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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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473:

「会場にお集まりの皆様、規定の時間となりましたので、第22回王国学生会議を始めます。司会進行は、今回の議題を提出させていただきました私、王立農業高等学校生徒会長、畠山はたけやま みのりが務めさせていただきます」


 はぁ……とうとう始まってしまった……。

 私にとって大した意味を持たないこの会議が……。


 王国学生会議、通称王学会。

 元々は、王都にある高等学校10校の生徒会長が集まって会議するというものだったのに、いつの間にか参加希望校がどんどん増えて、今では80を超す高等学校から生徒会長が送り込まれてくる。

 中には、王都にただの名目上の分校を作ることで無理やり参加してくる王都外の学校もある。

 名目上は、優秀な学生の将来のための練習場であるこの会議だけれど、実態は王立魔法学園……つまり私たちへの繋ぎを作りたい方々の思惑で始まったこのイベント。

 後から後からその甘い蜜に群がってきた学校が多すぎたせいで、いつの間にか会場が、王国ホテルの祭儀場貸切、さらに参加者の宿泊用に客室まで貸切にしなければならないほどの大イベントになってしまったそう。

 魔法学園の生徒会長次第では、確かに有意義なものになるのかもしれないけれど、卒業後は大試くんと一緒に田舎に引っ込む予定の私に売り込みをかけても旨味はあまりないと思うのだけれど……。


 まあ、私の思いを知っている人なんてそこまで多くないのかもしれない。

 例え知っていたとしても、それでもなんとか売り込みたいと思う方々も多いのかもしれない。

 ご苦労なことね……。

 はぁ……ソフィアにちゅーるあげたい……。


 ただ、今年の議題は、割と重要なものかもしれない。

 毎年議題は、参加校から一つずつ提出された案を実行委員会を名乗る魔法学園OBの方々が評価し、最も優秀な物が選ばれる。

 そこで選ばれれば、こうしてこの会議の司会進行まで含めて任され、アピールする機会が大幅に増えるので、どこの学校もそれはもう色々準備してくる。

 私も1年の時は、かいちょ……王子のサポートで議題案も制作したし、他校の議題案リストにも目を通したけれど、インパクトある議題名が多かった。

 その割に、どれも中身が無さそうなものばかりでがっかりだった覚えもある。


 でも、今年の議題は、かなり切実な物みたい。


「こういう場では、長々とご挨拶をするべきなのかもしれませんが、私も皆様も、そんな悠長な時間の使い方をしたいとは考えていないでしょう。というわけで、早速ですが議論を始めたいと思います。議題は、『魔獣出没件数の急増について』。事前に資料を配布しておりますので、まずは1ページ目を御覧ください」


 そう言われ、手元の資料の表紙をめくる。

 そこには、グチャグチャに破壊されたプラスチックのゴミ箱の写真が載っていた。


「この画像は、現在活発になっている魔獣被害の典型的な例として掲載しました。これを見て、会場の皆様はどのような感想を持たれたでしょうか?」


 畠山さんが演題の上から会場を見渡す。

 すると、競い合うように手を挙げる者たち。

 ここをアピールの場であると考える彼らにとって、チャンスと見れば見逃す手は無いらしい。


「このような迷惑行為を行う魔獣など、さっさと駆除してしまえばいいのでは?」

「カラスと同程度の行いをここであれこれ議論しようとする意図がわからない!」

「ネットでもかければ解決されるんじゃないか?」


 ぱっと考えた解決策を出す者や、この議案を出した者へのネガキャンに走る者。

 色々いるけれど、ここで手を上げた者たちは誰一人、この自体の重大さを理解していないらしい。

 ソフィアにチュールをあげる大試くんをお茶でも飲みながら眺めていたい。


「確かにゴミを漁るなんて、カラスや野良猫、外国で言えばアライグマやスカンクみたいな行いかもしれませんね」


 それらの意見を軽く流しながら、畠山さんが苦笑いをする。

 彼女は普段の仕事のせいか日焼けをしているけれど、美人なので、先程ガーガー言っていた男子生徒たちはちょっとバツが悪そう。

 中には、ポゥっとしているのまでいる。

 落ちたなーあれ……。


「今回これを行ったのは、現場に落ちていた体毛や、周辺の防犯カメラの映像から、魔獣化したツキノワグマであると考えられています」


 彼女が真面目な顔に戻り、続ける。


「ゴミを漁るというのは、ここに自分にとっての糧となるものがあると理解しているということです。つまり、これを行った魔獣は、人間の営みを利用するということを覚えてしまった個体ということになります」


 彼女はそう言うと、会場の大型スクリーンに映像を出す。


「これが、当該固体とされる魔獣、識別コード『OKU18』です」


 そこに映し出されたのは、確かに迫力はあるけれど、私達一般の視点からすれば特徴のない、普通の熊だった。


「恐らく、皆さんはこの事態についてまだ楽観視している事でしょう。ちょっと魔獣を狩れば済むというような考えの方も多いのでは?」


 彼女がそう言うと、会場の人々の中にビクッとしたのが何人かいた。


「結論から言いましょう。これは、最悪の事態に繋がりかねない重大な問題です。魔物の領域から、魔獣が嬉々として人間社会へとやってくる……。所謂、『氾濫』と呼ばれる災害がすぐそこまで迫っている可能性があります」


 はぁ……ソフィアを吸いたいわ……。





感想、評価よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
あ…なんか解決してそうな気がしてきたな〜
何気に18だけ被っている。翌日くらいには研究所に運び込まれて討伐済みの報告だけ挙がるんだろうなぁ。
魔獣化したツキノワグマ……最近見た気がしますねぇ!w
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