419:
むっすー!
と言った表情でむくれている美女が隣にいる。
誰かって?
ソフィアさんだよ。
「機嫌直してくださいよ」
「ダイヤ付きの腕時計にワシを封印できるようになったからと、最近ワシを蔑ろにしすぎじゃろ!」
「そんな四六時中一緒に居なくたっていいじゃないですか……」
「嫌じゃ!毎日おはようからおやすみまで隣に居たほうがヒロインっぽいじゃろ!」
「何のヒロインですか……」
「もちろんラブコメのじゃ!ポロリもあるんじゃ!」
リンゼパパから借りパク状態の腕時計に最近よく入ってもらっているソフィアさん。
その事が不愉快らしい。
でもさぁ……、流石にまだまだチェリーな青少年が、絶世の美女という言葉ですらまだ足りないほどのお姉さん(実年齢については触れないでおく)と毎日毎日一緒にいるのはまずいと思うんだよ。
朝起きるたびに、隣にそんなお姉さんがいてみろ。
理性がいつ消し飛ぶかわかったもんじゃない。
それどころか、そんな状態が1日中続くんだぞ?
ヤバいって。
これで俺に婚約者がいなかったら、もう大喜びで受け入れているであろうそんな幸運。
だけど!俺には婚約者がいるし!である以上、婚約者たちを裏切る事はできん!
しかも、金持さんに関しては、保留とは言え、場合によっては婚約者になりかねないわけだし……。
……あ、ソフィアさんと婚約することになったらどうしよう……?
流石にそんな何人も何人もは俺の倫理的にアレなんだけれど……。
本人はもうノリノリで応じてくれそうなのが更に怖い……。
頑張れ……!負けるな!相手はちょっと綺麗で優しくてナイスバディで包容力があって料理も得意なだけのお姉さんだぞ!
「やっぱりまだしばらくは定期的に腕時計に入って下さい……」
「ぐ!ここまで抗議してもダメじゃとは!これはもうおっぱい揉ませてるところを写真にでも撮って脅すしか無いかもしれんの!」
「勘弁してくださいよ……。それより、竜騎ってやつが出てきたんで、尾行開始しますよ」
「む?なんじゃ、もう出てきてしまうんじゃな……。もう少しじゃれ合いをしたいところだったんじゃが、致し方ないの」
俺達2人は、学園の屋根の上にいる。
そこから、現在の懸念材料筆頭である7の主人公を監視中だ。
調子こいて独立愚連隊的なものを作って桜花祭に参戦するつもりみたいだけれど、正直何したところでアイツに勝ち目なんて無いと思う。
それでも、周りを巻き込んで取り返しのつかない自爆をしそうな嫌な予感もするため、仕方なくこうしているわけだ。
ただ……なぁ……。
「アイツ、本当に俺達に勝つつもりあるんですかね?」
「さぁのう……?ワシ、あの小僧が放課後に何かしらの訓練をしている所全く見ていないんじゃが」
「自分についてきた仲間数人で少し作戦会議しただけで、それ以降1回も集まっても居なければ、現地に下見に行くこともしてないですよね」
ここ数日見ている限り、戦力としてはまったく怖くない。
問題は、コイツが『皆』と呼んでいたインターネット上の相手のうちの一人が、どうも外国からアクセスているようなんだ。
アイの解析によると、ヨーロッパ、ドイツから衛星通信を辿って来ているんだそうだ。
前世の世界と違って、この世界では海底ケーブルなんてものは存在しない。
んなもん敷設しても、速攻破壊されてしまうから。
しかし、頑張って魔物を排除しきっておけば、人工衛星を打ち上げることはできる。
できる国や組織は限られているけれど、それでもなんとか地球全体でネットワークを形成できている。
それは良いことなんだと思うけれど、外国から日本のお姫様を悪く言うような書き込みしたり、似たような考えのバカを煽るような行為を許すつもりはない。
そっちに関しては、桜花祭が終わってからなんとかするとして……。
問題は、煽られたバカだ。
寮の自室に帰宅後、すぐにPCを立ち上げ、ネット上で同じバカどもとこの国の未来について話し合い初めた7主人公くんを窓越しに見る。
「なになに……。『今日もあの王女を睨みつけて舌打ちをしてみた』だと?しょぼいな……」
「やらせるつもりはもちろん無いが、嫌がらせの程度が低いにも程があるじゃろ」
「それに比べて、このドイツからの書き込みはすごいですよ」
「……『暗殺してみたらいいんじゃないか?』じゃと?しかも、事細かにやり方を提案しとるし……」
「まあ、どの方法選んだとしても、有栖だったら余裕で乗り越える程度の方法ばかりなんですよね。有栖の力を知らないのか、失敗させること自体が目的なのか……」
「そして、あの小僧は本当にその暗殺という手段に心惹かれておるようなんじゃよなぁ……」
なーにが、『……最後の手段に出る必要があるのかもしれないな……』だ!
最後の前に、最初にやるべき鍛錬を全く行ってもいないやつのセリフじゃないと思う。
「もうこれ以上見ていても今日は何の収穫も無さそうですし、帰りますか?」
「ダメじゃ!ワシもカレー食べたい!アイスパフェもじゃ!」
「でも、あと1時間位で夕食ですよ?」
「じゃったらアイスパフェだけで我慢するから連れて行っとくれ!そして、アーンって食べさせてほしいんじゃが!やってくれんとワシの機嫌も治らんぞ!?」
「はぁ……じゃあもう、家にあるアイスでアーンしてあげますから、それで手を売ってくれませんか?」
「……いや、流石にアーンはエッチすぎるかもしれんのう……。しかたない!やっぱりハート型のカップル用ストローでジュースを飲むというコースに変更じゃ!」
「コースって……」
因みに、ソフィアさんの機嫌が直ったのは、そこから1時間後。
ガルガル君というアイスをコンビニで買い占めて上げた瞬間だった。
感想、評価よろしくお願いします。
 




