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大魔獣対戦が勃発した次の日。
『アハハハハハ♡』
『ウフフフフフ♡』
家の庭には、嬉しそうに駆け回る2頭の巨大生物が。
あれだけどつき合っていたというのに、その体には傷一つ見られない。
ケガをしなかったわけじゃ無い。
したのに治ったんだ。
精霊と魔獣の因子だかなんだかを持っている生き物ってすげぇなぁ。
『見てくださいオクちゃん、キレイな赤い花が咲いていますよ』
『本当ですね……まるで爪で切り裂いた瞬間の肉のよう……』
幸せそうな2頭。
良かった良かった。
「あの……大試さん!」
「どうした有栖?」
「どうしたもこうしたも無いのでは!?」
それを見た有栖が口をアワアワさせながらこちらに詰め寄る。
そりゃ自分の馬がある日突然魔熊と仲良くしてたらビックリするよね。
でもな?
これは、本人たちが望んだことなんだ。
恋が実らないと、動物は大変らしいよ?
例え同性であったとしても、互いに満足させ合える相手がいるのであれば、それに越したことはないんだと思うよ俺は。
「あの熊は大丈夫なんですか!?白花に殺されてしまうのでは!?」
「あ、心配するのそっちなんだ?」
それは想定外です……。
「白花は、王家が代々繋いできた名馬の血統。その中でも歴代最高とも言われる名馬なんです!ですが、何故か動物に対して強い攻撃性があり、私が抑えつけていないと何をするかわかりませんでした!だからこそ、ここで単頭飼育をしていたんです!それがどうして……!?」
えぇ……?
王家的にもヤバイ馬扱いだったの……?
そりゃまあ、俺でもわかるくらいヤバかったけど……。
それでも有栖の愛馬としての運用が許されるくらいに優秀だったって事なんだろうけども。
話から察するに、自分の交尾相手足りえない人間以下のサイズの動物に関しては、別に過度の攻撃を加えることも無かったみたいだし、上手く行けば人工授精か何かで次世代を残すために使おうとでも考えられていたのかも。
サラブレッドなら、馬と馬による直接の交尾で妊娠した仔馬じゃないと認めてもらえなかったはずだけれど、強い馬を求めて品種改良されてきた白花たちには関係ないだろうし。
なんなら精霊とか魔獣の血まで引いてるんだから、DNA汚染とか関係無いもんな。
超雑種。
「繁殖用の牝馬にしようとしても、王国牧場の種馬を2頭も蹴り殺し、人工授精機を破壊するあの子には、もう孤独に生きる道しかないのではと諦めていたのですが……なんて……なんてことでしょう!?」
「ちょっと色々あってさ……」
「話は聞いています……大試さんが頑張っていた事は……。そして、ありがとうございます!あの娘に素敵なお友達を作って頂いて!」
「あぁ……まあ……ガールフレンドだからね……」
野生動物の中には、番が見つからない雄が他の雄と交尾の練習をして過ごしているのを確認されている種がいくつもある。
そう考えれば、こうして異種の同性カップルが出来上がっても自然といえば自然なのかもしれない。
素敵な事なんだよきっと。
ちょっとデカくて、力が強くて、倫理観がおかしいだけだもん。
美しい百合カップルの姿だよ多分。
やっぱりどこに需要あるかわかんねぇなこれ……。
『ウフフフ!オクちゃーん!私を捕まえてみてくださーい♡』
『もーう!今日こそはねじ伏せてあげますよー♡』
ドゴゴゴゴと地響きを響かせながら、楽しそうに追いかけっこする2頭。
それを見て、感極まって泣き出す有栖。
カオスだ……。
「ソフィアあああああああ!おまたせええええええええええ!」
『くるじいいいいいい!はなしてえええええ!』
「私も会いたかったわああああああああああ!」
『いやああああああ!スリスリしないでえええええ!』
会長も例の会議から解放されて帰って来たらしい。
早速ソフィアに抱き着いている。
美少女と猫の美しいコミュニケーションだ。
絵画にしたいね。
「会長お疲れ様です。会議は無事終わったんですか?」
「ただいま大試君!会議?会議……あ、会議ね……。あれはちょっと……」
特に深い意味で聞いたわけじゃ無い。
ここに来たって事は無事に終わったんだろうと思って軽い気持ちで聞いたんだけれど、会長は何を言ったら良いのか整理できてないという表情になった。
そんな言えないような展開だったのか?
結論が、「いきなり忍者が出てきて全ての敵を倒して帰って行ったら解決だよね」とかそういうどうしようもない物だったとか?
「犀果大試さん」
俺が会長の反応に不安を感じていると、会長の後ろから歩いてきた女性に声をかけられた。
誰……?
知らない人怖い……。
「どちら様?」
「申し遅れました。私は、畠山穂。王立農業高等学校で生徒会長を務めております」
農業高校の生徒会長さん?
なんでそんな人がここに?
新しい百合の花でも見に来ました?
「そうですね……貴方がOKU18と戦うように仕向けた卑怯者、とでも言えばわかって頂けるでしょうか?」
ごめんわかんない。
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