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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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386/615

386:

 歓声を受けながらステージを後にする。

 何故か大盛りあがりだけれど、ぶっちゃけまだ本戦とは言え1回戦。

 特に勝った側に何かあるということもなく、そのまま控室の方に移動中だ。


 なぁ運営よ。

 さっきまで仮にも警備していた俺が言うのも何だけれど、こんな怪しいマスクつけた男をこんなに簡単に通して良いのか?

 制服に王家の紋章入っているけれど、マスクマンだぞ?

 何にこやかに通してんだよ?


「犀果大試!」


 おっと、やっと俺を呼び止めるセキュリティがいたか。

 誰だ?

 顔見知りかな?


 あ、さっきステージに植えられたまま死んだ刈り上げメガネくんじゃん。


「どうした?」

「……私は、何故負けた?勝者であるお前に、奇譚のない意見を聞きたい」


 なんと殊勝なことだろう……。

 あんな負け方をしたのに、勝者である俺に敗因を聞きに来るとは……。


「まず最初に、1回試してダメだった単純な攻め方を何度も繰り返すな。それが何かの作戦だというならともかく、通用しない攻め方を何度繰り返したって通用しない。今回は、俺が素手で戦っていたから、お前が何度もチャレンジするチャンスもあったけれど、本来であれば1回目の段階でお前は死んでいる」

「……確かに……。だが、槍で攻める時に、全力でまっすぐ行って突く以外の攻め方があるか?」

「いっぱいあるだろ!正面から行くにしたって、長い槍であれば、上へ振り上げてから振り下ろすようにしながら踏み込むと、それだけで魔力による強化を一切使わなくたって鎧を叩き割れる威力になるし、突くにしたって、1発ですべてを終わらせようとしないで、牽制をお織り交ぜながら戦って、相手が隙を見せた瞬間に強く突くってことを繰り返すのでもいい。方法は任せるけれど、正面から突きに行って全部最小限の動きで躱されているんだから、同じ事繰り返してどうするんだよ?」

「……そうか」

「ただ……」


 悪い点だけ指摘するのも可哀想なので、良かった点も言っておくか。

 せっかく俺に聞きに来たんだしな。


「お前自身の耐久力は凄かったな。正直焦った」

「耐久力?」

「正直もっと早く倒しているつもりだったんだよ俺は。というか、手加減が上手くいかなくてマトモに何度か攻撃が入ったのに立ち上がってきたから、俺は割とビビっていた」

「ふっ……私は、武蔵坊弁慶にあこがれているのだ。攻撃を受けてもびくともせず、大槍で戦い、剣まで使いこなす!」

「でも、今日は剣使いこなす所まで行けなかったじゃん」

「ぐうううう!?」


 そんな効いたか?

 まあ効くか。

 近づかれたらリーチの短い武器に持ち替えるって手段を取ることすらできずに負けたんだからな。


「個人的な意見だけれど……」


 そう前置きしてから、俺はアドバイスをする。

 俺に対して戦い方を聞いてくる貴重なやつには優しくしてやらなくては。


「お前は、その頑丈さを活かして盾を持つべきだと思う」

「盾だと!?守りに徹せとでもいうのか!?」

「いや、縦にトゲトゲでもつけておけば、十分攻撃力もあるだろ?お前の頑丈さは、もう少しリーチが短くて確実性のある武装で活かすべきだと思う」

「ぐ……!」

「盾だって鈍器のように殴りに行く技もあるし、何より周りを守ることもできるぞ」

「まあ、確かにそうかも知れないが……」


 なんだ?

 お気に召さないか?

 じゃあ、2つ目の候補を出すか。


「だったら、もう一つ提案してやろう」

「なんだ!?他にも私に適した武器があるのか!?」

「ああ」


 そうして、優しい笑顔で語りかける。


「プロレスだ」

「プロレスだと!?」

「そうだ。先程お前がボロ負けした戦闘方法だよ」

「ぐうううう!?」


 旨を抑えて反り返る刈り上げメガネ。

 効くなぁ。


「自分の頑丈さを最大限活かして格闘戦を挑む事で、槍による突きを命中させることができなかった時の動作を素早くすることができる。何なら槍すら持たずに最初から格闘戦で蹴りをつけるつもりでもいい。それができる頑丈さをお前は持っていると俺は感じた」

「だからといって、何故プロレスなのだ!?」

「だって、お前はプロレス技に負けたんだぞ?負けた相手の技術を学ぶのは当然では?」

「え?そう……なんだろうか……?」

「そうなんだよ。というわけで、今日からお前はプロレスラーだ」

「私が……プロレスラー……?」

「おめでとう!」


 こうして、今後長きにわたって人気となる『王立魔法学園プロレス部』が誕生する切っ掛けが、こんな誰も見ていない場所で発生した。

 攻撃に関して言うのであれば、実践的な戦闘方法かはともかくとして、魔術を扱う者たちの課題である「近寄られた際の反撃方法及び被攻撃時の受け身の取り方」等を徹底的に教え込まれるこの部活は、魔物との戦いが主たる役目である貴族家の人間たちに大いに人気を博し、男女問わず学生たちが入部していったという。


「って事に未来ではなっているかもしれないぞ?」

「そんなわけがあるか!」

「どうかなぁ?」


 言ってることは割とマトモだと思うんだ。





感想、評価よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
言ってる事はまともでもまともじゃ無いんだよね 奥が深い… 槍術+プロレス技を混ぜてやると合いそうな気がするな 槍で突撃し、抜ける最中にプロレス技を使い槍術へ繋げる的な
こんにちは。 まぁ色んな作品で『懐に潜り込まれた時』の対応策をきちんと用意・訓練してる場合は上手くやり過ごし、してない場合はぼこぼこにされるパターンって結構有りますからね。プロレスするかはともかく、…
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