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「はい皆さん!静かにして下さーい!今日は、順平君のお父さんで元冒険者、そして今は、あの王立魔法学園で先生をしている上善寺先生が、皆さんに森の中での過ごし方を教えてくださいます!ご挨拶しましょーねー!」
「「「「「じょーぜんじせんせー!よろしくおねがいしまーす!」」」」」
「おう!今日は、俺が皆をしっかり面倒見てやるからな!」
子供たちの前で調子に乗っているおっさんが1人。
腰痛を防ぐために上善寺//東輝になる事をビビって断った担任だ。
教壇に立つ時ですら剃らない不精髭を剃り、ツルツルである。
しかも、何故か背中にデカい剣を背負ってはいるけれど、服装はスーツ。
普段ジャージとTシャツじゃんアンタ。
「そしてー!後ろにいるのはー、上善寺先生の教え子さんにして、王都でも有名人の大試お兄さんです!今日は、上善寺先生のお手伝いをして下さるそうですよー!貴族様ですので、失礼の無いようにしましょうねー!」
「「「「「はーい!」」」」」
「…………」
俺はといえば、よく知らん子供たちの相手をしないといけないという事で、既にちょっとグロッキー状態だ。
1人2人ならまあいい。
それくらいなら何とかなる。
だけど、目の前には、小学校1年生の1クラス、30名のチミっ子共が体育座りをしている。
あの座り方、俺は窮屈に感じて嫌いだったけど、なんで前世の学校ではあの座り方させてたんだろうなぁ……?
まあとにかく、子供たちの目がこっちを向いているんだ。
あの、何を考えているのか、これから何をするのかわからん生き物たちが、こっちを見ているんだ。
非情に辛い。
だが!
今日の俺は、1人じゃない!
心強い味方がいるんだ!
もちろん、ひげ剃ったスーツのオッサンじゃない。
「そしてー!お姉さんたちは、大試お兄さんのお家で働いているメイドさんたちでーす!今日は、皆さんのごはんや、道案内までしてくれるそうですから、しっかりいう事を聞きましょうねー!」
「「「「「はーい!」」」」」
良い返事だ。
そして、こういう返事をする奴は、半分くらいは返事しているだけで、何も考えていない。
あくまで俺の経験に基づく考察だけども。
それはそれとして、今日は、家からメイド服着ている皆を連れてきている。
・メイド顧問(自称)ファム
・メイド長(自称)アイ
・ピリカ
・イチゴ
・ソラウ
・クロコ
・タケコ
・メイド見習い(仮設定)シオリ
・メイド姉(自称)アレクシア
その他、保護している女性たちや、聖騎士たちからも希望者がメイド服を着て参加している。
子供好きだったり、バイト代目当てだったり、各々思惑は違うけれど、何にせよ心強いメンバーだ。
中でも、最も気合が入っているのは彼女だろう。
最もメイド服を着こなしている彼女が、メイドたちの先頭に立った。
「良く聞け子供たちよ!ワシが、今回の総指揮をとることになった冥土のソフィアじゃ!」
バーンとカッコいいポーズをとるソフィアさん。
「何でソフィアがメイド服着てるにゃ?」
「着たかったんだって」
「物好きだにゃ……」
クラシカルなデザインのメイド服なのに、男のフェチズムを何故か刺激するそのボディライン。
顔は、誰がどう判断しようと美人と評価される程の美しさ。
そして、溢れだす自信とオーラ。
そんな彼女を前に、子供たちも「「「「「おー!」」」」」と声をあげる。
いったい誰が、まさか彼女が本来メイドですらないと思うだろうか?
お?
男子の数人が既におっぱいに目をやって顔を赤くしているぞ?
おませな奴らめ……。
小学1年生だというのに、色を知るか!
何故こんな事になっているかというと、担任が調子に乗ってクラス行事にしても良いぞと学校側に言ってしまったらしく、本当に彼の息子のクラスを率いてクワガタ捕りすることになってしまった訳だ。
フットワークの軽い学校だな……。
前世の小学校でも、農家のオッサンが先生と知り合いだからって、芋掘り体験とかさせてもらった事あったけれど、そのノリなんだろうか?
因みに、他のクラスも似たような感じで別の場所で別のアウトドアイベント体験をしているらしい。
小川でザリガニ捕りとか、田んぼでザリガニ捕りとか、池でザリガニ捕りとか。
何でかはわからないけれど、やけにザリガニ推しだった。
共通しているのは、皆キャンプをすることらしい。
当初の予定では、林間学校的な物だったんだろうな。
「はぁ……はぁ……純なロリたちがいっぱいいますよ大試さん!」
「アレクシア、態度によってはエルフの集落に即強制送還するからな?ファム、魔力は転移用に温存で」
「了解ニャ」
「そんなぁ!?」
そんなぁじゃねぇよ!
この国には、法律ってもんがあんだよ!
今回担任は、俺の試験……何の試験なのか知らないが……を兼ねてやって来ている設定なので、自分ではあまり虫捕りをする気が無い様だ。
まあ、虫取り網振るだけで行動不能になる様な爆弾持ちなんだし、仕方ないといえば仕方ないけれど、苦肉の策と言えるだろう。
だけど、本人がやけにカッコつけて立っているからか、男子たちの半分ほどからは割とキラキラとした目で見られている気がする。
……いや、アレはデカい剣に目が行ってるな……。
一方、残りの男子と女子たちは、うちのメイドたちに興味津々だ。
一部コスプレしているだけだったりもするけれど、大半が普段からしっかり働いてくれている自慢のメイドたちだ。
フェチズム的な面だけではなく、スキル的な面でもきっとこれから子供たちの度肝を抜いていくだろう。
さぁて……どれだけの男子たちが性癖を歪められ、女子たちが将来の夢をメイドにするか、見ものだな……。
男子がメイドを志した場合、どうしたらいいだろうか?
責任とれないけど……まあいいか……。
「よし!挨拶も済んだところで、ここからはコイツに任せる!頼むぞ!」
「承知しました。子供たちに最高の体験を提供して見せましょう」
サボり10回分の働きはするぜ!
ソフィアさんの胸の揺れに目を奪われそうになりながら、そう、1人決意した。
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