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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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397:

「私がキミが作る芸能事務所のスポンサーに……ね……」

「頼めませんか?」

「フッ……スポンサーのなり方がイマイチわからないだけだよ。そういうの、周りの人達が全部やってくれていたから」

「あぁ……」


 慈善活動を終えて、自分の家に帰ってきた俺。

 居間に向かうと、ソファーに座りながら、高そうなワインを上品に飲んでいた有名でカッコいいお姉さんに交渉を始めた所だ。


「……ところで、なんでその恰好なんです?」

「これかい?間違って着たら、思いの外着心地が良くてね。勝手に借りているよ」

「いや……良いですけれど……」


 そのかっこいいお姉さんこと、仙崎さんの格好はと言えば、俺が1000GPでパジャマ代わりに買ったスエットで上下を揃えている。

 深夜のドン・○ホーテにでもいそうなその出で立ちで、上品さを醸し出しながらワインを飲んでいるんだ。

 因みに、ツマミはチータラ。

 酒は知らんが、チータラは良いものだ……。


 何はともあれ、新しい会社を立ち上げるとなると、資金面はもちろんのこと信用が必要だ。

 全く新しい会社である以上実績なんてものがあるわけもないので、信用を稼ぐには、信用のある存在の威を借る必要がある。

 そこを王様辺りに頼んだら何とかなんて舐めたこと考えながら帰ってきたところで、ちょうどいい人が目に入ったからオファーしているんだ。


「そもそも、私はそこまでアイドルというものに興味がないんだが」

「そうなんですか?でも、案外仙崎さんもアイドル衣装似合いそうですよね。特に男装系とか」

「大試くんにだけなら際どい衣装を見せることも厭わないんだが?そろそろ毎日三食私に食事を作って、私が不安になる度に『大丈夫だよ』って囁いてくれるサービスを提供する気になったかい?」

「いや、流石にそこまで頻繁には無理ですよ……せめて週に1日くらいにしてください」

「週に1日もやってくれるのかい!?」

「それで開拓村で錬金術師として活動したり、プロダクションのスポンサーになってくれるなら喜んで」


 今だって割とそれに近い状態だし……。


「なるなる!スポンサーかぁ……スポンサーって何だろう?」

「哲学ですか?」

「いや、CMを流すためにテレビ番組のスポンサーになるっていうのなら理屈はわかるんだけれど、芸能プロダクションのスポンサーって何をするのかなとね」

「最初に運営資金を出資してもらって、それを元手に運営していきます。仙崎さんには、大株主になってもらう感じですね。配当金もちゃんと出しますよ」

「はいとうきん?」

「……金出して下さい。お礼もするんで」

「わかりやすい説明だね!いいよ!」


 よし!これでもっとも重要な目的が果たせる!

 そう!社長が正体不明のキグルミ姿でも押し通せる!

 アイドルちゃんの前に流石に素面で出ていく事は難しいし……。

 かといって、話を通すのが大変な後ろ盾を用意したところで、結局無理が出てピーポー君を脱ぎ去る事になるだろう。

 最終的にそれも仕方がないかなとは思うけれど、避けられるならそれに越したことはない。

 例え避けられない未来だとしても、可能な限り先送りしたい。

 婚約者どころか家族でもない相手との人間関係なんて、明日以降にできることは明日以降に回したいのが俺なんだ。

 情けないって?

 だろ?自慢なの。


 ただ、まだ必要なものがある。

 それは、アイドルをアイドルにするための仕事をする社員だ。

 俺は、アドバイスや助力はできても、キグルミを着て大っぴらに仕事の話をする事は難しい。

 ならば、そこを補う必要があるわけで……。


 そして、つい最近、そういう事ができそうな人間と知り合ったばかりだ。

 彼女の手腕は、そこそこ知ることができたし、オファーをしてみるべきだろう。

 見た目も何となく仕事ができそうな感じだったし……。

 主に、メガネだったから。

 もちろん実際の仕事は未経験だろうから、そこら辺はアイたちに頼んでサポートしてもらうつもりだけれど、彼女はとても大切なものを持っていた。

 それは、周りがちょっと引くくらいの熱意だ。

 舞台袖で女性アイドルたちの輝きを見守る彼女の熱い視線は、見てみないふりをしたくなる類のものだったし……。

 きっと、アイドルが好きなんだろう。

 前世でも、女性アイドルのファンになる女性は珍しくなかったと聞いた。

 俺には、その気持を理解することはできないけれど、否定する気はない。

 それだけの熱意を感じさせるあのプレッシャーと同質のものを彼女から感じた。


「さて、明日からまた忙しくなるなぁ……」

「芸能関係は、特に忙しそうなイメージがあるね」

「あ、まずはリクルートなので、まだ芸能関係とはちょっと違うかもです」

「そうなのかい?」

「はい。あと、ついでに業界を腐らせるゴミが大量にあるみたいなので、掃除しておこうかとも思ってるんですけれど、そっちが忙しそうで」

「掃除は、大変だからねぇ……」


 まあ、なんとかなるさ。

 我がプロダクションには、ピーポー君がついているのだから。


「ところで、最近部屋を確認してないんですけれど、ちゃんと掃除してますか?」

「……大人の女にはね、秘密が必要なんだ。私にとってそれは、自室の状況で」

「アイ、掃除にいくぞ。散らかってるもの全部焼却処分だ」

「かしこまりました」

「ええぇ!?」




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ヒャッハー!汚物は焼却だぁぁ!
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