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「へぇ……こいつ、ここの牛1頭狩るのに1週間もかけてんのか……。慎重というかなんというかなぁ……」


「お?すげぇ!ウ○コをわざわざ土に埋めてるぜ!熊でこんな事する奴初めて見たわ!」


「この枝……風か何かで吹き溜まったようにも見えるけどよ、これはあの熊の寝床だわ。つっても、一晩しか使ってねぇみたいだけどな……。決まった場所に帰ってくる獣は狩りやすいんだが、こいつは毎晩寝床変えてんのか……」


「開けた道路は避けてるみてぇだが、ゴミ捨て場には興味津々だな」


「普段の食事は、草と木の実がメインみてぇだな。だが、喜んで食ってるわけじゃ無いなこれ。人間が作る農作物とか、家畜やらを食えねぇときに仕方なく食ってるだけって気持ちが窺えるわ」


「それにしても移動速度が速えぇな……。人間に見つからないように心がけてる割りに、それ以外の敵……獣や魔物には全く怯んで無いな。人の領域に近づいたら病的に慎重になるくせに、魔物の領域は堂々と走り抜けてやがる。そのせいで人間に見つからずに、それでいて神出鬼没の厄介なやつって思われてんだろ。魔術をバンバン扱えるような奴でもない限り、この熊を追いかけるのは無理だろうな。人間相手だと、準備する時間さえ与えなければ怖くねぇようだ。こいつ、人間が結託した時の厄介さや、魔道具のヤバさまで理解してんだな……。人間に見つかって、行動パターンを割り出される事を避けることを徹底してるわ。逆に見つかる前に逃げちまえば普通追いつかれないことまでわかってやがる」

「はへぇ……」


 OKU18の痕跡を辿りながら魔物の領域を疾走してきた風雅。

 その風雅にくっついてやってきた俺。

 どうしてだろう?

 風雅が頭良さそうに見える……!

 頼もしい……!

 どう見てもこの物語の主人公こいつだろ!?

 俺とか完全にその隣にいるモブだ!

 途中でインフレについていけずに離脱するやつ!

 もしくは、死ぬことで主人公の覚醒のきっかけになったりかな!

 ここ3日程行動共にしているけれど、どんどんその度合いが上がるわ!

 それだけに、なんで『ああ』だったのかが本当に謎……。


「嫁さん大事にしろよ……?」

「あ?なんだいきなり?まあ大事にはするけどよ……」

「良い人に出会ったんだな……」

「まあ……最初は、なんで女なのに髭もじゃなんだよ!って言いたくなったが、話してみると案外可愛いし、飯もうめぇし、その……あっちの方も最高だしよ……。まあ、他の女を知っているわけでもねぇけども……。家に帰ったら、アイツが待っていてくれると思うだけで頑張れるんだよな。何でかは俺にもわかんねぇけど、これが愛ってやつなんだと思うぜ?しかも、今度子供まで生まれるんだ。俺の子供だぞ?楽しみだよなぁ……。世界って素晴らしいわ……」

「お……おう……」


 愛って素晴らしいな!

 やっぱ生き物は、繁殖すると一段階大人になるのかもしれないな!

 知らんが!


 本能に忠実な白花が強い相手とあそこまで執拗に交配したがっているのも、こんな感じの特別な感情を求めてなのかもしれんな。

 知らんが!

 あの馬どうすっかなぁ……。



 風雅がOKU18の足跡を辿り始めて6時間が経った。

 ここ数日何頭も熊を追いかけて来たけれど、1頭にここまで時間をかけたのは初めてだろう。

 途中に挟んだ休憩を除いて6時間だから、魔熊として考えるなら驚異的な逃走能力と言えるだろう。

 しかも、まだ例の情報を集めきって相手の現在の方角や状態までわかる段階まで進んでいないっていうんだから驚きだ。

「移動速度が速すぎて、一か所で取れる情報量が極端にすくねぇんだよなぁ……」

 と風雅が言っていたから、OKU18の忍者っぷりは相当なものなんだろう。

 俺一人だったら多分見つけることは難しかったな……。

 いやぁ、この馬鹿……元馬鹿が、俺の依頼を喜んで受ける状態になってて助かったなぁ……。


「よし!何とかこの熊のいる方角が分かるようになったぜ!さっさと向かうぞ!」

「追跡開始からもうすぐ7時間か……」

「俺の人生でも一番時間かかってるわ!もうウンザリだからサクッと狩って帰りてぇ!嫁の飯くいてぇ!」


 早く帰りたいのは俺も同感なので、すぐに風雅がOKU18がいるのを感じる方角へと向かおうとしたけれど、どうやら距離が200km程あるらしい。

 走って行くの大変すぎるわ死ねやクソ熊!と叫びたくなったけれども、よく考えたらイチゴエアで飛んでいけばすぐだと気が付いて呼び出す。

 するとすぐやってくるあたり、近くを飛びながら待機していたようだ。


「おまたせますたぁ!」

「俺も今来たとこだからそんなに待ってないぞ」

「えへへ……ますたぁ優しい……♡」


 何故かこのやり取りをしてほしいらしく、やってやるとやけに喜ぶからとここ数日だけで何回もやっている。

 イマイチその喜びポイントが俺にはわからんけれど……。


 イチゴに向かう場所を指示するために、モニターにデカデカと地図を表示してもらう。


「風雅、そのOKU18がいる場所ってどの辺りなんだ?」

「あー……ここがこうで、山がここだから……この部分だな」


 地図を読むのも狩猟王の力で得意になるらしく、風雅はすぐにピンポイントで場所を指し示す。

 その指示に従うのが嫌なのか難しい顔をしているイチゴ。

 わっかりやすいなぁ……。


「イチゴ、ここに向かってくれ」

「はーい!ますたぁのお願いなら喜んで♪……あれ?ますたぁ、ここって……」


 俺の指示ってした方が素直に従ってくれそうだなと引き継いだけれど、それとは別に何か気になることがあるらしいイチゴ。

 珍しく深刻そうな顔をしている。


「どうした?」

「うーん……。ますたぁ、ここの地点ってね……」


「人の家だよ?」

「うわぁ……急ぐぞ!」

「はーい!」


 間に合わなくても俺のせいでは無いけれど、流石に寝覚めが悪くなりそうだからなぁ……。


「人間食って興奮してる感じじゃないっぽいけどな……」


 だけど、俺の最悪の想像を風雅が否定する。


「じゃあ、OKU18は今どんな状態なんだ?」

「あー……なんつうかな……アレだ」

「アレ?」

「……発情っつうの?悶々としてるわ……」


 帰るか?

 ダメか……?






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