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「よーし、ミルクの準備ができたぞー紅羽ぁ」
「……だぁぶ」(……小僧)
「あれぇ?おかしいなぁ。お腹空いてないのか?イヤイヤ期ってやつか?」
「だぁぶ!」(小僧!)
「だめでちゅよ~?好き嫌いしてたら、大きなてふ子様になれまちぇんよ~?」
「あぶぶば!だぶぶぶ!」(聞こえんふりをするな!絶対聞こえているであろう!)
長期休みですからね。
帰りますよね、実家。
どうも大試です。
いやぁ……妹って、いいもんですね!
生後既に5カ月程が経過して、紅羽の首もしっかりすわり、哺乳瓶での食事も非常にさせやすくなりました。
はぁ……かわよ……。
(…………で、どうしました?)
(いきなりまともに返されると驚くぞ)
だってしょうがないじゃない。
王都にいる間、母さんからメッセで送られてくる紅羽の写真が1日100枚くらいあったけれど、どんどん大きくなっていく妹を直接見れないという死ぬほどの苦痛を味わっていたんだもん。
今日一日くらい構い倒したいだろ!
(まずだが、そのでちゅね言葉をやめよ。私はこう見えて、武将だぞ?)
(知ってますよ。どこからどう見てもぷにぷにで可愛い最強の武将です)
(……まあ、もうその辺りは多少諦めている。小僧には、一つ頼みがあったのだ)
(すりおろしたリンゴでも用意しましょうか?)
(私の食事から離れよ!)
バナナとかモモ缶の方が良かったかな?
(……もう付き合わんぞ。それより、私の大魔神てふ子の様子を見てきてもらえんか?どうにも最近信号が途切れ途切れなのだ)
(信号?)
(大魔神てふ子は、私の魂と紐づけられた武神像。私以外は、誰も操作ができなくなる代わりに、いつでもどこでも繋がれるようになっているのだ。にも拘らず、最近は私からの応答に答えんことも増えてきた。恐らく、長年整備されなかったせいで、内部装置に不具合が出てきているのではないかと考えておる)
あぁ……。
そりゃ作られてから何百年も経ってるんだから、ガタも来るよな。
どういう技術で作られてんのかまったくわからんが!
(どう様子を見たらいいんですか?俺、ガチの機械いじりなんてそこまでやっていませんし、あんな金属像の中身を精査するような技術もありませんよ?)
(問題ない。大魔神てふ子には、整備用の入り口がつくられている。私が直接赴けば、自動的に開くであろう。そこに入ってしまえば、私でも調子を確認できる)
(へぇ……。ってか、てふ子様しか開けない入口から入らないと整備できないからほっとかれすぎて、アレが動き回る代物だって事すらみんな知らなったんじゃ?)
(う……うむ……。私としても、もう少し何とかしてから死ぬつもりだったのでな……)
パスワードが分からなくなった時に個人確認するために必要な秘密の問題の答えを後から設定しておこうと思ったのに、その前に死んだようなもんか。
まあ、動き回るデタラメなサイズの像が、未だに脚2本で立っているだけでも、整備の人たちが代々しっかり管理していた事の証なんだろうな。
(あれ?確認したいんだけどさ)
(なんだ?)
(もしかして紅羽も一緒に行ってくれるのか?)
(そういっているであろう?)
(それってつまり……可愛い妹とお出かけできるってこと?)
(いや、まあ……私と出かけることにはなるが……)
「父さん!母さん!ちょっと紅羽と散歩行ってくる!」
「クマに気をつけるのよー!」
「大試だけズルいぞ!父さんも!」
「父さんはダメ。俺と紅羽2人きりで行くから」
「悲しいな……」
(よし、準備出来たぞ紅羽)
(早いな……)
(ったりめーよ!妹とお出かけだぞ!?兄なら誰だってこのくらいの反応速度になるって!)
(そうか……?)
ジト目の妹の視線に微笑みを返しながら、転送装置へと向かった。
(小僧、そもそもお前はどうやって王都とここを行き来している?母上のように、空を飛んでいるのか?)
(いや違うぞ。転移でだな)
(転移?それは、人間に使える領域の話なのか?)
(そう言う機械があるんですよ)
(俄かには信じ難いが……)
(今まさにそこに向かっているので少々お待ちください)
(う……うむ……)
そして、上手い具合に隠された岩石製出入口を開けると……。
(なんだこれは!?このような魔の森の中にポツンと人家が!?)
(ここの奥に転送紋があるんですよ。それを使えば、大魔神てふ子様が保存されている所まで一瞬です)
(そうなのか!?技術というものは、本当にあっという間に進歩するのだな……)
太古の技術だけどな。
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