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「あーつかれた……報酬忘れんなよ?」
「それに関してはもう手配してある。定期的に衣装づくりが趣味のドラゴンお姉さんが子供服届けに来るから」
「何言ってんだお前……?まあいいや。あんまり聞くと怖くなりそうだからな……」
開拓村まで飛んできたので風雅を降ろし、母さんから魔獣封じ用の首輪を貰い、最後に紅羽にほっぺすりすりしまくってから王都へと戻る。
この数日、色々な事があったなぁ……。
大変だった……。
しかも、学園を休んでだもんなぁ……。
勿論世の為人の為、そしてうちの周りの安全のために行った慈善行為なんだけれど、周りからはそう見てもらえるだろうか?
普通に考えたら、学園に来ないで何かしている不良だと思われるんじゃなかろうか?
元々学園では色々やらかすヤバイやつって思われているっぽいし……。
未だに廊下でアイドルちゃんに会うと「ひっ!?」って悲鳴上げられるし……。
「俺もワルになったもんだな……」
「やっとる事は中々じゃもんな。野生動物をバッサバッサと殺して回っとる異常者に見えるかものう」
借りパク時計から出てきて小倉サンドをパクついているソフィアさんが言いたい放題だ。
そして俺はそれを否定できないんだよなぁ。
悲しい。
「ますたぁ!イチゴはいつでもますたぁの味方だからね!」
「ありがとうイチゴ。でもまあ、別にそこまで世間での評判に興味も無いから大丈夫さ」
だって、少なくとも家に帰れば俺の味方をしてくれるであろう美少女がいっぱいいるんだ!
だから俺のメンタルは無敵!
偶にボコボコになるけど癒してもらえるから!
今日もこれからボコボコにされるであろうけれど、多分家族の誰かしらはいるだろうし……。
「はぁ……なんで俺はヤバイ馬のためにヤバイ魔熊を連れて帰ってお見合いなんてさせようとしてんだ……?誰か説明してくれよ……」
「おおう……大試が鬱ったのう」
「ますたぁ!イチゴジュース飲む!?元気出して!」
「甘い……え?これ凄く美味しいな……」
「私が新しく作った品種だもん!DNAを組み替えまくって超促成栽培したの♪」
「へぇ……美味しい……」
よし、頑張ろう!
家の裏庭へと着陸し、OKU18が入っているコンテナを降ろす。
OKU18自身は、道中全く暴れたりせず大人しくしていた。
ただ、息がすごく荒い。
なんていうか……気持ち悪い荒さ。
「なぁ、大丈夫か?息が荒いけど……」
『問題ありません……。ただちょっと……期待と興奮で……』
「そうか……」
あんまり大丈夫じゃなさそう……。
ハァハァを通り越してぶぼっぶぼっって言ってるもん……。
コンテナを開き、即母さんお手製の首輪をつける。
これで、家の庭から出ようとしたり、自衛以外で人間に攻撃した場合には即死魔術が発動する。
ほぼ呪いみたいなもんだ。
それどころか、自衛だろうがうちの家族に危害を加えようとした場合も即死だ。
この熊にどんな理由があろうが、俺は俺の家族を優先するんでね!
例えあの白いヤバイ馬が悲しんだとしてもだ!
「こっちだ。ルールは分かってるな?」
『はい、もちろんです。もし私の愛を受け止められるような素晴らしい方と引き合わせて頂けるのでしたら、どんなご命令にも従いましょう。但し、もしその方が私の求めるような方ではない場合は……』
「お前に止めを刺せばいいんだな?」
『はい、よろしくお願いします……』
「わかった」
正直、このお見合いが成功しても失敗しても、俺としてはどうでもいいんで……。
白花がいるはずの馬房へと向かっていると、まだ距離があるというのに、白い体が見える。
流石というか、白い動物は遠くからでも目立つなぁ……。
だから自然界では、遺伝子異常とかで白化した個体は長生きできないって言われてるんだよなぁ……。
でも、あの馬はまだまだ長生きしそう。
だって……。
『屈強な血と筋肉の香りが!!!!???』
という嘶きが聞こえるもん。
意味がそうだと理解できるだけで、実際の音は「ヒヒィィィィィィン!!!!????」だけども。
その魂の叫びを聞いたからか、隣のOKU18も反応した。
『これは……この強いプレッシャーは!?』
さっきまで期待と絶望がぐちゃぐちゃに混ざったようなどんよりとした瞳だったOKU18。
しかし、その瞳に強い力が宿るのが見えた。
……というかぶっちゃけ、普通の熊みたいになった。
突然、OKU18が走り出す。
向かう先は、白い馬体。
更に、白花も同じタイミングで走り始めた。
両者は、通常の動物では考えられない程の……それこそ風のような速さで走り寄り、一切減速することなく頭からぶつかった。
『ぐぬうううううううううう!!!?!?!!?(ヒヒヒイイイイイン!!!?!?!!?)』
『ああああああああああん!!??!???(ぶぼおおおおおおううう!!??!???)』
大型動物らしい野太い声が2つ響く。
力は、わずかにOKU18の方が上だろうか?
だけど、白花の方が速さは上に見えた。
そのせいか、両者互角のぶつかり合いだ。
『何者ですか!名を名乗りなさい!あと好みのタイプを!』
『ベアトリスと呼ばれています!ですが、あそこの彼にはOKU18と!恋人に求める条件は私と同じくらい強い事です!』
『そうですか!私の名前は白花!誉れ高き王家の馬にして乙女!好きなのは私の攻撃で死なない生物です!』
『ならば!』
『えぇ!』
『『ヤリましょう!!!!!!!!!』』
互いの性癖をかけた戦いの火ぶたが切って落とされた。
『あ!オス人間!帰って来たならチュールちょうだい!』
「……あぁ、うん」
「ほーれソフィア、チュールならここにあるぞい?お前はワシと大試、どちらからチュールが欲しいんじゃ~?」
『どっちでもいい!チュールなら!』
「ちょっと切ないのう」
奇麗だった芝生がどんどん消し飛んでいくぜぇ……。
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