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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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353/616

353:

「緊急招集?大変ですね」

『ホントだよ!せっかく大試くんでこのパワードスーツの実験ができるようになったのに……』


 1日遊び倒して、さてそろそろ帰ろうかという話になった辺りで、ガーネット家の使用人っぽい人がヒソヒソとまる義兄さんに何かを伝えたかと思ったら、まる義兄さんが嫌そうな顔で緊急招集がかけられたことを告げた。

 まあ、この人ちょっとマッドサイエンティストな所あるけれど、間違いなく天才だからなぁ。

 そりゃ何か大きなことがあったらすぐ頼られるだろう。

 鉄砲玉みたいにとりあえずぶち込んどけ的な扱いをされる俺と違って。


「じゃあ俺達はそろそろ帰りますね。お疲れ様でした」

「とーさん!バイバイ!」

「じゃあのー」

「うん!また今度実験に付き合ってねー!」


 多分その実験とやらは、俺が死ぬやつなんだろう。





 家に帰って玄関を開けると、丁度そこに仙崎さんがいた。

 どうやら大急ぎで出かけるつもりだったらしい。


「これから出かけるんですか?」

「大試くんか……。そうなんだよ。緊急招集がかけられてね」


 そう言って、さっきも聞いた理由で出かける事を告げられる。

 なんだ?

 この科学系貴族の二大巨頭を呼び出さないといけない大事件ってことか?

 やだー……大事件じゃない……頑張ってください俺を巻き込まないように……。


「じゃあ行ってくるよ。デコトラ借りるね」


 そう言って大急ぎで出ていこうとする仙崎さん。

 だけど、俺は彼女の腕を掴んで止める。


「え!?ど……どうかしたのかい?」


 顔をちょっと赤くして戸惑う仙崎さん。

 乙女の顔をしているけれど、それどころじゃない。


「仙崎さん、その格好で行くつもりですか?」

「格好……?なにかおかしいかな?」

「寝癖で髪がボサボサ。服はジャージ。しかも……上半身はインナーを着ていないどころか下着すら無しですよね……?」

「……あ」


 この人、今すごくキリっとした顔で出ていこうとしていたけれど、俺からみると、どう考えても寝起きで頭が回っていない状態だった。

 大体、王城ならテレポートゲートで行けるんだから、あのクソデカピカピカのデコトラで森の中の悪路を仙崎さんのピヨピヨテクで走る必要は無い。

 つまり、冷静に出かける準備をじっくりさせたとしても、車で向かわせるよりテレポートゲートを使わせたほうが早い。

 だから、そんな青少年の性癖を歪めるような格好でいかせる訳にはいかないんだ。


「あ……あー……あはは……恥ずかしいところを見せたね」

「いえ、夢に出てきそうなくらい眼福ですけれど、そのまま向かわせる事ができないという俺の考えもわかってくれますよね?」

「うん……」


 すぐさまアイたちに声をかけて出撃シークエンスを始動させ、20分後にはバリバリのキャリアウーマンって感じのビジュアルにして送り出しましたとも。

 よし、これで俺の仕事も減るだろう。

 どうせ俺にはケミカルな素養なんて大してないんだから、あの2人が呼び出されるような事件で活躍することは多分無いさ。


 ……一応スマートフォンの電源は落としておくか。





 明くる日、俺はまたガーネット家の実験施設にいた。

 今日もパワードスーツを使ってあそ……テストをするつもりなんだ。

 クソ楽しみ……。


 なんて思っていたんだけれど、そこには昨日緊急招集されていった2人がいた。

 目の下に濃いクマを作って。


「……お疲れ様です。招集された件の用事は済んだんですか?」


 俺は、恐る恐る聞いてみる。

 何故かって?

 嫌な予感がするからさ。


「おはよう大試くん!待ってたよ!」

「フフ……太陽が緑色に見えるいい朝だねぇ……」


 徹夜明けテンションの義兄と、瞳がコールタールのようにどんよりとした仙崎さんを見て、今すぐここから帰りたい気分になる。

 許されないだろうが。


「何かありました……?」

「ああ!見てよこのパワードスーツ!3番機を徹夜で複座型にしたんだ!新装備もあるよ!」

「3番機なんて作ってたんですか……?」

「5番機まであるかな!」

「ああそう……」


 この、俺しか安全に運用できないと作った本人が言い放った機体を、昨日緊急招集されたあと徹夜で弄っていた……と?

 うううむ……。


「新装備の方は、私が徹夜で作ったよ。まだ名前もつけていないけれどね……。錬金術の粋を集めて作り上げた自信作さ」

「錬金術を利用する魔導具ってことですか?そんなもんを何故?」

「もちろん必要だからだよ。私達にね」


 そう言って、自分と俺を交互に指差す仙崎さん。

 どういうことかな?

 俺わかんない。


「じゃあそういうことで」


 俺は、離脱を試みる。

 しかし、自動で開閉するはずのドアが、何故か開かない。

 閉じ込められた!


「実はね大試くん、パンデミックが発生したんだ」

「……そうですか」

「しかも、回復魔術の効きが著しく悪いらしくてね」

「……そうですか」

「そんな場所に聖女様……聖羅ちゃんをすぐに送り込むわけには行かないってことはわかるよね?」

「……そうですね」

「このパワードスーツは、たまたまではあるけれど、すごく高い気密性を保持しているし、外部がどれだけ汚染されていようと自由に動き回れる器用な機体だ!そこで……」

「……そうですか」

「大試君には、仙崎さんと一緒に現地に行って、原因調査をお願いしたいんだ!」


 ……そうですかぁ……。






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