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空から舞い降りる神秘的な輝きを持った少女。
出会った頃のリリアさんと瓜二つのその容姿。
何より、リンゼが何か知っているキャラらしいことから考えて、あんまり望ましくない相手であろうことが予想される。
さっきダイオウホウズキイカをぶち抜いた攻撃、あれはもうリリアさんの妖精ビームにも匹敵する火力を持っているように見えた。
あんなもん空を飛びながら乱射されたら危なすぎる。
なんとか穏便に済ませたいもんだけど、どうしたもんか……?
てか、この状況でもイカ釣りし続けている奴らいっぱいいるんだけど……。
イカもイカであの騒ぎの後なのに釣られるなよ……。
「やっと会えましたね、私のオリジナル」
空に浮かぶもう一人のリリアさん……仮リアさんでいいか。
彼女が妙に通る声で空から語りかけてくる。
オリジナルって事は、コピーか何か?
それともドッペルゲンガーネタ?
「あ……あの!貴方は一体誰なんですか!?どうして私と同じ見た目なんです!?」
「あら?何も知らないんですね、オリジナル。私は、リリア・ニジンスカ。フェアリアーナ皇国第一皇女である貴方の、リバースヒューマンです」
「りばぁす……?」
「どうやら、そこから説明しなければならないようですね……。リバースヒューマンとは、元々のヒューマンという劣等生物を人工知能によって遺伝子から作り変え、再構成することで進化した人類です。全ての面でオリジナルである貴方たちヒューマンよりも優れている、この世界の新たな霊長……といえば理解できますか?」
「……あの……もう少しわかりやすくお願いします……」
「えーと……ですのでね?進化したすごい人間……って思ってくださればそれでいいですもう」
「はぁ……。でも、何故私の姿なのでしょう?」
「それは、私が貴方をモデルにして作られたリバースヒューマンだからです」
「そういえば、先ほどおっしゃっていたふぇあぶる……」
「フェアリアーナ皇国ですか?」
「それです!その第一皇女とかなんとかはどういう?」
「ですから、貴方はフェアリアーナ皇国の第一皇女なんです。といっても、生き残りは貴方だけですが。愚かなかの国の者たちは、自分たちを進化させようとリバースヒューマンを研究していました。しかし、初期ロットのリバースヒューマンによって、頭の中身まで進化させることは不可能と判断されてしまい、結局すべての個体が処分されたらしいですよ。ですが、最近になって妖精などという不確かな力を過剰に使う存在が居ることが判明し、調査した結果、貴方が生き残っていることが判明したのです。そのため、オリジナルである貴方を消去するために私がやって来た、と、そう言う事ですよ。私たち進化した人類がいる以上、元になった貴方たちなんて存在しない方が世界の為でしょう?」
「あの……私としては、それは困るのですが……皇女というのもよくわかりませんし……」
「やはり劣った理解力ですね?私の方が貴方より優れている。だから貴方は存在するべきではない。それだけです」
優しく優しく説明してくれる仮リアさん。
リリアさんをモデルにして作られたって言うから、割と正直な性格しているらしい。
彼女の言い分は、自分の方が全ての面で優れているんだから、元になった奴は消えるべきだって事か。
進化って、必ずしも優れた個体が生き残るってもんでもないんじゃないかと思うんだけれど、それを言った所でどうにかなるわけでもないかもしれん。
さて、そろそろ先制攻撃で叩き落すべきかなぁ……。
「でもお前!リリアよりおっぱい小さい!」
俺が実力行使を検討し始めたその時、この状況でもイカ焼きをモグモグ食べていたシオリが叫んだ。
「あのなシオリ、そういう身体的特徴を相手にズバッと指摘すると可哀想だから……」
「でも!間違ってる人の間違ってることをそのままにするのは可哀想だと思う!」
「それはまあその通りなんだけれど、おっぱいの大きさは非常にデリケートな話題でだな……」
界隈によっては戦争になる。
「……訂正しなさいそこの少女、私の何がオリジナルより小さいと言ったのですか?」
「おっぱい!」
「……私のおっぱいは小さくありません。オリジナルより大きいはずです。何故なら私の方が全ての面で優れているのですから」
「あ……あの、シオリさん?あまりおっぱいおっぱい言うのは止めて頂けると……」
「でもおっぱいはリリアの方が大きい!」
「そんなわけが……」
「ほら!」
「あんっ!?」
隣で困惑していたリリアさんのおっぱいを鷲掴みにするシオリ。
思わずちょっとアレな声を出してしまうリリアさん。
驚愕の表情になる仮リアさん。
「ば……バカな……!?なんですかそのおっぱいは!?」
「リリアおっきい!大試のうちにきてからすごく大きくなったって言ってた!」
「ちょ……ちょっとシオリさん!?変な所を掴まないで下さ……んっ」
「おかしい……これはおかしいです!私の方が全ての面で優れているはず!だから私たちリバースヒューマンこそこの世界の新たな霊長であるはずなのに、少なくともおっぱいの面で私は負けている……!?」
「貴方も真面目な顔で何を言っているんですか!?」
本当に何の話をしているんだ?
もうリンゼと王様以外イカ釣り再開してんじゃん……。
何かの出しものかなにかだと思われてるぞ……。
「リリア!大試と暮らすようになって色んなご飯食べるようになったらおっぱい大きくなったって言ってた!」
「それはまあ……大試さんの作るお料理は美味しいですし、王都で買える食事も、京都には無かったものばかりで食も進みますから……」
「成程……それが進化の秘訣ですか……」
「進化とかでは無いんですけれど……?」
そして1時間後。
「よぉ姉ちゃん!さっきのアレ、カッコよかったぞ!これ食ってくれ!」
「すごかったねぇピカって!さぁさ、イカ焼きをお食べ!」
「えぇ、ありがとうございます」
そこには、リリアさんとシオリの隣で、黙々と差し入れされた屋台の食べ物を食べる仮リアさんの姿が。
「ねぇ大試、アンタ、あの娘がどういう存在か知らないのよね?」
「リンゼ、少なくとも俺は今も何もわからず困惑している状態だ」
「……この大会の後、話すわよ、色々と」
そうしよう。
今はイカを釣る
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