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501:

「はい、治った」

「聖羅、腰って事は、やっぱりアレか?」

「うん、アレ」


 担架に横たえられた担任を挟んで離す俺と聖羅。

 その雰囲気は、多分深刻な感じだったと思う。

 だけど、激痛から解放されたオッサンには伝わっていない。


「これが聖女様の力か!噂しか聞いたこと無かったが、これは神様の力って言われても納得しちまうぜ!俺は自由だあああああああ!」


 普段早々みない程のハイテンションぶり。

 腰痛になったことが無い俺には理解できないけれど、腰痛の辛さってのはそこまでのものなんだ。

 だって、父さんがよくなるからわかる。

 母さんと2人で狩りに行った日、帰ってきたら大体腰痛なんだ。

 それを治すのも聖羅の役割だった。


「先生、確かに腰痛は治ったと思いますけど、安心はできませんよ?」

「何言ってんだ!?もう痛みは全然ないぞ!もう10年以上これと付き合ってきたが、ここまで不安が無い気分になるのは初めてだ!」


 そう言いながら飛び跳ねるオッサン。

 長年の痛みから解放されたんだからその気持ちはわからんでもないけれど、でも俺はその気持ちに水を差さないといけない。

 彼のために。


「先生、聖羅が治したのは、腰痛の原因となってる直接的な症状だけです」

「だからそれでいいんだろ?痛くないしよ!」

「いえ、確かに痛みの原因になる部分は治っていますけれど、先生の腰は、腰痛になりやすい状態で完成してしまっているので、これからも腰痛とは付き合っていかないといけないんです」

「……な……んだと……?全部治ったわけじゃ無いのか……?」

「聖羅の回復の力は、その人の健康な状態に戻すものですから、健康時でもその腰痛になりやすい状態の腰な人に回復を使っても、一時的に痛みの原因が無くなるだけで、同じことをすればまた同じような腰痛になるかもしれないんですよ」

「…………」


 絶望の表情になる先生。

 でも、こればっかりはちゃんと説明しておかないといけない。

 じゃないと、無理をして即行腰痛再発だ。


「何か方法は無いのか!?根治するには!」

「まあ……ありますよ」

「それを頼む!いや、頼みます聖羅様!」

「様って……聖羅、どうする?」

「本人が望むならやるけれど、本当にいいの?」

「俺に出来る事ならなんでもします!ですから!」


 藁にもすがる想いと表現するのがぴったりな必死さ。

 でも、なんでもっていう決意なんて、この治療法の前にはすぐに消し飛ぶ物だ。

 それこそ、藁の家並みの強度だぞ。


「先生、まずは落ち着いてください」

「これが落ち着いていられるか!このままだと、俺はまた腰痛になるんだぞ!?虫取り網を振っただけでだ!」

「じゃあ、そのままでいいので聞いてください。その根治治療の方法について」

「おう!教えてくれ!」

「まず、原因となっている腰の部分から下を切り落とします」

「なるほど!…………なるほど?」

「次に、聖羅が回復使って切り落とした部分を再生します」

「……ちょっと……ちょっとまってくれ」

「なんですか?」

「切り落とす……って言ったか?」

「はい」

「なんでだ!?」

「一回切り落として、DNAデータを元に作り直さないと、腰痛になりやすい腰のままなので」


 これは、どの関節の疾患に関しても言える事だけれど、慢性化したらいくら聖羅が頑張って治したとしても、作り直さないと再発しやすい状態になってしまうんだ。

 怖いよな。


「いや……だが……まあ腰痛とおさらばできるなら……あ!麻酔!麻酔は打ってくれるんだよな!?」

「麻酔はある種の毒なので、聖羅の回復で消えてしまいます。それどころか、麻酔が覚めた直後は痛みに過敏に反応する状態になるので、下手をするとショック死しますよ?」

「そんな……そんな馬鹿な!?」


 馬鹿なとか言われてもなぁ……。

 まあ、腰痛に関しては今後ゆっくり考えてくれればいいさ。

 正直俺はどうでもいい。

 問題は、そこじゃない。


「で、先生。どうします?」

「ちょっと考えさせてくれ……」

「あ、腰痛の事じゃなく、お子さんをクワガタ捕りにつれていく件です」

「……ん?」

「だから、そのために頑張ってたんでしょ?網振っただけで腰やっちゃう状態で行くんですか?行くなら良くでいいですけど、お子さんの前でさっきみたいな悲鳴上げるんですか?」

「忘れてた……どうする!?俺はどうしたらいい!?」


 そんな必死な顔で俺に聞かれても……。


「そうだ!犀果!一つ提案なんだが!」

「えぇ……?いやだぁ……」

「せめて聞いてからいえ!」


 聞かなくても面倒な事っぽいもん。


「俺が見逃してやるお前のさぼり回数を10回にしてやるから、息子たちをクワガタ捕りにつれて行ってくれ!」

「10回……10回ならまぁ……」


 10回あれば、飛んでる四国を落とせるし、品種改良された魔熊も絶滅させられるし!


「あれ?今、息子『たち』って言いました?」

「ん?おう!息子の友達たちも連れて行く約束だったからな!」

「えぇ……?」


 いやだぁ……。

 でも……10回分だからなぁ……。


「大試、ファイト」

「良しやる」


 聖羅に応援されたらなんでもするさ!




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― 新着の感想 ―
>腰痛 確かにヤバいっすね 一度でもなっちゃったらまた次も頻発する程度には、しかも微動だにできないってのがね トイレ我慢してる時にちょっとでも動こうとしたら漏れるのは間違いない
父親の雄姿を見せられないからどのみち息子の評価向上は失敗が確定しているという。
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