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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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464:

「確認するけど、この豆を食べていれば人間は健康に暮らせるんだよな?」

「そのとおりです。美味しくはありませんが」

「逆に言えば、この豆には、人間が必要とする成分がすべて入っているわけだ」

「当然ですね。そのうえでものすごく簡単に育ち、病気にもならず、水やりの必要もないミラクルビーンズです。まあ、現実世界では絶対成立しないトンデモ植物なんですけどね」


 そりゃそうだろう。

 こんなもんが現実の日本の空き地とかで自生してたら大変なことになるわ。

 健康食品の原材料のトップにコレ来ちゃうもん。

 大麦若葉なんてめじゃない。


 話を戻そう。


「つまり、この豆の加工次第で、塩も砂糖も作り放題なはずだ!」

「どうでしょう?遠心分離機でも作れるのであれば可能かもしれませんが、この世界の人類にはそれすら無理だと思います」

「まぁまぁ、ものは試しだ。調味料もそうだけど、豆そのものの加工品も色々作ってみようぜ。幸い時間ならたっぷりあるんだし」

「私は構いませんよ。ただ、犀果様こそ平気なのですか?確かにこの世界での犀果様の体は、私と同じように仮で作られたアバターですし、現実世界だとほんの一瞬の出来事ではありますが、もうこの世界に来てから2日が過ぎようとしているんですよ?精神的に参ってしまわれないかと心配なのですが……」

「あ、そういう心配ならいらないぞ。この程度の非日常は慣れっこだ」

「地球って一体どんな艦橋になっているのでしょうか……?」


 でかいクジラとかイカが大暴れする程度の世界だぞ?


「なにはともあれ、とにかくやってみよう!」

「お手伝いします!この世界の技術のみで美味しいものが作れるとしたら、私としてもご協力したいです!」


 そして、俺とアルテミスのが2人でできるもんと始めたこの試みは、思いの外熾烈を極めた。


「茹でてみたけど、茹で汁はほんのり甘い……か?あんまり水溶性って感じではないのかな」

「熱に強く、体内で消化されて初めて吸収できる状態になるように設計されていますからね」

「となると、糖蜜路線は諦める必要があるかな……?」


「絞たら油が取れたな。でも、量は少ないな……」

「これも他の栄養分と一緒で、消化しないといけないのです」

「うーん……植物油が欲しかったがなぁ……」


「塩くらいはなんとか分離できないかなぁ?ものすごくすりつぶせばなんとか……」

「塩分こそ消化してから吸収できるようにしておかないと、豆で土壌に塩害がでるようになりますし……」

「まじかぁ……」


「すごい古い西部劇の映画で、トマトソースか何かで煮たような豆料理を役者がすごい美味そうに食べててさ、それを再現しようかと……」

「美味しいなら食べてみたいです!」

「……思ったんだけど、そもそもトマトが無いっていうね」

「この世界滅ぼしても良いのではないでしょうか?」

「落ち着けよ……」


 とまあ、どれもコレもうまい具合に行かなかったんだ。

 ストレス限界になった俺達は、とうとう人を狂わす魔性の調味料へと手を伸ばした。


「こうなったら!やっぱりあれだろ!」

「あれですか!?」

「ああ!醤油と味噌!」

「時間加速ならお任せください!」

「ついでに麹も頼む!」

「えいっ!」

「いやっふー!」


 結果は……。


「……これは、毒性が強く食用に適しません。こちらは、そもそも発酵した形跡すらありません」

「発酵舐めてたわ……」


 開拓村でも味噌と醤油は自作してたから自信あったんだけどなぁ……。

 ただあの時は、聖羅に「なんかいい具合に発酵させてくれ」って頼めば「わかった」と二つ返事で美味いことやってくれてたのもでかかったんだろうなぁ……。

 いや、でかかったっていうかそれが全てか?

 流石聖羅だ!


「うーん……行っちゃうか?酒!」

「お酒ですか?それはあまりおすすめできませんよ?」

「どうして?」

「この世界の製造技術では、完全な密閉容器というものが作れません。木材も足りないので樽すら満足に揃えられないでしょう」

「え?じゃあここの人たちって普段何を使ってんだ?」

「陶器ですね。焼くための熱は魔術です」

「うへぇ……」

「陶器では、密閉容器が難しいですからね。鍛冶で小型の金属製の容器を作ることは可能かもしれませんが、巨大な金属容器なんて流石に無理でしょう」


 酒までダメとはなぁ……。

 じゃあもうアレしか無いか?


「豆腐!」

「お豆腐!私も好きです!かつおぶしとめんつゆをかけたのがおいしかったです!生姜もいいですね!」

「だろ!?できれば海水から取れるニガリを使いたいんだけれど、ここではニガリを入手するのも難しいだろうし、どこにでも大抵ある石膏で代用しよう!」

「石膏?そんなもの無いと思いますよ?」

「え?」

「火山でもあればあるのかもしれませんが、この世界にその手のものは作っていませんので。石膏が生じるような化学工場もありませんし」

「なん……だと……?」


 その後も何度も失敗し、正直泣きそうになりながらも続けた結果、出来上がったのがこれだったんだ。



「なんで納豆だけ成功するかなぁ……?」

「おいひいれふ!」

「納豆ごはん頬張る女神様ってどうなんだ?」

「私は女神ではありませんので!」


 醤油もないし、塩でいくしかないか……。





感想、評価よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
納豆菌すげーってこと?! 正直、味噌醤油はなろうあるあるだけど、実際には不可能だよな。それこそチート(聖羅みたいなチート)ないと。というか、アルテミスチートでダメとか、万能豆自体がチートフード過ぎるな…
どこの世界でも納豆菌は強しか…
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