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円筒形の黒光りする何か。
一見すると何かわからなかったけれど、目が光ることでその印象はガラリと変わる。
「ロボじゃん」
「なんでもっかい言ったニャ?」
さっきの軍務卿の言葉を信じるなら、イチゴとかの時代のロボットらしい。
であれば、相当なビックリドッキリメカなんだろう。
シオリ曰く、研究所にいた『おそーじくん』とやらと同様の見た目をしているらしいけれど、名前からすると掃除世湯ロボットなのかな?
いや、シオリが正しく名前を把握しているとも限らないけれどさ。
「シオリ、おそーじくんって何者?」
「おそーじくん!とーさんの子分!」
「子分かー」
うん、信頼性には欠けるが、まあこの感じだと確かに研究所にいたんだろう。
そういえば、あのかーさんって呼ばれてた骸骨が持ってた日記に、ドローンがどうこうって書いてあったような……?
しかも何機か外に持ってって失ってたはず。
ってことは、これはその中の1台ってことか?
そんな俺のワクワクを邪魔するかのように、軍務卿が悪役ムーブを続行する。
「古代文明の遺産!黒きゴーレムよ!我らの心をかき乱すあの忌まわしき『音』を轟かせよ!」
とか言ってる。
音波兵器なのか?
一応いつでも対応できるように剣は構えているけれど、どんな攻撃なんだろう……?
「……ピ?モシモシ、ソコニイルノハ、人間ノ人デスカ?」
「人間の人って不思議な響きだな」
「申シ訳アリマセン。実験体デハナク、通常ノ人間デアルノカヲ確認シタク」
「まあ、通常のって言って良いのかはわからないけれど、人間だぞ?」
「おい!黒きゴーレムよ!何をしゃべっている!?さっさと」
「ダマレ」
「ごぼっ!?」
あ、軍務卿がおそーじくんに殴られてふっ飛ばされた。
おそーじくん、手がマジックハンド型だ……。
イチゴが隠れていたらしい機体に近いレトロなデザインだな。
「失礼、コレヨリ当機ハ、貴方ノ言葉ヲ最重要情報ト判断スルコトニシマシタ」
「ん?俺の?」
「ハイ。実験体バカリデ、困ッテイタノデス。本来、実験体ノ指示ヲ聞クヨウニハ設定サレテイマセンカラ」
「ほー」
ってことは、コイツの中では恐竜人間も実験体カウントなのか。
自分たちだけで大分進化もしているらしいけれど。
俺がロボットと会話して情報収集しているのに焦れてきたのか、他のメンバーは何か言いたそうな顔になってきたけれど、いいよね?
これ情報収集だもん。
貴重だもん。
「ウッキウキな顔してるにゃ……」
「アンタ、もう少し表情をごまかす練習したほうが良いわよ?」
「だって……ロボだぞ?」
「確かにロボットなのかもしれないけれど……大してかっこよくないじゃない?」
はん!主観の相違だな!
ロボットってだけでかっこいいんだよ!
まあ実際、こいつをどうするかでこの後の動きも変わるんだけれど……。
正直に言うと、確かにこのロボットにワクワクしているし、どうにかコレクションにできないかなとは思っている。
だけど、それとは別に、壊すという選択肢も存在する。
これがただの生き物であれば、さっさと殺すのが一番手っ取り早いんだろう。
じゃあ、目の前のおそーじくんはどうかというと、コイツは古代文明のドローンだ。
それを壊した場合、下手をするととんでもない爆発をするんじゃないかという心配がある。
動力源は何なんだろうか?
変なバッテリーを使ってて、それが傷つくと数十秒後に爆発なんてことも考えられるから、なんとか穏便に機能停止してほしいなって思うんだよなぁ。
そして、俺の部屋の旧イチゴボディの隣に飾りたい。
「……ピ?モシヤ、ソチラノ実験体ハ、オリジンデハ?」
俺が、なんとかロボット博物館の展示物を増やせないかを考えていると、おそーじくんが俺の後ろでおにぎりを食っているシオリに目をつけた。
コイツもオリジンについて知っているのか。
「そうらしいぞ。女の博士が開放したらしい」
「うん!かーさんが出してくれた!」
「オリジン……開放……?」
うん?
なんか、反応がおかしいな?
シオリの事でなにかに悩み始めたのか、そのまま静かになってしまうおそーじくん。
流石に大丈夫かと不安になってきた時に、急に嫌な予感というか、殺気というか、そういうのを感じた気がした。
だから、ほぼ反射的にシオリを突き飛ばす。
シュン
そんな音が聞こえた。
直後、腹から焼け付くような激痛が伝わる。
見てみれば、ヘソの右側あたりに、小さな穴が開いていた。
血がドバドバ出ている。
「うわぁ……ごぼっ」
あ、久しぶりに吐血したわ。
「ちょっと!?」
「ボス!?」
仲間がびっくりしている。
それはわかるけれど、返事をする余裕もない。
「ソフィアさん!」
「やっぱり地下は危険じゃぁ……」
左腕にくっついてたソフィアさんを部屋の隅に投げ飛ばす。
他の皆もそっちに飛ばすと、ソフィアさんとファムは俺の意図に気がついたらしく、結界を張って護りを固めてくれた。
リンゼは、まだ良くわかってないみたいだけどさ。
「アンタどうするつもり!?」
「いや、どういうわけか知らんが、戦うしか無いかなと」
「だったら一緒に!」
「今のビームか何かの攻撃を瞬時に防ぐ手段がまだわからない。だから、リンゼたちを護りながらだと戦えない。そこでガードしててくれ」
「守らなくていいわよ!それよりアンタのほうが!」
「……いや、正直に言うとさ……」
俺は、そんな余裕無いんだけれど、精一杯の笑顔で心配をかけないように意識しながらリンゼの方を振り向いて、説得することにした。
「仲間を傷つけようとしたあいつはぶっ壊すけれど、それはそれとしてビーム出すロボをできるだけ壊さないように回収したいなってゴバッ」
「血吐き出しながらそんな事考えてんじゃないわよ!?」
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