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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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445/610

445:

 落ちていく。


 落ちていく。


 ここはどこだ?


 俺はどうなった?


 別に記憶が混濁しているとか、そういうわけではない。

 ただ、自分が今どこかへ落ちていっているということしかわからないだけだ。

 景色は、とにかく真っ暗。

 その中に、キラキラとしたものが見えるような気もするけれど、それを見ている自分の身体が実在しているのかがあやふやというか……。

 現実感がない。

 これは、本当に俺が今体験していることなのか?


 突然、光の中にいた。

 ここに向かって落ちてきたんだという不思議な確信があるけれど、なんでそんな事がわかるのかという部分が全くわからない。

 体の境界線は、未だ曖昧なまま。

 幽体離脱をするとこんな感じなんじゃないかな?なんて呑気なことを考えつつも、同時に、それってヤバいのでは?なんて危機感も持っている。

 不思議だなぁ?

 なんなんだこれ?


「おや、少年が落ちてきた」


 俺しか存在しないと思っていた所に突然声をかけられたせいで驚いてしまった。

 あれ?驚いたら何したら良いんだっけ?

 飛び上がるとか?

 わからない。


「少年、もっと自分を意識しなさい。そのままでは、自己を失うよ?」


 優しい声だ。

 中性的にも聞こえるけれど、多分男だろう。

 イケメンっぽい声な気がする。

 じゃあ敵か?

 まあいいか。


「ふむ、少しだけ自分を取り戻したようだね?その調子だ。自分が自分である事を思い出しなさい」


 うるせぇなイケメンが!

 こちとら奇妙奇天烈な人形によって変な穴にぶち込まれてキレてんだよ!


「なんて早さで自己を確立するんだ……。素晴らしい才能だね。弟子に欲しいくらいだよ」

「うっさいイケメン声!それよりちょっとあの人形ぶん殴るからちょっとまってくれ!話はそれからだ!」

「人形?もしかしてそれは、僕の本体かな?」


 体の感覚が戻ってきた!


 あれ?眼の前に誰かがいる?

 平安貴族っぽい格好のイケメン……イケメンかぁ……。

 しかもロン毛じゃん……。

 カスが……!


「えーと、どちら様ですか?」

「分体である僕とは初対面かもしれないけれど、本体とは会っているんだろう?」

「分体?本体?何のことですか?」

「では、自己紹介をしておこうか」


 そう言ってイケメンは、咳払いをしてから俺に向き直った。


「僕は、安倍晴明。その分体さ」

「信じねぇぞ!」

「そう言われてもね……」


 あの悪霊がとりついたマネキンみたいなやつのどこにこのイケメン要素があるというんだ!?

 いや、無い!


「僕は、本体に作られた精神生命体のようなものだよ。本体の元の姿に近い見た目になっている。もっとも、本体は寿命を伸ばすために人の身を捨てたようだけれどね」

「……まあ、アンタが何者でもいいや。問題は、何故俺がブラックホールの中に叩き込まれたのかだ。何をしたら良いのかもわからないというのに」

「ふむ……。推察するに、このブラックホールが暴走一歩手前なのではないかな?その対処のために外は大騒ぎなのでは?」

「そうだ。かなり切羽詰まった状態らしい」


 詳しくはわからないけれど、詳しくわからなくても分かる程度にはヤバげ。


「恐らくキミが、このブラックホールを安定化させるのにちょうどいい要素を持っていたんだろう」

「ちょうどいい要素?」

「うん」


 自称安倍晴明のイケメンが、どこからともかくホワイトボードを取り出した。

 そこに、やけにうまい絵でなにかの図を書いていく。

 平安貴族の格好でホワイトボードとマジックインキを使いこなしているのをみると、脳みそが混乱するな……。


「ブラックホールとは、質量が世の理の限界を超えて増大した物質が、極点へと落ちていく事で発生する。それはわかるか?」

「よくわからない。なんかブラックホールって響きがかっこいいなってことくらい」

「つまり、すごく重い塊が、自分の重さに耐えられず、無限に潰れていく現象……と僕は定義している」

「ほへぇ……」


 物理学のお話は苦手だ……。


「しかし、無限を再現しているとしても、初戦は人が作った物。限界はある。何かしらの燃料を投下し続けないと、ブラックホールとて消えてしまう。燃料を追加することを怠る……例えば、供給する仕組みが壊れてしまった場合も含むけれど、その場合ブラックホールの安定性がゆらぎ、最悪の場合縮退炉ごと消し飛ぶ。それを防ぎたければ、燃料となる質量を再投下しなければならない」

「燃料って何?」

「極論、重ければ何でも良いんだ。鉄がおすすめかな?それも、押しつぶされたものがね。だけれど……」

「だけれど?」

「いやぁ、これを説明するのは恥ずかしいなぁ……」

「今は、どんな情報でも欲しい。何か考えがあるなら教えてくれ」


 イケメンの前で正座になる俺。

 これで教えてもらえないなら、土下座もじさない。

 早く帰りたいもん実家に!

 紅羽といっしょにさ!


「じゃあ、教えてあげよう。この人造のブラックホールが何によって出来上がったのか」

「人造なんだやっぱり……」

「少年、キミは、人類が作り出したものの中で最も重い物ってなんだと思う?」

「え?金?」

「確かに金も重いね。でも、それは今回の答えではない」


 じゃあなんだって言うんだろう?

 一番重い物質って金だよな?


「そもそも、重ささえ稼げるのであれば、それは何でも良かったんだ。それでも、僕はこれが一番重いと思っている」

「何なんですか?金よりも重いものって」

「それはね少年……」



「愛だよ」

「重いってそういう意味なのかなぁ……?」





感想、評価よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
愛かな?と思ってたら愛だった 愛ってなんだ?
水城さんも星羅も重そうだもんねぇ
ヤンデレで人造ブラックホール造れちゃうのか。
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