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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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410:

「大試、おかえり」

「ただいま。いやぁ、面倒なやつがいたもんだな」

「アレが7の主人公ね。名前は、プレイヤーが設定して決まるから、今の名前が何かはわからないけれど」

「……」

「有栖、そこ代わって」

「嫌です!」


 降ろそうとしたけれど、お姫様がしっかりと抱きついているために下ろせなかった。

 ってか、腕は1回放したんだけれど、俺の首を視点にお姫様抱っこの体勢のまま筋力だけで固定されているらしい。

 諦めて手で支え直したわ……。


「それにしても意外ね」

「何がだ?」

「アンタがそこまで貴族の肩を持つなんて思わなかったなと」

「あぁ……。別にそこまで貴族が好きってわけでもないぞ?有栖に嫌な思いさせた奴が貴族嫌いそうだったから、その逆張りしただけだ。仮に逆の立場にたったとしても、アレより長く応酬できたわ」

「一番面倒な奴ね……」


 あの程度で済ましてやったんだから感謝して欲しい。

 アイツの言っていたことは、国によってはそれだけで逮捕からの処刑が行われるレベルの思想だ。

 それをお姫様相手にあんなに観衆がいる中でやらかしたんだ。

 しかも、場所はこの国で最も権威ある学術機関の一つである王立魔法学園で。

 思想汚染とでも判断されたら、いつの間にか姿を見ないなんて事になりかねない。


 単純に、俺が完全に感情に任せて動けば、あの場で血の雨が降るところだったので、口で相手をしたって言う理由もあるけどさ。

 もちろん、言葉のままの意味で。


「それにしても、アイツの言うことに同意してたっていう『皆』ってのが気になるんだよな」

「妄想?」

「聖羅って、大試以外には割と辛辣よね……」

「有栖に怒鳴ってたから」

「そういえばそうよね。アタシも辛辣になっとくわ」


 聖羅たちの態度はともかく、本当に『皆』が妄想ならそれでいい。

 だけど、実際にいたらものっそい面倒だ……。

 皆……つまり複数だ……。

 あの主人公君の他に、最低でも2人は似たような考えをもっている奴がいるかもしれない。

 それが、あのアホな事を言うだけならまだいい。

 だけど、そういう事をやっているうちに、行動っていうのはエスカレートしていくものだ。

 そして後戻りできなくなって、死ぬまでズルズルと変なことになる。

 行き着く先は、土地の不法占拠だの、空港の管制塔へ爆弾仕掛けたりだの。

 変な神様を信仰し始めて、テロ行為に走ったり……。

 自国のお姫様に白昼堂々いきなりどなりにやってきたのもある意味テロみたいなもんか?

 やっぱり殺しておくべきだったか……?


「大試さん」


 俺が中々に血なまぐさいことを考えていると、俺の耳に顔を近づけたお姫様が囁く。

 ちょっとくすぐったい。

 それ以上にドキドキする。


「あの方がどんな行動に出たとしても、私に危害を加えることはできません。私のほうが強いので!」

「……まあ、そうだろうけれど……」

「それでも不安なのであれば、大試さんが守ってくれれば済む話です!」

「四六時中は一緒にいられないしなぁ……」

「いてくれてもいいんですよ?」

「いやいやそれは……」

「……………いて欲しいな……」


 うぐぐ……!!!!


「……よし、落ち着いた」

「落ち着いてしまったんですか?」

「落ち着いた。落ち着いたことにした」


 そうだ。

 俺は落ち着いた。

 紳士だ紳士。


「それより私達、今年も一緒に1組ですよ!」

「あ、そう言えばそれを確認するためにここに集まったんだっけか?あのアホのせいで散々な目にあったが……」


 もう少し議論になれば、まだやってやった感もあったかもしれないけれど、あの感じだとマトモに議論したことないなアレ。

 こっちが転生してからどれだけ酔っ払い共のわけのわからない言い訳を叩き潰して、聖羅といっしょにアルコール除去してきたと思ってんだ?

 経験値が違うんだよ!

 どんなに論破されようと負けを認めず、相手が諦めるか負けを認めるまで話し続けるのがコツだ。

 日本だとそれをやるとものすごく嫌われるけれど、前世の海外だと割とポピュラーな話術らしい。

 真似はするな!

 友達なくすぞ!

 友達殆どいなかったけど!

 家族やそれに等しいくらい絆の深い相手じゃないとマジで刀傷沙汰になりかねない。


 絶対に友だちになりたくない相手とだったらいいけどもさ?


「よく知らんけれど、主人公だっていうんだから、もう少し何か……こう……頼りになるやつなんじゃないかと期待してたんだけどなぁ……」

「魔王も魔族も攻めてこないし、それ以外の敵も出てきていない。教会の本部まで潰した。ついこの間、大量のワルモノを捕まえた。そんな時に、有栖が悪いって言い出す人なんて味方にできない。大試がああしてなかったら、私がパンチしてた」

「アタシが魔術で黙らせてもよかったけれどね」

「いいえ!これでいいんです!これがいいです!」

「「そろそろ下りたら?」」

「まだ筋肉には余裕があります!」


 何がそんなにいいのか、まだ下りてくれないお姫様を抱えながらこれからのことを考える。

 面倒なことになるだろうなぁという予感はあるけれど、今更だよなという思いもある。


 まあ、なんとかなるさ。

 なんとかならなくても、なんとかする。

 俺は、この腕にかかる重みを手放したくないから。

 ……重いって言葉はヤバいな。


「今、失礼なことを考えませんでしたか?」

「考えてないぞ?」

「考えましたよね?」

「考えてないぞ?」

「嘘をつく時に目を右上に逸らすクセがある事には気がついていますか?」

「え?マジで?」

「マジじゃないです」

「あっ」




感想、評価よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
女は「重い」と言うワードに敏感すぎるんだよね 考えすら読まれるのだよ  実際現実で読まれちゃった☆
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