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機能停止したらしいおそーじくん。
彼は勇敢に戦った。
足に問題を抱えていたようなのに、それでも自分に出されていた任務に忠実に動いたのだろう。
シオリを撃った事自体は許さんが。
というわけで、収納カバンにしまっちゃおうねぇ……。
腕が伸び切った状態で止まってしまった掃除機型ロボットをずるんとカバンに詰めていたら、もう護りを固めている必要がないと判断したのか、仲間たちが走ってき
「タイシ!」
「ゴボォ!?」
シオリが飛び込んできた。
かなりの衝撃でいじ剣が緩む。
あ……内蔵から血でる……。
「ごめんなさい!ごめんなさい!シオリのせいで!大丈夫!?痛くない!?死なないで!」
「いや大丈夫だから!まって!いじ剣ポジション直させて!」
とりあえずシオリを剥がして床においてから、どす黒い赤になってきた下半身を気にしつつ維持権を巻き直す。
よし、これでまだしばらくは死なない。
「馬鹿じゃないのアンタ!?」
「げべっ!?」
安心した次の瞬間、今度は頭を叩かれた。
何事かと思えば、泣き顔のリンゼが目にはいる。
「どんだけ危ないことすれば気が済むのよ!?」
「いや、確かに危なかったかもしれないけれど、何とかなると思って……」
「あのロボット回収しようとしなければ、もっと安全に勝ててたでしょ!」
「まあ……そうなんだけれど……」
おそーじくんは、かなりの強敵だった。
俺は、今回の事件の中で、敵がどのくらい強いのか戦々恐々としながら戦っていたんだ。
なにせ、リスティ様がわざわざ正月に注意を促して、ついでに剣まで渡してきたんだ。
最悪の場合、敵が全部100レベル超えという事態まで想定していた。
にも関わらず、恐竜人間たちはやたら弱かった。
ユリアナを助けるのにいじ剣を使いはしたけれど、あの時点では、死んでたら死んでたで別に俺がどうこうする筋合いも無いだろって思ってたし、その後に何かしらヤバいのと戦うんだろうと考えていた。
だから、魔道スーツまで着込んで動いていたのに、軍務卿のところまで来てもそこまでの戦闘は起きないもんだから不思議に思っていたんだけれど、古代文明のロボットが出てきて腹を撃ち抜かれるとは思わなかったなぁ。
装備込みの頑丈さでいうなら、多分原子炉の壁並みの頑丈さが有ると思うんだけどなぁ俺。
それが瞬時に貫通するんだから怖い。
しかもロボ。
そりゃ回収したくなるよ。
リスティ様もそれが予想できたから、多少なりとも命をつなげる神剣を授けてくれたんだろう。
「それはそれとしてごめんなさい」
「謝るくらいなら……するんじゃないわよぉ……」
抱きついてメソメソしているリンゼを抱きとめて背中を擦っておく。
心配かけてゴメンなリンゼ……。
ただ、血だらけになるから離れたほうが良いぞ?
あとそろそろ帰って聖羅に治してもらいたいから離れよ?
傷口は今いじ剣で塞いでいるから血は出ていないはずなのに、服から滴る血だけで水たまりできてるからさ……。
「「……飲んでもいいですか?」」
「おやおや、それはお行儀が悪いですよ。ちゃんと大試さんの傷が言えてから服をしゃぶるだけにしましょう」
「肉食獣たちさぁ……ナチュラルに人の血で興奮しないでくれる?」
とにかく、ロボットを回収するという目的は達成したし、帰ろうか!
「姉上!落ち着いてください姉上!」
「ぺろぺろぺろ!ああユリアナ可愛い!」
……あ、違った。
ここに来た目的は、この人を女王にすることだった。
どうしよ……ほっといたら正気に戻るのかな?
「くくく……ハハハハハハハハ!」
恐竜人間を落ち着かせる方法を思案し始めた俺達に、悪役らしさ全開の笑い声が響く。
もういいよ悪役は……ロボット手に入ったし帰ろうよ……。
「な!?軍務卿!?生きていたのか!」
ユリアナは、律儀に反応していた。
可愛い。
「終わりだ!この国は終わりだ!破滅の音の音量を最大にしておいたのだ!今王都中の民たちが狂っているだろう!本能に導かれた奴らは、それぞれ思い思いの暴走を始めているであろうな!兵士たちは、恐らくすぐにでも闘争本能に従って地上へ侵攻する!貴様らの……貴様らのせいだ!」
「なんだと!?」
ユリアナ、まじでちゃんと相手してあげるんだな。
……あ、ファムが軍務卿殴って失神させた。
「タイシ殿!どうすれば!?」
「っていわれてもなぁ……」
地上でうちのメイドたちに迎撃されるしか……。
俺が半ば投げやりになっていると、ちょんちょんと袖を引かれた。
ソチラを見ると、何かを期待した表情のシオリがいる。
褒められ準備完了って感じだ。
「タイシ!あいつら落ち着かせれば良いの!?」
「え?うん……何か考えがあるのか?」
「うん!!まってて!!」
シオリはそう言うと、謁見の間の壁を何かの魔術を使ったのかすごいスピードで抉り抜いて、外につながる大きな窓を作ってしまった。
何をするのかと見守っていたら、大量の空気を吸い込んで、体を弓なりに曲げていく。
『シズマレ!!!!!!!!』
直後、大音量の声が王都中に響いた。
うっるさ!
「はい!!」
耳を塞いだ俺達。
だけれど、錯乱していたカティノ様だけは、瞳に理性を取り戻したようにペロペロを辞めた。
「あら……?私は……」
「もしかして、正気に戻ってる?」
「えぇ……何故か一瞬で正気に戻らなければって気になって……」
タイミング的に、シオリのあの声か?
大声を聞いたら止まるんだろうか?
「どう!?シオリすごい!?」
「すごいすごい。どうやったんだ?」
「命令した!」
「命令?」
「うん!絶対命令!簡単な命令しか無理だけど!あのトカゲたちになら命令できる!かーさんがととーさんが作った奴らにしか聞かないって!あとすごく疲れる!おんぶして!」
「えぇ……?まあ、いいか」
オリジンやばい……。
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