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「って言うことがあったんですけど、どういうことですか?」
「オレは何もやってねぇよ。てめぇがとんでもない魔力を詰め込むから変な事になったんだろ」
俺は、疱瘡正宗が疱瘡正宗角大試に進化しちゃったことを報告&訳を聞くために、大急ぎでリスティ様の所へ来た。
どんな形でもいいので、祈ればリスティ様の所に行けるとは言われていたけれど、基本的には神社とか教会みたいな場所でいつも祈っていたんだけれど、流石に今回はそんな所まで行っている時間的余裕がなかったため、大きめの石を重ねて、何となく石碑っぽくし、それを祭壇に見立てて祈るという蛮行をもってここに来ている。
リスティ様、初手呆れ顔である。
「魔力込めたら、ああなるんですか?」
「魔力を受ける『器』ができていたら、だけどな」
「『器』……」
「ガチャから出せる剣のレア度は、実のところどのくらいレアかを表すもんじゃねぇんだよ」
「まあ……全部神剣ですしね」
「ああ。じゃあ何かっつーと、どれだけ使用者が魔力を溜め込めるか、そしてそれを使えるかを表してんだ」
「へぇ……」
「器は、使うたびに成長するが、だからって普通は剣のレア度が上がるようなことにはならねぇ。それぞれの剣には、限界値みてぇなのがあってな、それを超えて魔力を注ぎ込むと、器は破裂するし剣自体も砕け散るんだよ」
「あれ?でも疱瘡正宗は、刃の所砕けてましたよ?」
「ああ。だが、器に関しては、お前が何度も使いまくっていたおかげで十分耐えられる所まで成長できていた。だから、内側の器が巨大化することに耐えられなかった外殻である刃が砕けたんだ。その後に、有り余る魔力を使って自分で刃を再構成しやがった。オレ、そんな機能つけてねぇんだけどなぁ……」
「なんか虫の脱皮か何かみたいですね」
「まぁ……でももう少し上品な表現をしてほしいがな……」
「虫キライですか?」
「……あんまり好きじゃない……」
この人ヤロウっぽい喋り方するくせに、たまにモジモジしながら話されると、ギャップとその女神にふさわしい美貌が合わさってすごく可愛くなるから止めてほしい。
ほれてまうやろ。
「でも、世界樹製の木刀とかいうとんでもアイテムはR止まりですよね?あれは魔力あんまり貯められないんですか?」
「アレは特殊なんだよ。元々の保有魔力はクソ多いし、魔力を増幅する機能も半端じゃねぇが、その分使用者の魔力を蓄えておくことに関しては得意じゃねえんだ。魔力を込めた瞬間どんどんそれを増幅しながら放出しちまう。だからこそ、魔術の触媒として便利なんだがな」
「あーそうなんですね。てっきりただの魔力タンクかと思ってました」
「魔術が使えないお前にとってはそうだろうけどよ……」
疲れた顔でため息をつくリスティ様。
なんだろう?
俺なにかしたか?
「大丈夫ですか?お疲れみたいですけれど」
「……お前が疱瘡正宗に込めた魔力だけどよ、どのくらいの量かわかってるか?」
「わかんないです」
「日本の東京にいる貴族を名乗ってる奴らの魔力を全部注ぎ込んでも、あのときお前が注ぎ込んだ魔力より少ないんだよ。つまり、お前の魔力は、アホみたいに多いんだ」
「東京にいる貴族全員よりも多いんですか……」
「そんな魔力が一箇所に集中したもんだから、危なく特異点が生まれる所でよ……。そうならないように世界を設定し直すのに疲れてな……」
「つまり、俺のせいで疲れていると」
「まあそうだな。別にそれについてお前に文句をいうつもりはねぇが」
そうは言っても、流石にこの世界の管理運営を行っている女神様を疲れさせたのが俺って言われたら、気にしないわけにもいかないだろう……。
俺は、ささっとリスティ様の背後に回り込んだ。
流石にいきなり動いたのには驚いたのか、リスティ様がぎょっとしている。
「な!?なにする気だ!?まさかオレまで毒牙にかけるきか!?」
「……どういう意味かわかりませんが、肩でもお揉みしようかと」
「あ……肩……?肩な?そうか……そうだよな……」
納得してくれたみたいだけれど、何故かちょっとがっかりしているように見えるのは何故だろうか?
「じゃあ頼むわ」
「あいあい。開拓村では、かなり人気あったんですよ俺の肩揉み」
「へぇ?そりゃ期待できそう……あんっ!」
…………。
「……何か聞いたか?」
「いえ、集中していたので」
「そうか……」
「続けますね」
「あぁ……んんっ!?アンっ!ちょ!そこダメ!らめぇ!」
そのまま、体感時間で10分ほど肩を始めとしたマッサージを行った。
どうやら喜んでくれたようだ。
「全身バッキバキでしたね。もう少しリラックスすることを心がけて生活しないと寿命縮みますよ?」
「んっ……まだ余韻が……。つっても、オレが頑張らねぇと、代わりもいねぇからよ……。別に寿命もねぇしな」
「そうですか……。まあ、たまにこうやってマッサージくらいしますから、遠慮なく言ってくださいね」
「……ああ……じゃあ本当に遠慮なく言っちまうが……今もう一回頼めるか?」
「今ですか?まあいいですけど……」
「悪い……」
「どうせ元の世界に戻っても大して時間経ってる訳でもないんですから構いませんよ。じゃあ、また肩からやっていきますねー」
「うん……」
そのまま体感時間で5時間ほどマッサージをして帰ってきた。
その間に聞き出した情報によると、SSRの剣に関しては、もともとの器がでかすぎてSRのように進化するにはまだまだ時間がかかるだろうって事だった。といっても、そもそも他の剣が疱瘡正宗みたいに都合よく成長できるかはわからないってことだそうだし、まあ気長に待つさ。
別に、今でも火力に不足があるわけでもないし。
これ以上大火力に成られたら、逆にもう使い所が無くなるわ……。
「じゃあそろそろ帰りますね」
「おう……次はいつ会いに来てくれる……?」
「いつって……じゃあ明日にでもまた来ましょうか?」
「うん……」
剣の成長度よりも、リスティ様の甘えん坊度の方が激しく上がった気がするが。
まあ……肩なんて石膏像みたいに硬くなってたからなぁ……。
俺のやらかしもあって疲れているんだろう……。
もうしわけ……。
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