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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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479:

『くそ!薄汚い手であたしに触るな!殺すぞ!』

「うわぁ、口悪いなぁ……」

「そりゃ魔獣なんだからギャアギャア喚くだろ?」

「いや、俺にはこいつの言葉が理解できちゃうんだよ。精霊の血も混ざってるのか、精霊化してるからかは知らないけど、俺が大精霊とリンクしたりしてるからじゃないかと考えてる」

「大精霊って、お前……」


 OKU18の娘で、γと呼ばれている熊を取り押さえた。

 見つけるところまでは風雅に任せ、もしかしたらコイツらの出自の情報でも得られないかと思って、白花の為にβと呼ばれていた熊を取り押さえたときと同様の方法で地面に押し付けている。

 ただ、すでにちょっと後悔中だ。

 こいつ、めちゃくちゃクセぇ……。

 体毛が所々赤黒くなっているのは、多分こいつの血ではなく、獲物を狩った時の返り血なんだろう。

 それを洗わず、トロフィーか何かのようにしていたのかも。

 熊って臭いけど、本来もう少し綺麗好きのハズなんだよなぁ……。

 これも、そのOKU18とかいう熊の特異性の一つが現れたってことなんだろうか?

 今のところ他にこいつみたいに、食べるためじゃなくて殺すこと自体を目的に家畜を個体は見つかっていないみたいだから、こいつの個性なのかもしれないけれど。

 仮に、この連続殺人機みたいな性質の魔熊が増えたら、人の領域は大変なことになっちゃうだろうな……。

 魔獣の領域内の人間を攻撃するのは、魔獣としての本能なんだろうから仕方ないにしても、わざわざ人間社会の家畜を攻撃することを目的にやってくるなら、畜産は壊滅的な被害を受けるようになるだろう。

 それは困る。

 俺は肉が食いたい!

 熊肉は、あんまり美味しいと思えないからノーセンキュー。

 カレーにすれば、どんなクセが強い肉も美味しく食べられると声高に叫ぶ人もいるけれど、俺はそうは思わない。

 クセが強い肉ってのは、スパイスの香りを貫通してくるんだよ!

 今まで食べた中で一番酷かったのはトドかなぁ……。

 前世で両親がお土産とかいって買ってきたんだよ。

 トド入りのカレー缶を!

 お前ら夫婦で網走監獄に旅行で行ってお土産がなんでそれなんだよ!

 まあ食べきったけども。

 鹿肉とかは、前世でも美味しかったのになぁ……。


「お前さぁ、なんで食いもしない牛殺したんだ?」

『は!?楽しいからに決まってんでしょ!あたしの邪魔するんじゃないわよ!もっと殺してレベル上げて、もっともっと殺せるように強くなるんだから!』

「レベルの概念を理解してるのか……」


 ふむふむ、成る程成る程。

 やっぱダメだな、こいつらは殺すしか無い。

 人間のエゴですまないけれど、生かしておくと俺達にとって問題がありすぎる。


「最後に一つ聞くけれど、お前はどこで生まれたんだ?」


 保健所の連中の感じからして、もしかしたらこの特殊なクマたちは、人間の手で作り出されたものなのかもしれないと俺は疑っている。

 それこそ、この世界の軍馬たちが、魔獣や精霊と何世代にも渡って掛け合わされて作り出されてきたように、この魔熊も品種改良の結果なんじゃないかとね。


『そんなの覚えてないわよ!離せ!離せええええええ!』

「まあ、小さい頃の記憶なんて覚えてないもんなのかもな」


 元々大して期待もしていなかった俺は、そばで待機していた風雅に頷いて合図を送った。


「よし、じゃあ〆るか」

『何よその棒!?こっちに向けるな!離せ!死ね!!』

「何言ってるか知らねぇが、興味ないな。あばよ」


 風雅が、ゴツくてでかいサバイバルナイフみたいなものをγの首に突き刺した。

 その瞬間、1度大きくビクンと痙攣したγは、すぐに小刻みな痙攣をするだけになり、死んでいった。

 また今度も、一撃で即死させたらしい。

 本当に頼りになるな今日の風雅……。


「なんだ、この熊たち、人間が作り出したかもしれねぇのか?」

「あくまで俺の予想だけどな。今までにも、ものすごく長生きしたヌシみたいな魔獣と念話で会話できたことはあったけれど、コイツらみたいに鳴き声自体が言葉に聞こえるようなやつって初めてだし、ちょっと特殊な気がしてな。それに、調査を担当する奴らもどこかから圧力かけられてるようだから、貴族が犯人かもとな」

「貴族の政治が絡むかもしれねぇのか?あーいやだいやだ。俺はやっぱり、開拓村で狩りしている方が性に合ってるわ」

「仮にお前が都会大好きだとしても、今指名手配中で行けないしな」

「それは言うなよ……」


 時効とか無いだろうから、ずっと言い続けるぞ?


「さて、夜も開けてきたし、次の熊を追う前に仮眠するか。風雅も突然呼び出されて疲れただろ?」

「まあな。っつっても、開拓村じゃ突然呼び出されて仕事するのなんて日常茶飯事だから、慣れているといえば慣れているけどな」

「その辺は、俺には頑張ってくれと応援するしかできないな……」


 まさか一晩で本当に2頭も片付けられるとは思っていなかったけれど、これでゴールが見えてきたな。

 後は、娘が3頭に母親のOKU18を狩れば、とりあえず目標達成か?

 このペースでいけば、明後日には終えられるだろうか……。


「これ、公休になるんだろうか?」

「学園か?お前、国のために働いてるんだろ?普通は公休になるだろ」

「それがなぁ、正式な依頼ってわけでもなくてな。ギャラすら出る目処が立ってねぇ」

「大試、お前もう少しこう……色々考えてから動けよ……」


 考えた結果、大抵剣でぶった切るって結論に至るんだもんよ。







感想、評価よろしくお願いします。


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>食べるためじゃなくて殺すこと自体を目的に家畜を個体は見つかっていない  「家畜を」の後に「襲う」などの言葉が入らないと意味が通じません。
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