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「まず……この世界のあの娘たちと、アタシが知ってるゲームのあの娘たちのは、あくまで別の存在ってことを前提に聞いてね?」
「わかってる。そもそも、俺にとってそのゲーム自体が未知のものだから、先入観とか無いんだわ」
「そうだったわね」
大事そうに世界に一つだけのリールをタックルボックスに収めながら、リンゼが話し始める。
この世界の元になったゲームの知識、それは、多用すればどのようなトラブルが起きるかもわからない重大なものだ。
だからこそ、リンゼも重要なことしか教えてこない。
となれば、今こうして俺に教えようとしているということは、教えないといけないと判断した重大なことなんだろう。
そうじゃなければ、俺だって知りたくないもん。
面倒なことになりそうだし。
イカ飯うまい……。
「エリザが3のラスボスだってのは知っていると思うけれど、リリアは3のヒロインなのよ。一番人気のね」
「へぇ」
「一番人気なのに、攻略ルートがないっていう大炎上ネタでも有名だったわ」
「えぇ……?」
なんかヘビーじゃない?
イカ飯うまい……。
「しかも、ヒロインなのに中ボスになるのよ」
「マジか」
「ついでにいうと、ルージュも中ボスなのよね。キャラクター育成がある程度進んだ状態で戦えるラスボスのエリザと違って、出てくるタイミングが早いルージュは相対的に倒す難易度が高くて厄介なのよね」
「リリアさんも?」
「リリアは……倒すのは大変だけれど、一番の問題は可哀想なことでね……」
「可哀想……」
イカ飯うまい……。
「3人の共通点は、人間が原因で親が死んでいる事なの。それで仲良くなって、裏でつながっていたり、協力したり、仲間にならないかって誘われてたりって感じね」
「あぁ、ゲームでも3人は仲良かったんだ?」
「そうよ。だから、あの3人が家に揃った時点で割と驚いたわ」
「だろうな……」
「でもゲームの中と違って、魔王は倒されていないし、ルージュの母親も生きているし、リリアの本当の両親は死んでしまっているけれど、義理の父親は生きている。だから、問題はないと思っていたのよね」
「実際皆仲良くしてたしな」
よく3人で仲良く食べ歩きしてるもんな。
このイカ飯、かなりいい出来だなぁ……。
「じゃあ、あの仮リアさんのほうはなんなんだ?」
「仮リア?……あぁ、コピーリリアのほうね?あの娘は、リリアの攻略ルートがないってことが大炎上した結果、ファンディスクでIFの攻略ルートが作られたのよ。フェアリアーナ皇国、そこで生み出された進化した人類であるリバースヒューマン。そのうちの1人。正式名称は、リリアなのよ?でも本物のリリアと区別するために、プレイヤーたちからはコピーリリアって呼ばれていたわ」
「呼びにくいな……」
「見た目はほぼ一緒で、コピーリリアのほうがちょっと目がキツめってくらいの違いしか無かったわ」
この世界のリリアさんとコピーリリアさんの違いは、まあかなりわかりやすいんだけれど、それを呼び名に反映するとセクハラにも程があるからなぁ……。
「……それがさぁ、なんでああなるんだ?」
「なんでかしらね……」
俺は、視線で彼女を指す。
リンゼも、納得が行っていない顔になる。
「リリア!これも美味しい!」
「本当ですね!理衣さんのイカ飯づくりの腕は素晴らしいです!」
「えへへ……ちょっと自信あるかな?大試くんに食べてもらいたかったから……」
「美味しいなこれは……。だが余もできれば酒が飲みたいな……」
「お酒臭いのやだもん!」
「イカ……あのようなグロテスクな見た目で、このような奥深い旨味があるなんて……」
酔っ払いたちがイカフルコースで盛り上がっている横で、アルコール無しの面々がモリモリと食べ続けている。
何がすごいって、その中の1人がそのコピーリリアさんってことだ。
……つっても、3のラスボスと中ボスだらけなんだから、すごい光景だよなぁ……。
「なぁ、俺はどうするべきだと思う?」
「どうって……ねぇ……」
「この後起こることの予想ってできるか?」
「そうね……。フェアリアーナ皇国は滅んだけれど、その後リバースヒューマンが再興しているはず。コピーリリアがこちらに来ているのが彼らにバレたら、何かしらの行動を起こすかもしれないわね」
「行動?」
「最悪の場合、戦争ってこと」
「……イカ飯うまい」
「そうね……」
理衣謹製のイカ料理を食べながら現実逃避をしつつ、下手に敵対したら国が滅びかねない女の子たちが仲良くしている姿に心癒されたり、遠くでエリアヒールしまくってドヤ顔している聖羅の光を見ながら祭りの時間が過ぎていった。
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