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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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 納豆菌。

 生物学的な正式名称は、えーと……バチルス?だかなんだかで、最後がナットーだったのは覚えてる。

 まあ、その辺りは重要ではない。

 こいつの特徴は、とにかく耐久性が半端ないこと。

 普段から中々しぶといんだけれど、「あれ?なんか危ない雰囲気じゃね?」と感じた納豆菌は、芽胞という無敵バリアーみたいなものを作り出す。

 芽胞モードの納豆菌は、茹でて行う殺菌である煮沸消毒や、アルコールによる殺菌や除菌も受け付けない。

 あの悪霊のごとくいつの間にかあらゆる所に発生している黒カビですら、50度の蒸気で死滅してしまうのと比較すればそのすごさもわかるだろう。

 菌類の世界とは、自分にとって生活しやすい生活圏を作り出し、尚且つ周りの菌類を滅ぼしながら陣地形成していくような関係性で成り立っている。

 そんな修羅の世界であれば、たまに枯れ草を納豆っぽい臭いにするだけで済んでいた納豆菌。

 しかし、人類は悪魔の発明をしてしまった。

 それが、納豆。

 簡単に言ってしまうと、納豆菌が熱に強いという特徴を活かし、熱消毒で他の菌類を殲滅した後、まっさらな無限のフロンティアとなった納豆の大地を納豆菌軍に占領させるという極悪な作戦だ。


 納豆の歴史はものっそい古くて、縄文時代には食べられていたと考えられている。

 藁の中に茹でた豆を保管してたらできたんじゃね?とかなんとか。

 実際にどうやって縄文人が納豆を作っていたかなんて知らんけど、縄文人でも作れる発酵食品が納豆だ。


 作り方は簡単。

 水につけて柔らかくなった豆を蒸します!

 稲の藁があればそれを使うんだけれど、無かったから豆の茎を熱湯消毒します!

 消毒した茎の束で蒸した豆を包みます!

 茎の両端をこれまた茎で縛って固定!

 その後は、40℃から50℃の間くらいで1日発酵させる!

 こたつとかがいいよ!

 なんか糸引いてたら成功!


「まさか、これだけが成功するなんてなぁ……」

「独特の臭いがありますが、私の創り出した豆が更に栄養バランスが良くなり、更に味まで良くなってます!旨味……っていうんでしょうか?いいですねぇ……」

「この世界では作り出せなかったけれど、現実世界だと醤油とか刻んだネギをかけて食べるのが一般的だな。その辺りは、かなり人によってバリエーションあるみたいだけども」

「日本の方はお醤油大好きですね」

「まあな」

「最果様は、どのようにして納豆を食べるのがお好きなのでしょうか?」

「俺は砂糖と醤油」

「はい?砂糖?」

「騙されたと思って食ってみろ。飛ぶぞ?」

「へぇ〜……すごい自信ですね……。ほいっと、砂糖とお醤油生成!かけて、混ぜ混ぜ……おいしい!?おやつみたいです!」

「奇異の目で見られるから、あまり他の人に言うんじゃないぞ」

「はい!」


 大豆じゃないから食感が少し違和感有ったけれど、刻んでから作ってみたらひきわり納豆っぽくなった。

 こっちのほうが上手く作れた気がする。


「納豆菌ってすごい強くて、他の発酵食品を全てダメにするくらいヤバい存在だから、作るの最後にしたんだけど、これだけが成功だもんなぁ。醤油と味噌は自信あったのに……」

「発酵を舐めないでください。素人の犀果様が手を出して良い領域ではなかったのでしょう。現実世界に戻ったら、市販のお醤油とお味噌と納豆を買ってください」

「反論できねぇ……。それはそれとして、買うまでもなく冷蔵庫にあるから勝手に食べてくれ」


 いやぁ、成功したのは結局納豆だけだったけれど、なんだかんだで楽しかったなぁ。

 幾らでも試行錯誤できるってのはいいわ……。

 一歩間違ったら自分はもちろん周辺が吹き飛ぶような状況が多すぎてさ……。


「ところで、なぜ犀果様は、このような菌類を使う作業に詳しかったのですか?」

「ほう、それを聞いてしまうかアルテミス君!語ってしまうぞ!?」

「納豆食べながらなら伺いますよ?」


 ……なんか既にすごい納豆臭いんだけど、大丈夫か?


「クワガタの幼虫を育てるのにオガクズを消毒してキノコの菌糸を繁殖させた物を使うと大きくなるんだけどさ、買ったらびっくりするくらいの値段するから自作しようと調べまくってな。古い圧力鍋もらって、それで製材所で出た広葉樹のオガクズを熱と圧力で消毒して、一番小さい菌糸カップっていう菌糸ビンの赤ちゃんみたいなのから菌糸の元を貰って、地道に育てていくんだ」

「なぜ虫を育てようと思ったのですか?美味しいのですか?」

「いや……クワガタってカッコいいじゃん?」

「カッコよさを全く理解できません。食べもしないのに育てる必要を感じません。納豆美味しいです」

「…………日本のクワガタで一番好きなのは、ノコギリクワガタかなぁ……。ミヤマも捨てがたいけれど、やっぱりノコギリなんだよなぁ……。オオクワももちろん悪くないけど、もう少しアゴが長かったら俺の趣味に合うんだけどなぁ……」

「あ!お醤油を入れる前にかき混ぜておくとネバネバが強くなりますね!これ最初に考えたの私ですから!真似してもいいですよ?」

「…………」


 例えAIであろうと、クワガタの良さについて理解してもらえる確率は相当低いようだ。

 納豆という好き嫌いの分かれるものですら御気に召しているというのに……。


 因みに、納豆菌にやられたと思われる菌糸ビンは、菌糸が育つこともなくなんか納豆みたいな臭いがするようになるし、それ以外にも黒カビにやられたりなんだりで自作菌糸ビンは中々大変だったので、結局発酵させた昆虫マットに戻った事を追記しておく。




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