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『いよいよ今大会も残りあと僅か!準決勝戦となりました!ここで改めて選手のご紹介をいたします!』
「「「「「「おおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」
司会のアイドルさんが会場を盛り上げる。
観客の皆さんは、多分アイドルちゃんが何言っても盛り上がるモードになっている。
『先にステージへと上がってきたのは、皆様御存知!今年度この学園内で……いえ!日本中を騒がせたこの方!本戦へのシード参戦という特例を得ながら、その扱いに文句を出させないほどの力を示し、素手での圧勝を繰り返している1年生男子!さい……タイシー……マアアアアスクうううううう!!』
「「「「「「おおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」
何がおおおだ!
変なコスプレしながら見世物にされている俺を見ながら飲むビールは美味いか!?
見えてんだからな観客席!さっきからビアガールが大儲けしてるの!
あ、聖羅たちみっけた。
手振ってる……がんばろっと……。
『続きまして……打ち砕くは淑女の概念!そのドリルは完全な飾りと化し、拳のみですべてをぶち抜くお嬢様!どんな手を使っても勝つことが重要と今大会からは自らの「女」を武器にすることも始めました!「貴族の負けは、市民を苦しませることと同義ですのよ!とにかく勝つ!まずはそこからですわ!」と控室で私に顔を赤くしながら語ってくれました!お呼びしましょう!金持ぃぃぃぃぃ……絢ぁぁぁぁぁ萌ぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!』
「内緒にしてくださいと言ったはずですわ!?」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」
明らかに俺のときより盛り上がってんな。
そして、ステージへと対戦相手の金持さんが上がってくる。
その格好は……あ……は?
「待たせましたわね犀果大試!」
「……あー、うん。着替えたの?」
「流石に上半身がアレでは……その……人としてまずいかと思いまして、上から服を着ただけですわ!」
彼女のバトルスーツは、バニーガールからウサ耳を無くし、その上でトゲトゲをつけたような感じだ。
さっき控室への廊下で俺が指摘したから、少し考えを変えたらしい。
胸が零れそうなセクスィ状態が解消されていた。
……だけど、だけどさぁ……。
「なぁ、それってワザとなのか?」
「はい?何がですの?」
「上に着たそれ、どういう考えがあって選んだんだ?」
「選んだ……といいますか、更衣室にあったのが今日着てきたこれしかありませんでしたので。あの……変ですの?」
「いや……変ではないんだけど……」
こいつ、本気で無自覚にやってんのか?
それとも、やる気でやってんのか?
どうしてタートルネックでタイトめなリブセーターなんだよ!?
確かに胸丸出しになりそうなハラハラ・ドキドキは無くなったよ?
でもさ!違う方面にフェチが振り切れてんじゃん!
むしろ俺はこっちのほうがエッチに感じるわ!
周りは誰も指摘してやらなかったのか!?
女子更衣室にだって誰かは……あ、そういや、本戦に出場している女子でまだ残ってるのみるく先輩だけだわ……。
あの人は、そういう知識があるかどうかもわからないし、そもそも天然入ってるから、指摘してくれる可能性は無さそう……。
「い……言いたいことがあるなら言って下さいまし!」
「言いたいこと……すごく似合ってると思う」
「ふぇ!?!?」
うん、ものすごく似合ってる。
似合ってるが……俺はこれからこの子をプロレスで叩き伏せるわけだ。
大丈夫なのか?
主に絵面的な意味で……。
観客席を見回す。
男性陣は、明らかに興奮し下卑た期待をしている。
いつもなら、俺に対して死ねと念を送るような表情の癖に……。
女性陣は……うわぁ、すっごい白い目……。
ゴミを見るような目というのはこういうのなのかな……。
あ、婚約者たちと目があった。
彼女たちの表情は、それぞれ別々ではあるけれど、「わかっているな?」と語りかけてきている気がする。
何についてわかっているかを聞いているのかは俺にはいまいちわからないが。
だって、俺悪くないもん。
「そ……その……アナタの格好も、私はカッコいいと思いますわよ……?」
「無理に褒めなくていいぞ。俺だって、これが聖羅から貰ったもんじゃなかったらつけてないし」
「別に無理に褒めたわけではありませんわ!もう良いですわよ!」
うへぇ……こんな良い子をプロレス技で死亡判定に持ち込むの……?
しかも、極め技で……?
悪魔じゃん……。
死ねよタイシーマスク……。
『選手両名がステージへとたち、すべての準備が整ったようです!それでは……武闘会準決勝!レディぃぃぃぃぃ……ゴオオオオオオオオオオオ!!』
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」
アイドルちゃんによって試合が開始された。
その瞬間、唸る金持さんの拳。
容赦も躊躇もないその動きは、俺の視線を奪った。
どこの動きに目が奪われたかは秘密だ。
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