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イチゴエアをかっ飛ばし飛んできた場所。
OKU18によってどんな被害が出ているかもわからない状況なので、着陸するのも待たずに風雅と飛び降りる。
風雅は、高さに少しビビっていたけれど、大丈夫だ!今のお前は主人公っぽいから、このくらいの高さ何でもない!
そう判断した俺によって突き落とされた。
ちゃんと着地で来ていたから大丈夫だろう。
それにしても……。
「でっかい家だな……」
「なんだ?よっぽどの金持ちなのか?まさか貴族じゃねぇよな……?面倒事は勘弁してほしいんだがな」
やめろ主人公!
主人公がそういう事言うと、面倒事の方からこっちに舞い込んでくるぞ!
フラグって言うんだぜそれ!
エルフでも知ってる!
『ますたぁ、そのお家は、大川子爵家っていう貴族の家だってー』
「貴族かぁ……やっぱりなぁ……」
「俺外で待っててもいいか?探しさえすれば、大試だけで良いんじゃね?貴族でも何でもねぇ俺が行くのはまずいだろ。しかも指名手配中だしよ」
「大丈夫だ。この覆面被っとけ」
俺は、風雅の巻き込まれたくないというわかりやすい訴えを無視し、安っぽい生地のマスクを投げつける。
風雅を連れて歩くことを決めてすぐ、何かあった場合のためにと買っておいたものだ。
特に、貴族連中のように犯罪者を積極的になんとかする立場になりやすいような人間を相手にしないといけなくなった場合とかに重宝すると思って。
「……もう少しいいもん無かったのかよ?」
「何言ってんだ?開封品とかで10%割引になってたんだぞ?これ以上にコスパ良いもん無いだろ」
「どんだけコスパ良くても、地蔵の頭マスクは誰も買わねぇだろ……」
そんなこと無いって!
開封品って事は、誰かがきっと買って開けてるんだし!
その上で返品したわけだが。
「顔隠せれば何でもいいだろ?それ使って徳を積め」
「罰当たりそうな気がするんだけどな……」
「大丈夫だって。神社で軽く祈祷してもらったから、オカルティックなパワーがちゃんとあるさ」
「うさんくせぇ……」
まあ、地蔵なら神社より寺の方が良かったかもしれないし、祈祷したのが化け狸の爺さんとロリだから、どこまで効果があるかはわからないけども。
一応神性持ちだから大丈夫じゃないかな?
グダグダいってる暇なんて無いので、風雅に無理やり地蔵マスクをかぶせてから屋敷の敷地内へと入る。
魔物の領域と人間の領域の境界線ギリギリに建てられたこの建物は、魔物の襲撃にあう可能性も高そうだというのに、何故か外に見張りも警備の人間もいない。
罠か何かか?なんて事も考えたけれど、よく考えたら俺達相手に罠を張る理由が無い……というより、俺たちが向かって来ていることに気が付いている訳がない。
あくまで非公式にハンティングしているだけだからなぁ俺達。
となると、熊に全員やられたとでも考えるべきか?
その割には、血痕みたいなものは見ていないけれど……。
「こっちだ!このでけぇ扉から入って行けるらしいぞ!てか、何度もここから出入りしているっぽいなこの熊!」
「出入り?ってことは、ここは熊の住処になってるって事か?」
「それはわからねぇな。足跡が幾つも重なってるのがわかるだけだ」
ってぇことは何かい?
外に血痕が無いのは、惨劇が起きてから時間が経っていて、雨とかで流されてしまったからで、家の中は死体の破片と糞の山とかいう酷い状態だったりするのかい?
OKU18が人間を襲っているような興奮状態じゃなくて、発情状態だって言うのも、人間を殺しつくしてから時間が経っているからって事なのかい?
どんどん入りたくなくなってくるけれど、そうもいかないかぁ……。
またここ数日倒してきたような、わけのわからない魔熊を生み出されたら困るからなぁ……。
「因みになんだが風雅、この建物の中に、OKU18以外に生き物はいるか?生存者とか、逆に子熊がモリモリいるとか、そう言うのわからないか?」
「わかるぜ。獲物がいるかどうか調べんのは、狩猟の基本技術だからな」
風雅はそう言うと目を閉じ、すぅっと小さく息を吸った。
数秒後に目を開けた時には、既に何もかも把握したような表情になっている。
「魔熊は1頭だけだな。人間は、30人はいるぞ?」
「なに?確かか?」
「間違いねぇよ。人間たちは、特に恐怖を感じたりしている訳じゃねぇみてぇだぞ?どういうことだ?」
それは俺が聞きたい……。
まあ、何はともあれだ!
「危険な熊の魔獣が屋内にいるんだから、勝手に侵入しても怒られる筋合い無いよな?」
「知らねぇな。俺なら飯を奢りたくなるくらい感謝すると思うけどよ」
「意外だな?お前がそう言う事言うなんて」
奢りとか、絶対しなさそうなイメージだったんだが。
「だってよ、嫁と子供がいる家に熊の魔獣がいて、そいつを倒すために誰かが来てくれるんだろ?感謝しかねぇだろ」
「あー……うん……そうだな……」
地蔵フェイスですら主人公オーラを隠せない幼馴染に少し感動しながら、恐らく地下へと続くであろう大きなシャッターを蹴破った。
「ノックしただけなのに吹っ飛んだわ。これは、熊によるダメージのせいかもしれない。急ぐぞ」
「静かに入れねぇのかよ……」
流石に静かにシャッターを蹴破るのは難しいかな?
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