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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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356:

 嫌だなぁ……。

 嫌だなぁ……。


 あの村役場のゲート前……認めたくないけど、絶対人間の血だまりだよなぁ……。


 これがさぁ……ただの単純な殺人事件の現場とかだったらいいよ?

 いや、良くはないだろうけども。

 だって、殺人犯捕まえればいいんだもん。

 でもさぁ、仮に感染して正気失っているっぽい奴を食い止めるために殺していた場合、生き残っている人が村役場に立てこもっていたとしたら、スムーズに解決したとしても「なんでもっと早く来てくれなかったんだ!俺達は人を殺してしまったんだぞ!」とか理不尽な逆恨みされそうだしさぁ……。

 殺人事件として立件することもできないから、色んな考えを持った人たちがぶつかって、とんでもないことになりそうだ……。


 それかさぁ……仮に、感染者を食い止めようとして戦闘した結果、まだ感染していなかった人が怪我をした結果あそこの血だまりが出来たんだとしたら、もっと悪い状況になっているかもしれない。

 その怪我した人を手当てするために役場内に連れ込んで、そこで発症して全員感染!なんてことになってるかもだしさぁ……。

 確認しに行かない訳にはいかない俺達としては、非常に面倒……。


 この状況で何より嫌なのが、この世界がフィクションを元にして作られているって事だ。

 リンゼは、大して詳しく設定しなかったらしい今回のこの事態。

 じゃあ、現在世界を管理しているリスティ様はどうだろうか?

 もし独自にカルチャーを学んで、ホラー系のゲームを参考にしていたとしたら、この後必要のないビックリどっきり演出が目白押しで、リアルで体験すると「なんでだよ!?」って叫びたくなるような事だらけかもしれないんだ……。

 ドアの鍵が、開錠していたらトイレに間に合わなくて漏らしそうな無駄なギミックが満載だったり、霧の中でサイレンが聞こえてきたり……。

 あとはなんだろう……ヒグラシでも鳴き始めるか?

 いや、流石に鳴かないか……冬だし……。

 そして、クリアしたと思ったら、1体だけ残ってるゾンビがラストに映って、まだ続編がありました!って流れになる可能性がありそうで怖い……。

 いくらでも残業ができる!

 クソかな?


 逆に、これがホラー系じゃない場合、それはそれで怖い。

 例えば、これは宇宙人とかによる侵略で、俺は地球を守るために戦わないといけない的なノリになってたりしたら、俺はこれから補給もどれだけ望めるかわからない状況で殲滅戦をしなくちゃならなくなる。


 まあ、全部俺の頭の中の悪い想像だからさ、どうなるかはわからないよ?

 でもだ……この世界作った女神が「これ神案件だわ」って言ってるんだよ?

 流石にこの状況でノー天気でいるのはちょっと無理だよ?


「大試!このチョコレート!プニプニ!」

「……あぁ、生チョコレートか。プニプニって表現が正しいかは知らんが……シオリはそれ気に入ったのか?」

「美味しい!食べて!」

「んぶ!?」


 ……あ、高いだけあってうめぇな生チョコ。


 あー……。

 この村役場の中に無事な人たちがいてくれれば嬉しいけれど、無事だとしてもこういう場合外に感染の可能性のある人たちを連れ出すことはできないし、だからって中にミチミチに感染者がいっぱいいるのも嫌だし……。

 実は、今ここでこうしているのは夢で、俺の体はベットの上にあるって事にならないかな?


「ふむ……大試君、役場の屋上を見たまえ」

「はい?……あ、人が出てきましたね」

「救助を待っていたんだろうね」

「……どこまで感染が広まっているかわからない状況で、この村の外に連れ出せます?」

「無理だろうねぇ……」


 ほーら見ろ!やっぱり嫌な役回りしないといけなくなったじゃないか!

 これから俺たちは、あの屋上で「やった!助けが来たんだ!助かるんだ!」って喜び合っている人たちに、「ごめんけど連れ出せんから、物資だけ渡すんで待ってて」って言わないといけないんだ!

 そんなん言うのも、仲間に言わせるのも、言われた相手を見るのも嫌だわ!


 それでもちゃんと自分から呼びかける側に回る辺り、やっぱり仙崎さんは、俺と違って大人なんだよなぁ……。


「王命で調査に来た仙崎だ!何があったのか、詳しく話を聞きたい!」


 2階建ての建物の屋上にいる人たちに、仙崎さんが外部スピーカーで問いかける。

 すると、ちょっと頭がバーコードになっているオジサンが前に出てきた。


『私は、村長の佐藤です!いきなり村人たちが変になってしまい、今我々が無事を確認しているのは、昨日の夜中にここで対策会議を行っていたために残っていた我々だけです!』


 この人村長なのか。

 そして屋上にいる人たちは、避難してきた人たちではなく、ここで対策を練っている間にどうしようもなくなって立てこもっていた人たちであると……。

 って事は、あんまり人数がいないんだな?

 なら、もうしばらく立てこもっていてもらうために渡す物資も、少な目で済みそうだ。


 そう、立てこもってろって言わないといけないんだ……。


「村長!現在この村は、謎の奇病に犯されていて、隔離しておく必要がある!貴方たちを外部に連れ出すわけにはいかない!」

『そんな!?助けに来てくれたのではないのですか!?』

「申し訳ないが、今しばらく耐えてほしい!水と食料は定期的に持ってくる!」

『待ってください!いつまでここで待てばいいのですか!?』

「わからない!ここの駐車場ならヘリが着陸できそうだから、準備ができ次第ここに資材を持ち込み、貴方たちを感染する可能性が無いように護る事から始めることになると思う!」

『そう……ですか……』

「役場で無事なのは、そこに居る者たちで全員か!?こちらからは、12名程が確認できるが!」

『はい!』

「わかった!今すぐ必要な物……例えば、医療物資等は必要か!?」

『いえ!今の所我々の中に怪我人や急病人はおりません!』

「では、少し待っていてくれ!ヘリで応援を寄越す!」

『お願いします!』


 明らかに意気消沈しているな……。

 無理も無いけれど、俺らにだって無理な事はあるし……。

 とりあえず、コンテナの中から食料を少し出して屋上に渡す。

 それぞれの荷物を、できるだけ小分けに出せるようにコンテナの中を区切っておいたから、アイも無事だろう。

 機体の高さが5mあると、余裕で屋上に届くな。

 デカすぎて、普段使いするには邪魔だけど。


「ヘリって、何時頃到着するんですかね?」

「今頃大急ぎで準備していると思うけれど、現地の安全がまだ確保できているとは言い難いからねぇ……。空飛ぶ魔物に襲われても困るし、慎重に調査することになるだろうから……」


 この世界、空は危険なんだよ。

 だって魔物が飛んでるんだもん。

 一応ヘリコプターもあるけれど、前世の世界と違って、ヘリで人を寄越したり逆に連れていくって言うのは最後の手段なんだ。

 危険を承知の上でやらないといけない。

 とはいえ、いくらなんでも何の調査もせずに飛んできたところでただの自殺だ。

 だから、地上にいる奴らがある程度調査した範囲を今度は空から戦闘可能なヘリや飛行機で調査し、最後にやってくるのが人員や荷物輸送用のヘリだ。

 さて、何時になるのやら……。


 何にせよ、俺たちがある程度地上で調査しないと次に進めないだろうし、さっさと移動するか。


「シオリ、この塀の所をぐるっと結界で囲めるか?」

「んー?ん!」

「チョコレート飲み込んでから喋ってくれ」

「んぐ……できる!」

「じゃあ頼む」

「うん!」


 結界で村役場を護ることができたので、俺たちはその場を離れることにした。

 とりあえず、生き残りがいてよかったね。


 ところで、あの血だまりが何なのか、あの人たち説明してくれなかったけれど……謎のままにされるのが一番怖いんだが……?





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