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「で、アンタは何に出るのよ?」
「何の話だ?」
「学園祭よ」
「あー……ボスボスシカの剥製作って、俺の討伐の証明ってことにしてみようかなって」
「剥製作ったことあるの?」
「無いんだなぁこれが」
「馬鹿じゃないの……?」
放課後、リンゼが俺に話しかけてくる。
そうは言ってもだ、じゃあ俺にできることって何だって話でだな……。
魔術で優劣を競う魔術大会なんてのもあるらしいけれど、もちろん俺は出られない、
かといって、戦闘力のみで優劣を決める武闘会に出たら、新学期始まって早々に巻き起こったトラブルの二の舞いだ。
だったらもうさぁ……すごいことやったんです!信じてください!ってやるしかないじゃん?
「私に考えがある」
なんてことを脳内会議で決定した所に、キリッとした表情で聖女がカットインしてきた。
「どういう考えだ?」
「大試は、何も心配しなくて良い。変な発表とかもしないで大丈夫」
「なんか不安なんだけど……」
「信じて?」
「わかった」
絶世の美少女にそう言われたら、信じないという選択肢など存在しないんだ。
これは仕方がないんだ。
「アタシはどうしようかしら?魔術大会に出るのも今更なのよねぇ……。正直、次元が違いすぎる気がするわ」
「まあ、もともと天才って言われていた所に、100レベル超えのスペックなんだからな」
「でしょう?だから、何か無いかと思って、やる気無さそうなアンタの考えを参考にしようとね」
「私も混ぜてください!」
リンゼとの後ろ向きな会話中に、今度は王女がカットインしてきた。
なんなの?
どんだけみんなカットインしたいの?
「適度に騒がれない結果を出したいのです!」
「なかなか難しい要求だな」
「ここで私がまた活躍してしまえば、また私を担ぎ上げようとする者も出てきかねませんし、功績に成らず、それでいて悪い印象を持たれない程度の結果がほしいのです!」
「切実だなぁ……」
王族ってのも大変だ……。
卒業後は、俺と一緒にフロンティア前線へと旅立つというのに、そんなアホな貴族たちのことも考えないといけないなんて……。
「あのぉ……だったら私もその話に乗らせてもらえないかな……?」
ヌルっとカットインしてきたのは、シスコン被害者の会名誉会員の理衣だった。
理衣も俺達みたいな後ろ向きな目的を持っているんだろうか?
「理衣も騒がれたくない理由があるのか?」
「うーん……そうじゃないんだけれど……折角の機会だし、好きな人と一緒にイベント参加したいかなって……えへへー」
はい、理衣も仲間に入れましょう。
これは仕方ない。
「って、俺は聖羅がやる何かで大丈夫なんだろ?リンゼたちといっしょにどうこうするわけじゃ……」
「大試の出番は、3日目の最終日。それまでは、別になにかしていても構わない。私も一緒に出るし」
いつの間にかいなくなっていた聖女が、またいつの間にか戻ってきてフンスっとしている。
結局その俺の出番って何なんだ?
信じているが、不安だ……。
「つってもなぁ……。このメンバーが揃ったとして、そこそこの結果を出しつつ、敵を作らないようにするのはやっぱり難しいんじゃないか?」
「よくもまぁこんなに貴族社会に影響力あるメンバーが集まったわね……」
「私も早く王族から外されたいのですが……」
「うちは別にそこまででもないから……所詮末っ子だし……」
「理衣の所は、理衣に関して他の家族がガチすぎて話がややこしくなりそうだな」
「そうかも……」
「私は、平民だから大丈夫」
「聖女が何いってんだ?」
都合の良い話ってのは、やっぱりそうそう見つからんもんだなぁ……。
それに、できれば後ろ向きな結果を出すにしても、うちの婚約者たちの良さはアピールしたいという気持ちも俺にはある。
彼女たちは、世界屈指の美少女だと俺は思っているからこそ、俺と同じように程々なんて結果に沈めるのは悔しいと思っちゃうんだよなぁ。
なにかこう……都合のいい話を持って誰かがカットインしてきてくれないもんだろうか?
それこそ、今このタイミングで、教室の扉を開け放って……。
「大試君!」
なんて思っていたら、会長がカットインしてきた。
どうしよう……会長が持ち込む事ってなると、厄介ごとの臭いがするんだけれど……。
「どうしました?」
「お願いがあるの!」
厄介事だなこれ……。
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