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「アックスボンバー!からの……逆エビ!」
「ぎ……ぎぶ……」
「ギブ?ノン!」
2回戦目の相手は、全く見覚えがないやつだった。
本人の口ぶりからすると、俺に宣戦布告に来たやつの中にいたらしいけれど、その他大勢に埋もれるようなやり方でやってもそういうのはだめだぞ?
試合開始から2分で死亡判定を受けていた。
そうして、歓声を受けながら会場を後にして控室に戻っていると、見覚えのある金髪ロールが見える。
なんだっけ?かもちちゃんだっけ?
「初戦に続き2回戦目も見事でしたわ。しかし、次の試合の相手は、この金持絢萌ですわよ!快進撃を続けられるのは今のうちですわね!覚悟なさい!」
「その戦闘用のスーツ、すごいデザインだな」
「これですの?どうかしら!?ヒーローを参考に私がデザインしたのですけれど……」
「胸が大きくてスタイルが良いから様になっているけれど、セクシーすぎて親御さんは気が気じゃないと思う」
「構いませんわ!殿方を少しでも惑わせる効果があるのでしたらそれでいいんですの!勝つために手段はえら……って!話を聞きなさい!」
いや……。
何言われたかよりもその格好のほうが気になるって……。
ウサ耳つけたらお高いバニースーツみたいな感じになってんじゃん……。
ヒーロー物って言ってたけど、これ敵側だろ?
昨今のアニメなら、変な光の線とかで見えない部分出てきかねない破廉恥さだぞ?
本人が美人で金髪ロールだから許されてるんだろうか……?
しかし、考え方自体は、中々に理にかなったものらしい。
対人線において、視線誘導や相手に雑念を産ませるのは、非常に有効な手段ではある。
少しでも相手の思考に負荷をかけて、自分を有利にさせようという考えには俺も賛成だ。
「だけど、流石に破廉恥すぎんか?」
「……き、気にしていませんわ!逆に、そこまで気にするということは!犀果大試!アナタは私の術中にハマっているということですわね!?」
「うん、まあ……そうだな……。ちょっと上着貸してやりたくなる」
「え!?そんなのほぼ彼氏彼女のアレではありませんの!?」
「どうかなぁ……」
机上の空論によって生まれた装備だったのか、本人に改めて指摘してみると、顔が真っ赤になっている。
今まで考えないようにしていた羞恥心が鎌首をもたげてきたのだろう。
とはいえさぁ……歩く度に胸が揺れるのが見えるようなデザインは、学生としてどうかと思っちゃうわけですよ俺としては……。
決して見たくないわけではない。
なんなら正面から凝視したいですが。
あと網タイツもエナメルブーツも好き。
誰だよこれの使用を許可したのは?
会長か?
「し……試合を楽しみにしていなさい!私の美技に見惚れて幸せな気分で敗北させて見せますわ!」
「胸揺れを見ている間に負けていると?大丈夫か?俺にそんなもん見せてお前は冷静でいられるのか?」
「いられ……ます……わ……」
「恥ずかしがってんじゃん」
「うるさいですわ!うるさいですわ!覚えてらっしゃい!私の拳でノックアウトブチかましてみせますわよ!」
そう言って金髪ロールはあるき出した。
向かう先は控室らしく、一緒に歩いていったわけだが。
「どうして同じ方向に歩いてくるんですの!?次に会うのはステージの上な流れにしましたわよね私!?」
「そんな事言われたって、お互い選手なんだから、向かう先は控室だろ……」
「そ……そうですわね……うっ……」
「今更何胸を手で隠してるんだよ……逆に卑猥に感じるからやめてくれ……」
「うるさいですわ!うるさいですわ!」
顔を真赤にして旨を隠しながらバニースーツみたいな服で歩く金髪縦ロールお嬢様ファイター。
どうやら、このスーツで戦い始めたのはこの大会が最初らしい。
まあ、魔獣相手にこのスーツでの視線誘導は大して効果ないだろうから、対人戦用の特別装備なんだろうけれど、女を武器にしすぎだろ。
それを平然と使いこなすには、本人の理性がマトモ過ぎるらしい。
やっぱり上着貸してやるべきだろうか?
対戦相手である俺に対して、完全に相手の本来の狙い通りの効果が得られているわけだが、本人の動きのほうが悪くなっている気がする……。
「なぁ、寒くないか?」
「……考えないようにしていますわ」
「控室にコーヒーメーカーあったから、温かいコーヒーでも淹れるか?」
「……苦いの苦手ですの。砂糖とミルクドバドバいれて下さいまし……」
「わかった」
なんか……守護らねばならない気分になるのは何故だろう……?
次の試合で死亡判定に持ち込まねば成らないわけだが……。
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