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絶賛ボッチを堪能中の俺です。
予定では、今丁度作戦会議のはずだったんだけれど、俺のやる事が滅茶苦茶すぎて足並みが揃わないし、かといって他のメンバーに合わせてしまうと戦力が落ちるということで、彼女たちとは離れて活動することになりました。
去年のようにレベル上げをする場合には、俺も一緒に活動することになるだろうけれど。
あと、今年も拠点でお泊り会はするらしい。
もちろん男子は俺一人。
今年も肩身が狭い思いをしそうだ……。
そんな俺が今どこへ向かっているかというと、1年生たちの集会に割り当てられた体育館だ。
目的は、ずばりスパイ。
まあ、ぶちゃけるとこれと言ってできる事が無いってのが一番大きいんだけれど、そのままボーっとしているのももったいないのでね。
もっとも、気になることが無いわけでもない。
7の主人公事あのクソイケメンロン毛がいるので、何か変な事やらかしていないかという不安があるんだよな。
それも、あいつ自身だけではなく、周りもとことん碌な目に合わないような事を。
というわけで、やってきました第2体育館!
さてと……こっそり中の様子を窺って……。
『俺についてくる勇気ある者はもういないか!?』
あ、これ絶対面倒なことしてる……。
俺が何をするまでも無く外に響いてきたその声。
あの7の主人公……なんだっけ?竜輝とか言ってたか?アイツの声だなぁ……。
中を覗ける窓があったので、そこからこっそりと見てみると……。
『若林さん……でしたか?今年の1年大将は、入試主席である私、水野彩音です。勝手な事は控えて頂けませんか?』
ステージの上で、(あ、これ絶対ゲームのネームドキャラだわ)って感じの見た目の女の子が、絶対零度の視線であのアホを睨んでいる。
明るめの青く煌く髪の毛に、同じ色の瞳の少女。
もちろん顔もキツ目だけど超美人。
いやぁ……これでデレたら人気出そうですねぇ……。
彼女が今年の大将らしい。
という事は、彼女の指示に従って作戦を立てることになる筈なんだけれど……。
『君の作戦は、守りに偏り過ぎている!それでは勝てるものも勝てない!』
なんてことをほざいている竜輝くん。
なんでステージの上に立っているんだい?
明らかに周りの人たちが迷惑そうな顔してるけれど……。
『相手は、あの人間災害とも噂される犀果大試先輩ですよ?それだけではなく、聖剣姫様もいらっしゃいます。ならば、破壊が不可能とされている本拠点内で籠城する方がまだ勝率も高いでしょう?まだまとまって動くことも不慣れな者たちでは、真正面から突撃した所でまとめて吹き飛ばされるだけですし、少数精鋭の部隊は作ろうと考えていますが、そのメンバーに貴方を入れるつもりはございません。貴方の実力では、完全に足手まといです』
おお!ズバッというなぁあの娘。
元々の気質がそうなのか、それともブチ切れてるから辛辣なのかは知らないけれど……多分両方だな。
『またお得意の貴族贔屓だな!そうやって活躍できる場所を独占しようとでも考えているんだろう!?』
『意味が分かりません。貴方に活躍できる場所があるとでも?』
『あるさ!皆!俺についてくるなら、この桜花祭を速攻で終わらせてやろう!さぁ!勇気を出して手を上げてくれ!この学園内では、身分も関係なく平等に発言権があるんだ!』
『身分に関係なく、私が大将ですが?』
大将ちゃん、もう怒りで血管浮いてんじゃん……。
可哀想……。
その後も竜輝くんががーがーと騒いで、それに同調する者が数人出てきた。
でも、どう見ても主人公パーティに入る様なキャラデザじゃないなぁ……。
全員冴えない男……。
貴族じゃないか、貴族だとしてもかなり位の低い奴らかなぁ?
宝くじの1等くらいの低い確率の一発逆転狙いでもない限り、ここであの主人公君につく価値は無いと思うし、その位どうしようもない追い詰められた状態の奴らなんだろう。
だけど、そんな事はお構いなしに竜輝君はご機嫌だ。
『ありがとう!君たちの勇気に敬意を表すよ!俺達は、お前たち貴族の横暴には屈しない!だから、俺たちは俺達で戦わせてもらう!』
『………………………………そうですか。では、どうぞ?』
大将ちゃん、キレかけだった状態から一転、「あ、ラッキー。勝手にいなくなってくれたわ」って考えてそうな朗らかな表情に……いやまあそれでもキツ目の顔なんだけれど、アレは元々の顔の造りがあんな感じなんだろう。
そうして、体育館から出ていく竜輝一党。
独立勢力としてやっていくんだろうか?
警戒すべき力を持ってそうな奴は……いないなあれ。
歩き方を見るに、訓練すらまともにやっていなさそう。
何が残念って、7の主人公であるはずの竜輝くんがまず素人っぽい動きなのがなぁ……。
『では、気を取り直して作戦会議を続けましょう』
邪魔ものが居なくなって、何事も無かったかのように再開される会議。
つまるところ、いないと困るメンバーは、誰一人竜輝につかなかったって事だろう。
体育館の隅で、くらーい顔で1人座っている樹里ちゃんが見える。
ただでも初日に弟がやらかして肩身がせまいだろうに、今度はこれだ。
可哀想に……。
誰一人近寄ってないじゃん……。
まあでも心配すんな!
もうすぐお前の苗字はガーネットになるし、若林家とは無関係になれっから!
感想、評価よろしくお願いします。




