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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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498:

「先生は、クワガタやカブトムシについて基本的な事もわかっていないようなので、一から教えて行きますね」

「お……おう……。頼むわ」


 ちょちょっとやり方を教えてもらえばすぐにマスターできるとでも思っていたらしいオッサンを説き伏せ、昆虫採集の基礎の基礎から教えていくことにしました。

 まあ、子供でも出来る事なので、冒険者としてブイブイ言わせていたオッサンなら楽勝だろう。

 無理ならその髭を焼く。


「では、まず最初に質問です。クワガタやカブトムシが活動する時間といえばいつ頃ですか?」


 この質問にちゃんと答えられるかどうかで、その人の理解度が最低ラインに達しているかどうかが分かる。


「あん?夜じゃねぇのか?」

「ハイ間違い!正解は1日中でした!」

「あぁ?日中も動いてんのか?」

「波はありますけど、ほぼ一日中活動してますね。もちろん、1匹がずっと活動しているっていうわけじゃ無くて、餌食って満足したら土に潜ったり木の隙間に隠れて休むんですけど」

「そうなのか……てっきり暗くなってからが本番なのかと……」

「結構誤解してる方も多いですね。ただ、そのままだとクワガタを捕りに行く時間帯や方法も変わってきてしまうので、今ここで確認させて頂きました」


 夜しか動いていないと思いました?

 ざーんねん!日中もゴリゴリうごいてまーす♡


 って煽って来そうなくらいカブトもクワガタも明るいうちから動いている。

 夜の方が元気なのは確かだけれど、明るい時間帯でも木の上でぼーっとしてたり、飛び回っていたりするから、興味がある人は探してみてほしい。

 暗い時間よりはハードルが低いだろうし。


「明るい時間帯であれば、餌に集まって来たのを捕まえるのが基本ですね」

「餌か……。スイカとかか?いや下痢するんだっけか?」

「下痢……クワガタの排泄ってそもそも液体なので、いわゆる下痢とはちょっと違いますね。多分、スイカの果汁自体にあまりクワガタやカブトムシにとって必要な物質が多くないから、栄養失調みたいになるのを下痢って表現しているんじゃないかと思うんですよ」

「スイカって栄養少ないのか?」

「スイカが甘いのって、酸っぱさとか、他の味が少ないかららしいですからね」


 ほぼ水。


「というわけで、クワガタやカブトムシが好んで食す物がある場所を探しておきました。それが……ここ!」


 俺は、森の縁、ギリギリ人が多く通る様な獣道の傍にある木の幹を指さす。

 そこは、木の皮が少し剥がれたようになっていて、甘い匂いが漂っていた。


「ほぅ、樹液ってやつか……。って、もう既にわんさかいるじゃねぇか!」


 その場所には、クワガタとカブトムシがひしめき合っていた。

 それだけじゃなくて、オオムラサキとかスズメバチなんかもいるけれど。


「絶対じゃないだのなんだの言ってたのはなんだったんだよ!簡単に見つかっただろ!」

「はぁ……確かに今はこうしてみつかりました。ですが、俺達より前にここにクワガタ捕りに来た奴がもしいたらどうなりましたか?」

「どうって……」


 担任は、木の幹や周りを見渡しながら考える。

 そして、すぐに答えを導きだしたようだ。

 まあ、難しくないしな。


「場合によっては、直前に全部捕られてるかもしれないのか……」

「そう言う事です。昆虫採集は、宝探しみたいなものです。早い者勝ちのね」

「成程な。探しやすい場所だと、自分たちにとって便利だけれど、ライバルたちにも同じことが言えるからな……」

「なので、この方法で探す場合、樹液ポイントは数カ所探しておく必要があります。しかも、樹液は出方が一定ではないので、仮に昆虫マニアが1人も来ていないとしても、そもそも樹液が出なくなっていてクワガタが寄ってきていないという場合もあります。樹液が出ているのは、木からしたら出血しているようなものですしね」

「そう考えると、この木はかなり辛いんだろうな……」

「控えめに言って大出血ですね。しかも、カブトムシやクワガタは、もっと樹液が出るようにとゴリゴリと口をこすりつけて木を傷つけて行くので、迷惑でしょうねー」

「とんでもねぇ悪党だな」


 まあ、カブトムシやクワガタがゴリゴリしたところでたかが知れているけれど。

 前世の世界だと、ゴリゴリどころかギュリギュリと穴をあけて樹液ドバドバ出るようにしてしまう外来種の虫が大暴れして、公園の木々がどんどん枯れていくっていう問題が起きてたりしたなぁ……。


「昆虫が集まる樹液を出す木は、ある程度限られています。それをサラッとでいいので覚えてください」

「つっても、木の種類なんて見分けられねぇぞ?薬草ならわかるんだが……」

「葉っぱの形と木の皮で何となくわかると思いますよ。例えばこの木なんてわかりやすいですね」


 俺は、落ちていた葉っぱを1枚拾う。


「これは、クヌギの葉っぱです」

「おぉ、クヌギはなんか聞いたことあるな」

「葉っぱの形は、細長くて縁がギザギザしています。木の幹は、亀裂のようなでこぼこが結構強めに出ていて、爺さん婆さんの冬場の踵みたいになっていますね」

「嫌な表現するなよ……」


 覚えやすいでしょ?


「あと、ドングリが成ります」

「ドングリ?……お!本当になってるな!」


 担任が頭上を見上げ、ドングリを見つけたらしく、はしゃいている。

 子供か?


「ぶっちゃけ、ドングリ成る木は、樹液にクワガタやカブトムシが集まりやすいと覚えておいていいです」

「へぇ……。木の実が成るやつ全部そうなのか?」

「全部ってわけじゃ無いですね……。やっぱり樹液もいろんなのありますから。例えば……あ、これとかわかりやすいですね」

「ん?これも樹液なのか?ゼリーみたいになってるが……」

「はい、樹液です。この樹液、すごい濃くて虫が集まりそうに見えますけど、クワガタはあんまり寄って来ませんね」

「そうなのか」

「因みにこれ、桜の木です」

「桜!?おぉ……言われてみれば、良く街路樹とか公園にこういうのあるな……。花が咲いてなかったらよくわかんねぇわ……」


桜の木って、春の一瞬だけものっそい注目されるけど、それ以外の季節は、見た目地味だし害虫が湧く事あるし病気に弱いしで面倒なんだよな……。

おまけに、大して美味しくもないサクランボが落ちてきて服にシミができる。


「逆にシャバシャバの樹液をドバドバ出す木もあったりしますけど、やっぱりそっちもクワガタやカブトムシは集まって来ません。彼らにとって丁度良い濃度がこのクヌギとかの樹液なんでしょうね」

「ほぉ……」


 俺は、他にもクワガタが集まる木を教えていく。

 ブナ、コナラ、ミズナラ、カシワなんていうメジャー所に加え、川の近くに生えていたヤナギの木も教えておく。

 川の近くは危ないので、あまり子供を近づけない方が良いかもしれないという事を教えるのも忘れずに!


「クワガタが喜ぶ木って割とあるんだな」

「まあそうですね……。他にもハルニレとか色々ありますけど、まあ覚えやすい物に絞っておいた方が良いでしょう。それでもわからなかったら、この甘い匂いを辿ればたどり着けますから、鼻を鍛えておいてください」

「甘い匂いするよな」

「その甘い匂いを辿ってクワガタたちも飛んでくるので、匂いが強い場所ほど期待値は上がります」

「成程な」


 触覚ピコピコしながら匂いを探り、ブウウウンと凄い音を立てながら飛んでくる大型のクワガタやカブトムシは中々の迫力だ。

 当たると普通に痛かった。


「……っとまあ、ここまで見せたやり方が、一番自然に優しいというか、周りに迷惑かからない方法ですね」

「次からは、迷惑がかかるのか?」

「そうですね……次の方法は後始末が大変で、それをサボる人がいるんですよ……」


 アレはヤバイ。

 後始末をしないと、熊が普通にやってくる。

 そして人間の食い物の味を覚えて人里に降りてくるんだ。

 だって、人間からしても美味しそうな匂いさせるんだもん。


「今までは、自然に発生している餌場を探していましたが、これは準備する手間がそこまで必要ありません。その代わり、それがどこにあるのか、今日の状態が良好かどうかというその時々でどうなるかわからない不確実な方法でもあったんです」

「まあそうだよな」

「なら、もっと確実に、自分で餌場を作って、そこに呼び寄せる事ができればもっと楽だと思いませんか?」

「そりゃ、それが出来れば楽だろうが……」

「それが次の方法。『フルーツトラップ』、もしくは『バナナトラップ』、もしくは『ストッキングトラップ』です」

「なんでそんな色々名前あるんだよ……?」


 皆好き勝手に作るからな……。





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名人のショウ・アイカワとか出ないのかww
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