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「本当は、もっと直接的な手段で介入してもらおうと考えていたんですけどね……」
そう言って自嘲気味に笑う畠山さん。
今の所貴方の事は美人なお姉さんって事くらいしかわかってないんですけれど……?
「大試君、彼女は今回私が参加していた会議の司会進行を担当していたのよ。そして、『魔獣出没件数の急増について』という議題を出したのも彼女」
俺がよくわかっていない事に気が付いた会長が助け舟を出してくれた。
まあ、ここまで説明されても、だから何でしょう?って想いしかないが……。
「はぁ……、それが何か俺と関係あるんですか?」
「その出没件数が急増している魔獣って言うのが、大試君が倒した魔熊なの。OKU18とかいう母熊と、その子供と思われる数頭の被害が広がる前になんとかしましょう!っていう会議だったんだけれど、蓋を開けてみれば、なんとか大試君にお願いできないかな?って趣旨になっていたのよ。それが……」
言い辛そうな会長。
そこで話を引き継ぐように畠山さんが話し出す。
「私の父は、保健所の所長を務めています。だから、OKU18についても早くから知っていました。ですけど、貴族からの圧力で大っぴらに対処することができず……。それでも何とか用意した予算を使って行われた大規模作戦はほぼ失敗。原因は色々考えられますが、まあ……貴族の方々に依頼できるだけの予算が用意できず、かといって放置もできないという状況に焦り、一般のハンターや我々保健所職員のみで行ったのが一番の問題だったのでしょう。それがわかっていても、圧力を掻い潜って集められる資金はもうありません。ですから私は、以前から魔獣を鮮やかに狩ったというニュースのヒーローに頼ろうとしました。以前から貴方の事は、バイト先にいた友人から話を聞いていたので、もしかしたらこの状況でもなんとかできてしまうのではないかと。そこで今回の王学会を利用し、あまりに失礼で、無責任なお願いの仕方をする予定だったんですけれど……」
「その前に件の熊が1頭倒されてしまったと?」
「はい」
まあ、厳密に言うと倒したのは俺じゃなくて、あそこの白馬なんですけどね。
そして、その隣にいる熊がその生首インザスカイした熊の母親。
「その後、私が貴方の婚約者経由でお願いする前に、問題の魔熊を皆倒してくれたようですが、どうしてそんなことになったんですか?」
「なんか、調査に来た保健所の職員に、『これ機密事項だから!』って言いながら、これ見よがしにOKU18の資料ぽんぽん渡されたんだけど」
「あぁ……やっぱりそういう感じだったんですね……。私、父の伝手でよく保健所に出入りしていたんですけれど、大試さんの事をよく話していましたからね……。すごい人だって……」
「迷惑……」
奇麗な女の子に褒められてもうれしくないなんて早々無い経験かもしれない。
「はぁ……。まあ、話はとりあえず理解しました。だけど、それで終わりにする訳に行かないのはわかりますよね?」
「そうですね。結局私が手を出した訳ではありませんでしたが、私が犀果さんが戦うよう仕向けた事になるんでしょうし……」
「とりあえず、保健所の奴らには、減俸3カ月くらいは言い渡していいと思うんだ。王様経由で」
「え!?減俸!?」
「不満ですか?」
「いえ……去勢くらいはさせられるかと……」
「しねぇよこえぇな……」
どんな責任の取らせ方だよ……。
ただ問題は、この畠山さんだよなぁ……。
保健所から給料もらっていた訳でも無いだろうし。
国や地方自治体の施設職員であれば、簡単に懲罰的な事もできるだろうけれど、ただの学校の生徒であるこの人にはどうしたもんか……。
社会的な責任も無い。
金も無い。
となると……よし!決めた!
だけど、俺が決めた償わせ方を話すよりも、彼女の判断の方が早かった。
「犀果さん!私に払えるものは多くありません!ですので!体で!体で払います!どこで処女を奪いますか!?ここでもいいですし公衆の面前でもいいですよ!避妊の必要はありません!ドンドン孕ませてください!これは償いなんですから!妊娠は確定として、そこからはどうしますか!?乳牛のように搾乳機でもつけましょうか!?鼻輪もいいかもしれませんね!それとも鼻フックにでもしましょうか!?ああ大丈夫です!妊娠しても責任を追及しようなんて思ってませんから!ただ強くて誠実な男性に強引にされたいだけなので!そういうグッズだとでも考えてください!さぁどうしますか!?衣装のご希望もうけつけホブッ!?」
上気した顔で矢継ぎ早に話す彼女の顔面を思わず鷲掴みして黙らせた。
それでも口をもごもごさせている……。
うわ……ヨダレ垂れてきた……。
この状況に興奮してんのか……?
えっと……何これ?
なんなの?
頭おかしいの?
なんというか……うーん……でも既視感もあるんだよなぁ……。
余りにもヤバすぎて逆に冷静になってしまった。
「……そういえばさっき、バイト先にいた友人がどうとか言っていましたけれど、そのバイト先ってもしかして、メイド喫茶ですか?」
「ぶもふむふ!」
何を言っているかわからないので、畠山さんの顔から手を放す。
「はい!その友達は、学生を続けつつ、アイドル事務所でバリバリ働くキャリアウーマンになっていますけど!」
天瀬院薫子先輩かぁ……。
未だにいつになったら自分を性的に躾に来るのかと定期的に連絡が来るけれど、仕事は真面目なんだよなぁ……。
「まず、その手の要求をするつもりはありません」
「では……まさか!?」
「何を言うつもりなのか知りませんが、多分違うので少し話聞いてください」
話が進まないから。
「王立農業高等学校を卒業した後は、俺の生まれた開拓村で畜産業に従事してみませんか?」
「……私が家畜でということでしょうか?」
「もちろん違います」
黙らせようかな……?
「農業高校なら、畜産関係の勉強もしますよね?」
「それはまあ……しますね。牛とか豚の睾丸をこう……」
「あっ……詳しい話はいいので……」
「そうですか?そういう話題を私にさせて楽しむつもりなのかと……」
次変な事言ったら黙らせよう。
「実は、俺の生まれた開拓村は、魔獣とかをかなりの数飼育しています。ですが、住人の大半がちゃらんぽらんな人たちなので、世話が行き届いていません。俺がいる間は俺がやっていたんですけれど、今はパシリが1人で頑張ってる状態なので、その問題を解消しておきたいんです。ついでに、普通の家畜も飼育できないかなと」
「そこで私にその役目をということですね?」
「はい。どうです?報酬は、公務員の規定の2倍払いますよ?」
「行きます!」
「早いな……」
もう少し悩むかと思ったんだけども……。
「お給料は、正直どうでもいいんですけれど、夢だった畜産関係の仕事につけるならこれ程嬉しい事はありませんよ!」
「そうですか?思いっきり森の中で、商業施設なんて殆どない限界集落みたいな場所ですよ?」
罰のつもりで提案してるんだし。
「構いません!楽しみですね……。何を飼いましょうか……。牛娘……?メス豚……?雄も1頭はいないとダメだよね……。となると擬牝台も必要だし、搾精用の電極もないと……えへ……えへへへへ……!あ、スッポンもいいかもしれませんね!亀の頭を斬り落として生き血を!」
あれ?
この人、ドがつくマゾかと思ってたけれど、サドでもあるのか?
怖いぞ?
トリップしたまま帰ってこなくなった畠山さん。
帰ってこられてもちょっと怖いから、放置することにした。
「会長、世の中変な人っていっぱいいるんですね」
「ソフィアアアアア!やっぱり癒されるわあああああ!ちゅきちゅきいいい!」
『はーなーしーてええええ!』
「聞いてねぇし」
美しいコミュニケーション風景ですね。
「畜産、良い考えだと思ったけれど、人員面から考え直した方がいいかなぁ……?」
「ワシは畜産大賛成じゃ!乳牛はマストじゃな!この前の牧場から分けてもらうなんてどうじゃ!?」
「どうしよう、マトモに会話できるだけでこんなに嬉しいなんて……」
心を落ち着けるために、ソフィア用のチュールを舐めてみた。
コクはあるけれど、味が薄い。
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