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 神社の中にデデンっと封印されているかなにかしているでっかい緑のスライムを初手即死技という格ゲーだったら間違いなくリアルバトルに発展する禁じ手で倒す!

 それが俺の当初の計画だったけれど、それは脆くも崩れ去った。

 まず、神社の地下にこんな空間があって、そこに女の子がいて、更にその女の子が噂のヒルコ様で、更に更にいきなり辺り一面が火の海になるなんて思ってなかったんだもん!もんもん!

 火炎放射をしたっていうより、部屋の中が燃えている状態に変更されたような、そんな突然の出来事だった。

 カードゲームのマップ変更みたいな感じか?

 なにはともあれ、俺はその火の中に投げ出されてしまったわけで。


 一応、倶利伽羅剣のちからで火を操ってなんとか耐えているけれど、流石にこうも閉ざされた空間だと普通に熱い。

 火を避けた所で部屋自体の温度が上がっているんだから当然だ。

 高温にも耐性はついているだろうし、そもそも身体能力が上がっている俺は熱にだって強いはずだ。

 それでもキッツイわこれ……。

 クリスマスに七面鳥焼くのには最適かも……。


「ソフィアさん!そっちは大丈夫そうですか!?」

『ワシは大丈夫じゃ。ダイヤもまあ無事じゃろ。じゃがのう……』

「え?なんか不安な引きなんですけれど……」

『いやな?宝石はともかく、腕時計自体は高温で歪んだらまずいんじゃないかと思ってのう』

「あ」

『借り物なんじゃろ?』


 そうだった……。

 腕時計に興味のない人間には、さっぱり想像もできないような額の時計であることは間違いない。

 だって、リンゼのお父さんだぜ?

 公爵様だもん。

 この時計一つで、平民の平均生涯年収くらいあっても不思議じゃねぇ!


「素早く片付けないと!」

『神殺しの動機がうすっぺらいのう……』


 世の中金ですよ?


 とはいえ、俺の想像と違っていた部分はもう一つある。

 被害者らしい女の子が、どうもまだ生きているらしいって所だ。

 体を突き破ってスライムみたいなのが出てきたりはしているけれど、女の子の目にはまだ生気が感じられる。

 それに、あの肌に現れている緑の斑点だ。

 ゾンビムーブキメている村人たちと同じように、呪病に感染している状態なんだとしたら、まだ呪病の大元そのものにはなっていないってことな気がする。

 人の姿を留めているあたり、完全に村人と同じってわけでもないんだろうけれど、それは多分あの体の中に寄生しているスライムが今回の大本で、そいつの宿主だからってことじゃないかな?

 そう考えると、村人たちの中にも同じように小さなスライムが寄生していて、そいつが呪病の転送装置みたいな役割をこなしているとしたら、ゲームの聖羅がヒールだのなんだの唱えても治せなかったって理屈もまあわかる。

 私は普通の生き物です!って顔で聖女のヒールを乗り切って、その後また新たに呪病を発生させる面倒な習性だったのかもしれないし。


 問題は、あの女の子と中のスライムが、別の生き物なのかどうかがイマイチわからないことかなぁ。

 天之尾羽張は、神様だろうと確実に殺すって能力持っているけれど、あくまで一つの生き物を葬るってだけのはずだ。

 都合よくあのスライムだけを消し去るって事ができればいいけれど、女の子と同化して1つの存在であるって判定だったら、なんとかなりそうな女の子まで殺しちゃうことになるし、そうじゃなくてもあのスライムが小さな生物の集合体だったりしたら天之尾羽張の効果は薄い。

 うーん……。


「うおっとおおお!?」


 悩んでいる所に、火柱が飛んでくる。

 俺はそれを全力で避けた。

 流石に直撃したら危なそうな熱量を感じるし……。


 どうやら炎は、体からはみ出したスライムから出ているようだ。

 ってかさ、なんでスライムが火使ってんの?

 ヒルコってただの骨のない赤ちゃん神様じゃないの?


『アレじゃろ?ヒルコを日ル子と書き、イザナミが最後に生んだ火の神の迦具土神かぐつちのかみとする的な解釈もあるんじゃろ?そこから来てるんじゃないあのうあの火は』


 腕時計の中からそんな声が聞こえる。


「ソフィアさん、なんか詳しいですね!?」

『国産みなんぞ年寄りの基本知識じゃろ?』


 そういや、この人見た目や種族が純西洋ファンタジーみたいなきれいなお姉様だけれど、実は生まれも育ちも北海道で、好物は十勝産小豆で作ったアンコっていう生粋の北海道民だった……。


「でも流石にあの炎は厳しい!」

『いっそのこと突っ込んでさっさと終わらせたほうがダメージ少ないんじゃないかのう?』

「ですかねぇ!?」


 床は1辺が20m程の正方形、高さは5m程の地下室の中で、俺は縦横無尽に飛び回りながら相手の火炎放射を避けまくる。

 部屋の中で燃えている炎より、どう考えてもあの飛んでくる炎のほうが威力は上だ。

 だってゾクゾクするもん!本気で避けろって本能が言ってる!


 つってもなぁ……。

 天之尾羽張が当てにできないとなるとどうしたもんか……?


 ……よく考えてみたら、一応あの呪病には回復魔法が多少は効いたんだよな?

 そして、あの日ル子スライムもそれに近い特性を持っているっぽい。


 ってことはさ?拡大解釈次第で……。


 俺は、天之尾羽張をホルスターにしまって、疱瘡正宗と木刀を持った。


『そんなもんでどうするつもりじゃ!?』

「いや、神様っていっても、ただの病原菌みたいなもんだよなって」

『何言ってるんじゃ!?』


 俺は、飛んできた炎をギリギリで避けてヒルコちゃんに近づく。

 ヒルコちゃんが目で何か訴えている気がするけれど、内容はわからん。

 まあちょっとまってくれ。

 後で聞いてやるから。


「だからまずは、消毒からだよなああああああああ!」


 飛び出しているスライムに、疱瘡正宗を突き刺した。






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ヒャッハー!病原体は消毒だぁー!
汚物は消毒だ~!(聖帝モヒカン並感
マグマを模して粘性生物とか?
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