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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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423/608

423:

「ボルケーノ!!」


 開戦とほぼ同時に火柱をぶっぱなした俺。

 それ以降、ボコスカ剣から色々だして、近寄ってくる相手を殲滅している。


 っと、危ない危ない!

 全員倒しちゃダメなんだった!


 俺は、砦の入り口に陣取っていたけれど、誘い出されたかのように見せかけながらその場を離れる。

 それをチャンスと見た数人が入口に入って行って、直後……。


「「「ファイアーボール!!」」」

「「「ぎゃああああああ!!!」」」


 砦内からの爆発音と悲鳴がここまで響く。

 去年は、皆で頑張って練習した籠城作戦をまったく披露できなかった。

 そのため、今年は見せ場を用意させようと有栖と話し合って決めていたんだ。

 そういうわけで、5人に1人くらいの割合で通すことにしている。

 まあ、しっかりとダンジョンに通ってレベル上げをした我がチームメイトたちは、学園の生徒たちの平均を大きく超えて、最低でも50レベルまで上がっている。

 そんな彼女たち相手に正面から突っ込めば、待っているのは瞬殺される未来だ。

 現在まで、全く危なげなく推移していた。


「水野さん、こっちのデータは活用できてる?」

『はい、ガンガン倒していますよ』

「それはよかった。こっちも、突っ込んできた1年生倒しまくってるから」

『構いません。待てと言われているにも拘らず攻め込んだ者は、そうなるという教訓にしてもらいましょう』


 あっちはあっちで上手く行っているようだ。

 いいぞいいぞ!

 ガンガン戦果を稼げ樹里ちゃん!

 誰も文句を言えないくらいの活躍を見せてやれ!

 それでも文句を言ってくるやつが居たら、樹里ちゃんが知らない誰かがなんとかしてくれっから!


 え?ズルして戦果を上げていいのかって?

 いいんだよ。

 ズルいっていうのは、戦場では褒め言葉って俺知ってるし。


 それに、樹里ちゃんが活躍すればするほど、自分が活躍する予定(本人の中でだけ)だった奴が暴発してくれるからさ。

 まあ、これから起こるであろう事を樹里ちゃんに教えちゃうとドラマ性が下がっちゃうから、あくまで自主性を重んじていくけれども。


 ピンポンパンポ〜ン


 会場中にスピーカーから気の抜ける音が響く。


『生徒会より連絡します。現在、桜花祭開始より1時間が経過しました。1年生チームの損耗率74%。2〜3年合同チームの損耗率68%です。まだまだ結果はわかりませんよ。1年生チームも最後まで諦めずに戦いましょう』


 ピンポンパンポ〜ン


 運動会みたいなお知らせだったな……。


 しかし、まだまだ相手もこっちも結構残ってるなぁ。

 できれば、互いに20%未満くらいにしたいんだけども。

 相手の生き残りが樹里ちゃんチームと大将の水野ちゃんに7主人公くんだけで、こっちの生き残りが砦の中にいる有栖配下の皆だけっていう状況が理想。

 そこまで行ってくれれば、こっちが敢えて見逃したバカの作戦を利用して、樹里ちゃんを不動のシンデレラにできるんだけどなぁ……。


『大試先輩、最新の若林の場所送っておきますね』


 とうとう大将ちゃんは、俺のことを名前で呼ぶようになった。

 友達登録してからデレるスピードが早い。

 まあ、俺としては構わないけどさ。

 対戦ゲームが下手くそだから、俺とでもいい勝負になるし……。

 あんまりやったことないもんな……対人戦……。

 FPSなら負けないんだけどなぁ……。

 カートで走ったりパーティするのはなぁ……。


 それに引き換え、7主人公のことは、もうなんかどうでもいいって思ってそう。


「助かる。ここか……ほい、雷切」

『あ、下がっていきましたね。時間稼ぎでもしました?』

「眼の前に雷落としてやった」

『流石ですね大試先輩。自分が雷打たれたらほぼ毎回コースアウトして最下位になるのに』

「その後俺が出したトゲトゲの甲羅で毎回すぐ最下位になるやつに言われたくねーな……」

『じゃあ今日もこれが終わったらやりますか?』

「やらねぇよ……桜花祭の後は色々忙しいだろ……」

『えぇ……楽しみにしていたんですけれど……』

「むしろそっちは大将なんだから、打ち上げだの何だのあるだろ多分?」

『……そんな話、でてるんですかね?少なくとも私は聞いてないです……』

「……そうか」


 よし、集中しよう。



 そこから更に1時間。

 残っているのは慎重な奴ばかりになってきたらしく、両軍の損耗ペースは下がったけれど、それでも互いに残っているのが全体の20%を下回った。

 いやぁ、頑張ったよ俺!

 有栖のことをネットであーだこーだ言ってた奴らを生贄に捧げ続けているから、こっちの戦力がものすごく頼りなかったもんで、仕方なく俺が頑張ってキル数稼いだわけだ。

 人数が少なくなってきたから、砦の守りはチームメイトに任せ、俺が会場内を走り回って1年生達を倒していったんだ。

 樹里ちゃんの部隊も、ゲームのネームドキャラたちが集まったドリームチームらしく、いいペースで狩れているらしい。

 ただ、お互いそろそろ残っているのがそういう狩りを行っている者か、もしくは拠点を防衛している者に限定されてきているため、おそらく両軍とも決戦のタイミングを見計らっていることだろう。


 傍からみれば、の話だけれど。


「有栖、そろそろだと思うけれど、安全な場所にちゃんといるな?」

『はい!言われた通り、本拠点から出ていません!』

「よし!水野ちゃんは、樹里ちゃんへの指示出し準備できた?」

『問題ありません。ちゃんと友情を深め合っていますから、阿吽の呼吸で攻めてみせますよ』

「……了解」


 多少不安は残るけれど、まあいいか……。


 ドオオオオオオン!!!!


 俺達がこっそりと密談し終えたその時、轟音とともに白い煙が吹き上がった。

 爆心地は、試技バッジの動作を管理する魔導具が設置されている部屋だ。

 たまたま周りには誰も居なかったので、幸い被害は試技バッジの効果が切れるだけで済んだ……って事だ。


 え?なんでそんな事をこのタイミングで知っているかって?

 だって、この計画はあるドイツ人が考案し、7主人公くんが自分が最初の瞬殺作戦を失敗したときのために保険として試技バッジの魔導具に爆弾を仕掛け、それをアイと俺が弄って被害が最小限になるように改造して、誰もその場所に近寄れないように公安のおっさんだちが誘導してくれたおかげで成立したんだ。

 両軍の残り人数が20%を切った段階で爆弾が起動し、そこから1分で爆発するんだ。

 適度な威力でな!


 そして、予定通り桜花祭会場中に警報が鳴り響く。


『桜花祭参加者の皆さんにおしらせします。魔導具の破損により、試技バッジが機能を停止しました。戦闘を中断して下さい。戦闘を中断して下さい。試技バッジの効力が無い以上、本気で戦えば命の危険があります。速やかに戦闘を止め、各陣営の砦へとお戻り下さい』


 その警告を受けて、砦へと俺は戻った。


『大試先輩、若林が予測通りそちらの砦へと動き始めました。それと、樹里さんへの指示も出しましたよ』

「了解。水野ちゃんは、自分の砦に戻ってきた人たちのフォローをしてくれ」

『わかりました。作戦がうまくいくことを願っています』

「おれもだ」


 これさえ成功すれば、まあまあヒロイックな演出ができるんだよなぁ。


 砦へと戻った俺は、玄関の中に陣取る。

 さぁ、万が一のときに助太刀に入る準備はできたぞ。

 あとは……。


 俺が考えをまとめていると、視界の中にイケメンが映り込んできた。

 手には、安っぽい剣を持っている

 よしよし……この状況で武器を抜刀しながら王女様がいる場所に走ってくるとか、中々の自殺行為なんじゃないかって思うんだけれど、そんな俺のツッコミを他所に自信満々で駆けてくる7主人公。

 爆弾をしかけたのも彼と彼のいう『皆』の一味なので、もう言い訳のしようもないだろうになぁ……。


 でも、いいの!

 だって、ヒロイン様が間に合ったから!


 キイイイイイン


 突如、7主人公が持っていた剣が弾き返される。

 それをやったのは、手にどこか見覚えのある打刀を持ったこれから王太子妃になるあの娘。

 安い武器しか持ってなかったから、貸してあげたんだよね。


「姉さん!?なんで邪魔をするんだ!今が最大の好機なのに!」

「黙りなさい!竜輝、貴方は自分が何をしているのかわかっているのですか!?」

「当然だ!今なら、砦の中にさえ入れば、爆弾であの王女を吹き飛ばせるんだ!」

「なんて愚かな事を!」

「俺を馬鹿にするな!俺は、この国を皆が幸せになれるように変えてみせるんだ!」

「……もう、話す価値もありませんね」


 樹里ちゃんの纏う空気が変わる。

 馬鹿でどうしようもないし、好感も完全になくなってしまった弟という括りであった7主人公を完全な敵と見做したんだろう。

 いいぞ!それでこそこの状況を演出した甲斐がある!

 命がけの状況で、王族を守るために自分の肉親すら叩きのめす!

 さぁ……適度に熱い戦いをして観客にハラハラとドキドキを提供してから、バシっと制圧するなり殺すなりしてくれ!


 そんな俺の願い虚しく、数秒後には、7主人公くんの剣が賽の目状に切り刻まれ、観客が盛り上がる暇すら無く勝敗が決していた。


 少し遅れて、観客席の方から歓声が響いてくる。

 まあ、演出的にはちょっと物足りなかったかもだけれど、十分強さと王族への敬意はアピールできただろう。


「ぎゃああああああ!?!!」


 なんて、俺が一人で喜んでいたら、悲鳴が聞こえてきた。

 そちらを見ると、どうやら一瞬遅れて腕を賽の目状に切られた7主人公がいた。

 ……これ、映像をR−18Gとかにしなくて大丈夫かな……?

 とりあえず、悲鳴はもっと生々しかったけれど、ぎゃああに差し替えておきました。




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