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裏庭を2人と1匹で散策している俺達。
実の所、俺もこの庭について詳しくは知らないんだ。
何度か歩いたけれど、来るたびに新しい施設が増えててよくわからないんだよなぁ……。
『オス人間!魚泳いでる!』
「これ、危ないぞソフィア、そこは生簀じゃから割と深いからのう」
ソフィアコンビが楽しそうに歩いているのを後ろから眺めながらついていく。
そうすると、新しい発見が一杯だ。
ってか、生簀なんて作られてんのか……。
ビオトープなんて規模じゃないな……。
種類はわからないけれど、マスっぽい魚が一杯泳いているのが見える。
前世にはいなかった種類も多いから、俺にはよくわからないんだよな。
元になったゲームを作ったメーカーは、釣りに妙な拘りがある会社だったらしくて、魚が色々実装されている。
シリーズが幾つもあったのをまとめたからか、あんまり統一性は無いけれども、
ファンタジー感がすごい魚もいれば、前世で見た魚も多い。
あ、アレはニジマスだな。
それは分かる。
回転寿司でサーモンって名前で回ってる奴だ。
サーモン(鮭)って書くとウソになるから、サーモントラウト(鮭鱒)とかトラウトサーモン(鱒鮭)って『商品名』って事にしてあるという不思議な奴ら。
多くは、海で大きくなるまで育てられた個体だけれども、日本だとご当地サーモンって言って淡水で養殖してる場所も結構あった気がする。
なんか、話してたら塩焼きで食べたくなってきたな……。
「今アイが買い出しに行ってるから、トラウトサーモン買ってきてもらおうかなぁ……」
「いいのう!塩じゃけは意外と酒に合うんじゃ!」
『オス人間!魚食べたい!食べたい!』
『食べてみたいですね魚、飼葉など飽き飽きですし』
賛成多数により可決されました。
「じゃあ頼むか!ポチポチっと……アイ!今日の夜はトラウトサーモンの塩焼き食べたい!猫用に塩振ってない奴も買っておいてくれ!」
『裏庭の生簀を見て食べたくなったのですね?畏まりました。まだ裏庭の者たちはサイズが小さいので、犀果様のお口に入れられるのはまだ先ですが』
「裏庭で食べられる魚が育ってるのはワクワクするなぁ……」
『十分に育ったら、まず最初に犀果様に提供させて頂きます。鉄板焼きを予定しておりますのでお楽しみに』
「あぁ!楽しみにしとく!」
通話を終えて皆を見る。
全員ウッキウキだ。
トラウトサーモン……美味しいもんな……。
しかも安いし……。
ソフィアさんもソフィアも白馬もご満悦。
あれ?
「馬……?」
「おう?なんじゃコイツ?」
『オス人間!でっかい!怖い!』
いつの間にか、真っ白な馬がいた。
幻想的なその見た目から察するに、かなりお高そうな……。
『初めまして、この家の主の人間とお見受けします。私は、有栖の愛馬である白花です』
「あ……これはこれはご丁寧に……。犀果大試と申します」
「ソフィアじゃ」
『ソフィア!』
『……やはり、会話が通じているようですね?』
「うん?」
あら?
言われてみれば、ソフィアとはパスがつながっているから会話できることに違和感なくなってたけど、なんでこの馬とも会話できているんだ?
どうやらソフィアさんたちとも会話できているみたいだし……。
俺の妄想か?
疲れから来る幻覚とか?
『私が考えるに、恐らく私の種族が精霊に近いからなのでしょう』
「精霊?馬じゃなくて?」
『現代の馬は、元々の馬と魔獣や精霊に近い馬を掛け合わせて作られた種類です。ですから、そちらの精霊たちと、そしてその精霊とパスがつながっている貴方とであれば会話が可能なようです』
「へぇ……」
馬と会話かぁ……。
「鞭で叩いてくる人間キライ!」とか言われるのかな……?
『精霊がいる気配があったので、馬房から抜け出してきたのですが、どうやら正解だったようです』
そういえば、有栖が馬用に庭の一部を使わせてくれって前言ってたような気がするな……。
何処にあるのかは知らないけれど、馬房なんてもんが完成してたのか……。
『人間と会話ができる貴重な機会なので、お願いしたい事があるのですが』
「お願い?聞けることならいいけど」
『難しい事ではないと思います。実は、そろそろ妊娠したいと考えておりまして』
「ほんと?本当に難しい事じゃない?」
不安だ……。
馬の種付けとかそれもう専門業者いるくらいの大変な作業だろ……?
そもそもそんなもん勝手に俺がしていい事じゃないだろうし……。
王室の馬って事は、血統まで含めて相当ギッチギチに管理されてるはずだろ?
『えぇ。実は、気になっている男性がいまして。その方を連れてきていただけないかと』
「気になってる男性?雄もいるのか」
どんな馬房が出来上がっているのか知らないけれど、牡馬までいるとしたらそこそこ大きい物なんだろうか?
繁殖させることも考えているとか?
『その方は、黒くて、とても大きくてガッシリとした……』
『熊なんです』
「ダメだろ」
『何故です!?』
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