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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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379:

 学園祭初日。


 開会のあいさつに王様が訪れたり、リンゼんち全面監修の魔導花火とかいう訳の分からない物が撃ち上げられて、空に色々な絵画が描かれたりされた後、俺たちが参加するライブフェスが始まった。

 当初の予定では、俺たちが一番最初に登場して、場を温めた後に、先に参加登録していた2組が順次演奏していくハズだったんだけれど、何故か最初にステージに立ったのは、うちのメイドたちだった。

 しかも、その中の1人は、メイド服を着てはいるけれど、美須々さんだった。

 ってか、センターでマイク持って観客を煽ってた。

「学生のお遊びを見せるつもりはありません。本気で歌います!」

 とかなんとか言った後、本当にプロみたいな良い歌声で絶唱していた。

 前に、昨今の「数うちゃ当たるだろ」的な複数人をグループにまとめるというアイドルの傾向に難色を示していて、「仮にも歌を歌うなら、歌手が自分じゃなきゃこの曲は完成しない!と思わせるくらいのつもりで歌ってほしいです!いくらでも替えが効くようなシステムとしてのアイドルもいいとは思いますが、私的にはナンセンスです!」と言っていたので、それを自分で実演して見せたんだろう。

 ちゃんとダンスもしながらあの声量は凄いと思う。

 ただ、1曲目の『床の下にも50年』って曲名はどうなんだろうか……?

 いい曲だったけれど……。

 人外系メイドたちも全員参加で、ファムまでドラムを叩いていた。


 ところで、なんでうちのメイドたちがステージで歌っていたのか、俺にはまったくわからないんだけれど……。

 だれか説明してくれんのか……?

 なんか、生徒会でこのライブを企画していたメガネにみつあみの女の子が俺に説明したそうに見ている気がしたけれど、ハァハァと息が荒くて、体調が悪そうだったから聞くのはやめておいた。


 そうこうしているうちに、本来ラストを飾るはずのアイドル同好会だかなんだかの女の子が、「ここまで言われては黙っていられません!学園アイドルの本気を見せてやります!」とか言って、順番無視してそのままうちのメイドたちのステージに乱入し、最後は美須々さんとハイタッチして熱い友情を育んでいた。

 観客も謎のパワーに大盛り上がり。

 学園祭の、プロでは無い者たちが行うライブとして見るなら、ここまでレベルの高い演奏や歌唱が展開される事などまずないだろうしそれもさもありなん。

 大体、ステージに立っているのが、全員美女か美少女なんだから、そりゃ盛り上がるわ。


 って思ってたんだけれど、3組目に出てきたバンドは、それまでの流れをぶった切る奴らだった。


 なんていうか……メイクで素顔がさっぱりわからん。

 キスとか閣下って感じの彼らは、ステージ転換が終わって幕が開いた時点で、ステージに死体のように転がっていた。

 そこからグギギギギと擬音が付きそうな具合に、手を使わずに立ち上がってくる演出を行い、平然と曲へと入っていく。

 多分、ステージに金具があって、そこに靴を引っかけて立ち上がっているんだと思うけれど、中々の根性だと思う。

 因みに、歌はおどろおどろしいけれど、普通に上手かった。

 先程まで、少女たちの美声に酔いしれていた観客たちが、全く趣の違うこのグループのノリでどうなる事かと一瞬心配したけれど、案外……と言ったら失礼だけれど、かなりちゃんとしたバンドだったと思う。


 問題はさぁ……、しょっぱなに場を温めるために呼ばれた俺らよ。

 何平然と俺らをトリにしているんだ?

 こちとら急造バンドぞ?

 まあ、正直俺以外のメンバーは、プロにも劣らない位のハイスペックな演奏と歌声をお持ちなので、俺以外に不安要素はあんまり無いんだけれど……。


『続きまして、本日最後の~』


 おっと、とうとう来てしまった……。

 あぁ……嫌だなぁ……。

 俺の婚約者たちを自慢できるこの場を喜ぶ気持ちもあるけれど、俺自身がステージの上に立たないといけないこの恐怖……。

 世のバンドマンたちは、こういうのを何百、何千回と繰り返しているんだろうけれど、平気なんだろうか?

 俺は、こうして家族以外に自分の演奏を見せなければならないと考えただけで腹が痛くなるし、心臓がバクバク言ってるんだけれどなぁ……。


 とにかく、気持ちを抑えて、ステージに付けられた俺の立ち位置の目印を再確認する。

 目を閉じて、平静に……平静に……。

 いやー!緊張するなぁ!


「大丈夫」


 頬に温もりを感じて目を開けると、聖羅が目の前に立って、俺の顔を手で挟んでいた。


「大試は、すごく練習していた。だから成功する。絶対カッコいい」

「……練習もせずに成功してた聖羅の方がカッコいいと思うけどな」

「そんなこと無い。大試の方がカッコいい。皆もきっとそう思ってる」


 聖羅が視線を周りにむけたのに促されて、俺も他のメンバーを見る。

 皆、俺の方を見て頷いてくれていた。

 いや……あの……ありがとうございます……。


「……まあ、頑張るか」

「うん」


 聖羅が満足そうな顔をして、ステージの真ん中へと戻って行った。

 そして、ブザーが鳴り、幕が上がる。






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