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間違って消しちゃいました……。
んふぇぇん……。
「あんばぁ……」(いやはやなんと……)
胸に天使を抱きながら、やってきました会長の実家。
相変わらずでっけー神社だなぁ。
(本当にすぐ着くのだな)
(余裕ですよ。最近は、各地のテレポートゲートが再稼働してくれたおかげでエネルギー効率が上がったらしくて、予約しなくてもすぐに飛べるようになったんです。まあ、1回飛ぶとエネルギー使い果たしちゃうんで、そこから再チャージに少し時間かかるみたいですけど)
(よくわからんが、すごいな……)
大丈夫だぞ紅羽。
俺も詳しいことは何もわからん。
アイがそう言っていただけ。
『やはり犀果様にテレポートゲートを利用して頂けると、私としても嬉しいです。テレポートゲートたるもの、近場ばかりではなく、たまにはこうして長距離を移動していただきたいですから』
「助かるよアイ、ところで、そっちは堪能してるか?」
『はい、犀果様が不在ということで、皆さんでパジャマパーティーが白熱しております』
「白熱するパジャマパーティーってなんだ?」
『現在は、カートですね。おっと、只今私がコースアウトしました。トゲトゲの甲羅を放ってきたファム様を叩き潰そうと思います』
「あーそういう……。じゃあまた後で」
『良い旅を』
楽しんでいるようで何より。
(このすまぁとふぉんというのも相変わらずすごい……。本当に、私が生きていた時代とは何もかも変わってしまったようだ)
(いやいや、今だって生きてるでしょうよ。今を生きるエンジェルですよ?)
(お前は恥ずかしい言い方しかできんのか!)
だって、こんなにぷにぷにで可愛いんだもん。
(それに、ここはそこまで変わってないでしょ)
(……おぉ……これは……)
大魔神てふ子が展示されている拝殿。
大昔、てふ子様が生きていた頃から維持されているこの場所は、去年てふ子様が大魔神てふ子を起動させたときにも確認できたように、ちゃんと今も生きているシステムなんだ。
すごいよなぁ……。
流石ファンタジー……。
一体誰が作って、どのようにその機能を維持しているんだろう?
(紅羽、大魔神てふ子って誰が作ったんだ?自作ってわけじゃないんだろ?)
(ん?後世には伝わっとらんのか?)
(いや、俺田舎の出身で、歴史あんまり知らんから)
(そういえば、小僧の出身はあの人外魔境であったな……)
そうですよ?
貴方が今すくすくと育っている場所ですよ?
あんな所で赤子がすくすく育てる状況の以上さに気がついたかい?
(アレは、帝からの要請で作られたのだ。怪異が増え、疫病まで幾度も発生するこの国を神の力で鎮めようと考えたらしくてな。当時最も力ある者とされていた私を参考に作られたのだ。だから、ここに設置されたたのだろう。作者に関しては、帝側から教えられていないからわからんな)
(へぇ……)
(もっとも、結局本物の神相手には惨敗してしまったがな)
ありゃしょうがない。
次元が違ったし。
っていっても、そう言っていられるのは、相手が本気でこちらをどうこうするつもりがなかったからでしかないんだけどさ。
厄介だよな……。
(それで、どこから入っていけるんでしたっけ?)
(首の後ろ、付け根の辺りだな。なんとか行けそうか?)
(大丈夫です)
周囲に俺達を見ている人は……いないな!
では、ここをこう踏み台にして、ここをこうよじ登って……。
(……まさか、ここまでこっそりと、力任せに登り切るとはやるのう小僧……)
(でしょう?妹とためならお兄ちゃんはわりと何でもできるぞ)
(すごいな兄妹とは……)
ちょっと引き気味の乳飲み子といっしょに立つ大魔神てふ子の首元。
辺りを見回すと、確かに開きそうなハッチのようなものが見えた。
(ここか?)
(じゃな。私の手をそこにつけてくれ)
(了解。ちっちゃなお手々……かっわいい……)
(……真面目にやれ……)
その天使の右手が触れると、驚くほど軽やかにあっけなくそのハッチは開いた。
本当にこれ、大昔の技術で作られたもんなんだろうか?
現代の油圧式のハッチとかよりヌルっと開いたんだけれど……。
まあいいや。
開いたならそれで良いことにしよう。
(入るぞ。なにか様子がおかしい場所があったりしたら教えてくれ。俺は、正常な動作をしている状態の大魔神てふ子様の中には、操縦席みたいな所しか入ったことないから、問題が起きている場所があってもわからないかもしれないし)
(承知した。では、ゆくぞ!)
「だぁぶぅ!」と可愛い声といっしょにその小さな右腕を上に振り上げる紅羽。
なんて勇ましい姿なんだ……。
今すぐにでも新幹線並みのスピードで走り回ってやりたいくらいの先導効果……。
……本当にやったら泣くかな?
見てみたい……でも泣かせたくない……可哀想だし……。
(ふぅむ……私の昔の記憶との差も特になさそうに見えるのう。少なくともこの辺りは特に問題は起きていないようだ……)
ぐねぐねと細い通路をあるき続ける。
いくらでかい像の中とはいえ、ここまで通路が長いのは、やっぱり空間を捻じ曲げて押し広げているのだろうか。
そのすごい技術に感心しながらも引き続き進んでいると、突然目の前に扉が出てきた。
いや、違うな。
これは……襖?
(なんだこれ?)
(通路の途中にたまにあるんじゃ。この中は、休憩スペースになっとる)
(休憩スペース?)
(入ると、何故かどこからともなくお茶と茶菓子が出てくる変な部屋でな)
(怪奇現象じゃないですか)
そう言いつつも入る。
だって、見たいし。
数秒後、俺は少しだけその興味に任せた行動を後悔した。
なぜなら、中には不気味な存在がいたから。
多分、普通の赤ん坊ならギャンなきしていたであろうレベルでキモい。
「おんやぁ?ここで会うとぅは、おもわなかったのであぁる!」
具体的に言うと、呪いの安倍晴明君人形だった。
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