってくる。

 そこでは、ニンジンやタマネギ、ジャガイモなど、キャンプといえばお約束の料理に使う食材が用意されていた。

 そう……日本人であれば、これらの食材を見て連想するメニューは……まあ結構あるか?


「カレーを作るぞ!」

「「「「「カレー!!!!」」」」」


 テンション爆上げの子供たち。

 正直、俺個人としては、そこまでカレーが他の料理を作るより好きという訳でも無いんだけれど、何故か大抵の子供は、カレーを作るとなると大興奮する。

 くくく……精々その青い感性を利用して、楽しい思い出にしてやろうじゃないか……!


「それじゃあ、お姉さんたちに教えてもらいながら作ってみろ!」

「「「「「はーい!」」」」」


 ここに残った女性たちに頼んで、子供たちに料理をさせていく。

 女性たちは、あくまで教えるだけだ。

 実際に作るのは、すべて子供たち。

 例え形が悪くても、粉っぽくても、自分たちだけで作ったという事実が最高のエッセンスとなるんだ。


 まあ、それだけが目的って訳でも無いんだけども。


「じゃあ、ピーラーを使ってジャガイモの皮を剥いていこうね」

「うん!」


「包丁を使う時は、猫の手だぞ!」

「わかった!」


「ニンジンは可愛く型抜きしてみませんか?」

「わ!?星とかハートもある!カワイイ!」


「えーと……生でお肉を食べるのはやめてね?」

「なんでですか!?ミュージシャンなら誰でもやってますよ!」


「うーん……大人の女性っぽいカレーの具材って言われても……チャツネとか?」

「これを使えば私も大人の女に……!」


 今子供たちに料理を教えているのは、どこかのカスな宗教団体で酷い目にあった女性たちだ。

 心に傷を負った人も多くて、どこかのバカな天使と一緒に世界中で同じ目に合う人たちを救ってはいるし、最近は食事もまともに摂れるようになって元気になってきているけれど、それでも普通の生活には馴染めていないって人もいる。

 そういう女性たちを積極的に今回子供たちに教える側に回らせた。

 もちろん、無理やりじゃなくて、どっかのバカな天使の手綱を握る聖女の生まれ変わりに協力してもらって。

 このカレー作りで自信と生きる楽しさを得てほしいのは、子供たちだけじゃないんだ。


「いやぁ……今の俺、すごく良い事している気がしません?」

「本当じゃなぁ。誰にも10回授業をサボるために必死になっとるようには見えんじゃろうな」

「ソフィアさんだって、協力した場合の報酬のお高いお酒のために頑張ってるだけじゃないですか」

「15年物のウイスキーじゃぞ!?本気にもなるわ!」


 子供たちには知らせられない裏事情をコソコソと話しながら、順平班が作ったちょっと甘いカレーを食べた。

 なんで選択制にした鶏肉と豚肉と牛肉とエビとハンバーグが全部入っているんだろう?

 まあいいか……。





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