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49:

「つまり、あの大きなソフィアは理衣さんだったのね?」

「ソフィアちゃんが誰かは知りませんが、そうです……」

「ソフィアって誰ニャ?」

「イメージだと、金髪碧眼幸薄系美少女かな?」

「私の家で昔飼ってた猫よ」


 ネコでした。


 今は、4人で一緒に登校中。

 会長にも、テレポートゲートに関して口止めをした上で出てきている。

 色々話したい事もあったけれど、今日は平日の朝なんだ。

 そんな時間は無い。


 会長によると、昨日あまりの眠さで帰ってしまったから、今日は早めに出て仕事をしようかと思っていたらしい。

 そしたら、通学路で昔飼っていたソフィアが大きくなってそこにいた。

 その猫が大好きだった会長は、眠気で朦朧としながらも思わず抱き着いてスリスリして、そのまま安心して寝落ちしたようだ。


「会長、もう少ししっかり休んだ方がいいんじゃないですか……?」

「でも、部屋に帰ってベッドで横になると、目を瞑っても仕事の事ばかり浮かんできて寝れないのよ……」

「ヤバいですってそれ。セラピー案件ですよ」

「でも大丈夫!本物では無かったみたいだけど、ソフィアにスリスリできて元気が出たわ!」

「……確かに顔色良くなってますね」

「でしょう?ありがとう理衣さん!」

「いっいえ!」


 パーティー会場で初めて会った時のような自信に満ち溢れた顔の会長に、満面の笑みでお礼を言われてあわあわしている理衣さん。

 ちゃんと元気な状態なら、会長ってかなりカリスマ性ある感じに見えるんだよなぁ……。

 それなのに、よくもまああそこまでボロボロになったもんだ……。


 まあ原因は、本来会長の助けになるはずだった主人公たちが一気にいなくなって、しかもそこに王子が色々仕事増やした事なんだろうけれど……。

 結果的にほぼ無関係な俺にまで仕事負担しないと回らなくなってるしなぁ……。


「もう理衣さんに生徒会入ってもらったらいいんじゃないですか?確か、名誉なものなんでしょ?」

「えー!?私には無理だよー!」

「……良いわねそれ……理衣さんは何もしなくてもいいから、ただ私の横で眠ってソフィアになってくれればいいのよ!」

「それはそれで嫌ですー!」


 そうかなぁ?

 良い案だと思うんだけどなぁ。

 愛玩扱いは嫌かもしれないけど、何だかんだで1年1組にいるって事は優秀なんだろうしさ。


 俺みたいな色々やらかした末にぶち込まれた奴を除いて……。


「それにね、理衣さんは本物のソフィアでは無かったかもしれないけれど、全くの偽物って訳でもないみたいなのよ」

「どういうことですか?」

「あくまで私の予想ではあるんだけれど、理衣さんのギフトは恐らく霊の力を借りる物なんだと思う」

「え!?私ってネクロマンサー的な人だったんですか!?」

「そうではなく……イタコみたいなものかしら?確かにアナタはソフィアではなかったけれど、纏う魂の波長はソフィアだったわ。だから、きっとあの子が不甲斐ない私を助けるために貴方に憑りついたんじゃないかって思うの」

「魂の波長っていきなりオカルトっぽいですね」

「あら?私の実家って侯爵家ではあるけど、建物は神社よ?帰省中は巫女服着てるんだから!オカルトに関しては多分この学園で一番詳しいんじゃないかしら?……といっても、流石に魂の波長まで見えるのは、単に私のギフトが『巫女』だからってだけなんだろうけれどね」


 へぇ……。

 霊の力をねぇ……。

 そりゃすごい……。


 でもごめん理衣さん!

 今俺の頭の中の8割はラッキーガールじゃなくて巫女ガールで占められてしまってる!

 だって黒髪ロングに姫カットの巫女とかどう評価したとしても最高じゃん!


「だから、理衣さんのギフトは、きっと周りの人を幸せにするために使われるように出来ているのでしょうね……」

「周りの人の……幸せ……」

「現に、私はとっても幸せになったわ!貴方は本当にラッキーガールよ!」

「……え……えへへー……」


 褒められて満更でもないらしい理衣さん。

 これは、もう一押しで生徒会に入るんじゃないだろうか?

 オラ!馬車猫の如く働け!


「結局なんで寝てる間に猫になっちゃうニャ?」


 ここまでしばらく黙っていたファムによる鋭い突っ込み。

 そうだよ……問題は何にも片付いてなかった……。


「寝ている間であれば、本人の自意識が消失して霊が影響を及ぼしやすくなるのではないかしら?」

「じゃあ私は、これからもずっと寝たら猫になるままなんですかー!?」

「それはわからないけれど、寝るという行為は一種のトランス状態なのよ。その眠っていて憑りつかれやすい状態でも、憑りつかれるのを防げる程度に貴方が基礎的な抵抗力を上げればいいのではないかしら?」

「抵抗力ですか?」

「ええそう。抵抗力を上げる方法は色々あるし、人によって向いている物も違うけれど……アナタの場合は一つだけ確かな方法があるわ」

「なんですか!?教えてください!」


 理衣さんの必死の懇願に、しかし会長はニマァと非常に楽しそうな笑顔でもったいぶる。

 そして、わざとらしい大きな身振り手振りでポーズをとって告げた


「恋よ!」

「恋ー!?」


 理衣さんの大きいリアクションに満足気な会長。

 ホントこの人、こういうの好きだな……。


「理衣さんが人間に戻ることが出来た時に、共通して近くにあったものは何?」

「近くに……?えーと……ぎゅ……ぎゅうど」

「答えは、大試君よ」

「……あ!」


 はい流れがおかしくなった!

 理衣さんも「あ!」じゃないんだよ?


「女の子にとって恋っていうのはとっても大きな力になるの。理衣さんは、最初にソフィアになる直前に、何かで大試君にドキッとしちゃう機会があったんじゃないかしら?もしかしたらそれまでにも多少はあったのかもしれないけれど、決定的な出来事がきっとあったはず」

「……あの、言わないとダメなんでしょうか……?」

「いいえ?自覚が出来ているならそれでいいのよ。」

「……うー……」

「そのラッキーガールというギフトの力に目覚めるきっかけになった出来事自体もきっと恋でしょうし、猫化を解除する力も恋なのよ。だから貴方は、その気持ちをコントロールする術を磨けばいいの。もしそれができれば、今度は勝手に霊に体の形を変えられるんじゃなくて、自分の意志で霊の力を使えるようになるわ!そのためには、漠然と周りの人の幸せを考えるのではなく、その恋した相手の事を思い浮かべて力を使うのが良いと思うの!」

「私の……恋……」


 そう言って、顔を真っ赤にしながらこっちを見つめてくる理衣さん。

 おい落ち着け。

 雰囲気に飲まれるんじゃない。


「理衣さん理衣さん、冷静になれ。今会長が言ってるのは殆どがただの想像で……」

「大試君って婚約者3人もいるのよね?だったらもう1人2人増えても構わないんじゃない?」

「元気いっぱいですね会長。もう理衣キャット貸しませんよ?」

「それは嫌!」


 まったく……、初心な少女の気持ちを勝手に誘導するんじゃないよ。

 理衣さんが本当に自分が俺に恋してると思っちゃったらどうするんだ?

 責任とるのは俺なんだぞ?


「理衣さんも気にしなくていいからな?もし猫になるのが治らなくてもちゃんと助けてやるから、変なこと考えなくていいんだぞ?」

「う……うん、大試君って優しいね……!」


 なんで顔を赤くしてそう言ってくる?

 大丈夫?


「あのね大試君……もしどうしようもない時のために、連絡先教えてもらえる?」

「それはまあ……いいけど……」


 とりあえずスマホの連絡先を交換する。

 よし!久しぶりに同年代の連絡先が増えたぞ!

 まだ登録先が10人にも満たないけど!


「それとあのね……もしよければ、私の事は理衣って呼んでもらえるかな?さんなんて他人行儀な呼び方じゃなくて……」

「……いいけど……」


 いやいやいやいや!

 クラスメイトで名前で呼び捨てくらい普通だから!

 そうだよ!普通!


「えへへ……ありがとー!」


 華が咲くような笑顔で見つめてくるのも多分普通!


「大試君大試君!私とも連絡先交換してくれないかしら?また面倒事あったら押し付けるから!」

「会長さぁ……はぁ……まあいいですよ……」


 流石にあのボロボロさを見せられたらNOとも言いにくいわ。

 生徒会には入りたくないけどもな!


「……あと、私のために面倒事引き受けてくれてありがとう……正直……とっても嬉しかった……」

「……会長も落ち着いてください。冷静になって下さい」


顔を赤くしないで下さい。


「ニンゲンが年中発情期だって噂は本当なんだニャー」


 だから自分がニンゲンじゃないってバレそうな事口走ってんじゃねぇよ元魔王軍幹部!




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